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旅の記録、宿泊先や行程とか

日奈久温泉 金波楼 熊本県最古の温泉に泊まってきた

日奈久温泉へ

今回は、昨日滞在していた鹿児島県の薩摩川内市から北上し、熊本県の八代市にやってきました。

というのも、昨年の熊本ライドの際に一瞬だけ立ち寄った日奈久温泉にて気になる旅館を発見し、あれからずっと泊まってみたいと思っていたのです。このときは単純にライドの導線上近くに温泉地があったことから、ライドと合わせて温泉に入ることが目的でした。

まず日奈久温泉について軽く説明すると、日奈久温泉の開湯はおよそ600年前の南北朝時代と言われており、詳細は省きますが安芸の厳島明神のお告げに従って海の浅瀬を掘ると温泉が湧き出したそうです。また、江戸時代には日奈久の地に薩摩街道は(熊本と薩摩を結ぶ街道)が走り、交通の発達とともに温泉街も栄えてきて、この頃に最盛期を迎えたとのこと。

そして、時が移って現在でも当時の面影を残す町並みや建物が多く残されています。中でも、自分が好きな木造三階建ての旅館が日奈久温泉には比較的多く現存していて、泊まれる/泊まれないは別にしても、散策を続けていると必然的に目に入ってくる。

その中でも一際目立っていた旅館が、今回泊まった金波楼でした。

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金波楼の外観

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金波楼の遠景。建物の巨大さがよく分かる。

刻 -なつかし-|日奈久温泉 金波楼 -HINAGU ONSEN KINPAROU -

金波楼の歴史については上記の公式HPに全て載っているので割愛するとして、特徴だけ列挙すると次のようになります。

  • 金波楼の名前は、見晴らしの良い三階から、八代海に沈む夕日に映えた金色の波が展望できたことに由来する。今では八代海は埋め立てられており海との距離は遠いものの、かつてはそれほどまでに海が近かったのだろうか。
  • 創業は明治43年。
  • 登録有形文化財。
  • 皇族も泊まったことがある(三笠宮殿下、高松宮殿下)。

公式HPや館内には昔の金波楼の写真が飾ってありますが、驚くべきは当時とほとんど姿が変わっていないということ。

100年以上前の建物が当時のままで営業を続けているというだけでも驚嘆すべきことだし、しかも皇族が泊まったことがあるとなると格式の高さも相当のものであることは想像に難くない。

金波楼に泊まる

宿泊するにあたって一番不安だったのが「一人で泊まれるのか?」ということでしたが、電話で尋ねてみたらあっさりOKでした。

とはいえ、公式HPや宿泊予約サイトでは宿泊者数を一人で検索してもプランが出てこないので、たぶん電話予約のみの対応だと思います。

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圧倒的な迫力

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外観については見た目通りの木造三階建てで、客室はすべて2階と3階にあります。

室外機は写真のように木の板で隠されており、景観を大事にしていることが伺えました。

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玄関

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玄関は見ての通り高級感が半端なくて、ちゃんと予約をとっているにも関わらずなんか入りづらく感じてしまう。ジャンル的にはいつも自分が泊まっているような「鄙びた」系であることは間違いないんですが、明らかに異様な雰囲気が漂っているのが分かります。これが歴史の重みなのか。

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相当に広い玄関土間。展示として人力車もありました。

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入口側から

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構造としては、正式な玄関の右隣に広い玄関土間があり、玄関で靴を脱ぐと係の方が靴を下駄箱に入れてくれます。また、受付等についてはすべて客室内で行っており、金波楼に到着した宿泊客は玄関を上がってそのまま係の人(今回は女将さんでした)に連れられて客室に行く、という滞りない案内でした。

逆に、受付部分は必要最小限の簡素的な作りになっていて、旅館やホテルによくあるようなロビーは表側にはありません。なので、すぐに客室へ行ってくつろげるような形になっているんじゃないかと思います。

これは、宿泊客が受付に集中して煩わしい思いをすることがないように、という狙いがあるのかもしれません。

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土間のタイル

予約時にロードバイクで訪問することを伝えておいたため、玄関に向かって名前を告げると同時にロードバイクの置き場所を教えていただきました。このあたりも実にスムーズ。

ちなみに、置き場所は玄関土間の内側で、夜になって玄関土間を閉めるタイミングでロードバイクの上から覆いをかけてもらうというサービスの行き届きっぷりでした。

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玄関正面が2階への階段になっていて、右奥の廊下は温泉へと繋がっている。

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窓から差し込む陽の光と、中庭の植物が眩しい。

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昔の金波楼の写真が展示されていた。

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登録有形文化財の標識

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左方向に廊下を進んでいくと、温泉と食事会場がある。また、写真の展示の裏側が簡易的なロビーになっている。

金波楼は日帰り温泉も営業されているようで、その場合に温泉客が立ち入ることができるのは1階部分のみです。

2階へ続く階段には「2階以上は宿泊客専用」みたいな文言が書いているので、金波楼を隅々まで味わうには当然ながら宿泊する必要があるということ。今回はここに泊まることになるので問題なく2階へ向かいます。

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今回泊まった部屋は、3階の11号室。

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女将さん手書きの挨拶文。こういうサービスは珍しいので驚いた。

女将さんに連れられて向かったのは、3階に上がってすぐのところにある11号室。裏庭に面した2人用の部屋で、ここを一人で使えるのはもう幸せ過ぎる。

玄関前の通りに面した部屋もありますが、創業当時に眺めることができた海が今でも見えるか?というと微妙だったので、逆に裏庭向きの方で良かったという感じです。あと、玄関前の通りの向こう側が交通量の多い国道3号になっていて、夜中でもそこそこ車が走っていたのでもしかしたら寝づらいかも。

ただ、客室ごとに欄間や障子、床の間などの造りがすべて異なっているようで、どの部屋に泊まっても満足できることは間違いないです。

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客室の奥側から入り口側を見る

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広縁には椅子のほか、洗面台とトイレがある。

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客室についてしばしの間まったりし、広縁を覗いていたときにある事実に気がつく。

窓枠がなんと木製で、よくあるようなアルミのサッシではない。しかもこれは客室だけに限ったことではなく、建物全体で木製を維持していたからもう驚きです。これほど広い建物で、ここまで一貫しているとは正直思っていませんでした。

実用性のある部分は完全に近代化してしまってもいいところを、古いものを遺すために多大な労力をかけて維持している。そのことに尊敬の念を覚えたのは言うまでもありません。

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さて、これから旅館で過ごす上でまずは浴衣に着替え、温泉に行くことにしました。

温泉までの道中には中庭を通過することになるため、その辺りも散策していきます。

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3階客室前の廊下

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廊下から玄関方向を眺める。現在では海は埋め立てられており、旅館から海は見えない。

廊下については隅々まで磨かれており、黒く光っています。

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2階から3階への階段の踊り場

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踊り場からの眺め

メインとなる一番大きな階段がまた凄くて、手すりの複雑な形状もそうですが、幅がとにかく広い。

確かにこの規模の旅館ともなれば必然的に客室数=宿泊者数は多いわけで、つまり階段を通行する人数も多いということになります。なので階段の幅は広くて当然なんですけど、"全て木造"という視点で見てみると、これが現役で使用されているというのがにわかには信じがたいレベル。木製の階段は足をのせたときの軋み具合が実に心地よくて、何の用もないのに何度も往復してしまいました。

木製の構造だと、経年に伴ってまた趣きが変わってくるのがいい。新しい新築の木の匂いや見た目もいいけど、こういう感じですごく昔の木も別の意味で温かみを感じる。

中庭へ

自分が泊まる部屋周りの散策は一通り済んだため、温泉に行くついでに中庭の散策をすることにしました。

ここで今更なんですが、自分は旅館に泊まる際は一刻も早く浴衣に着替える派です。単に動きやすくなるというだけではなくて、旅館といえば浴衣というイメージが強い。浴衣を着ることによって気分が切り替わると言うか、自分はいま旅館に滞在しているんだという実感が湧きやすくなる感じがするからです。これが私服のままだとなかなかそういう気持ちになれなくて、「ほんの一瞬だけ旅館を訪れている」という思いになってしまう。

旅館で過ごす時間を精神的な意味で開放されたものにするためにも、やはり旅館についたらまず最初に浴衣に着替えるのが正解。といっても、夕食会場に向かったときには他の宿泊客は私服のままの人が結構いました。自分は少数派なのだろうか。

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2階の廊下

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どこを切り取っても絵になる

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2階の廊下からの景色。奥に見えるのは旅館裏側にある駐車場

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中庭はかなり広いです

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1階の廊下から見た中庭

金波楼の中庭は建物の裏手にあって、普通に正面玄関側から眺めただけでは見ることができません。

しかし、宿泊しないと見れないのかというとそうでもなくて、同じく建物裏手にある広い駐車場から歩いて行くことが可能です。日帰り温泉客もここに車を停めることになるらしく、つまり温泉に入るついでに建物や中庭の見学もできるわけですね。

中庭は非常によく手入れされていて、背後にある木造建築との相性は抜群の一言。日帰り/宿泊を問わずに温泉に行こうとする場合は必然的に左手方向に中庭が見える形になるため、誰もがその存在感を感じることができるようになっています。

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温泉入り口

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温泉入り口手前には、タイル張りの洗面所がある

ところで、金波楼の廊下はどこも長いのが特徴です。

建物自体が大きいのでそれは当然といえば当然なんですが、廊下が長いことによって建物の広さをうまく表現している。例えば、これが曲がり角が非常に多い廊下だと統一感も感じられないし、移動もなんか面倒になってしまうところじゃないでしょうか。

そこへいくと、金波楼の廊下はとにかく一直線なんですよね。なので構造がわかりやすい上に、廊下の側面にある窓から見える景色もどことなく広く思えてくる。これは旅館の敷地を贅沢に使った構造とも言えるし、ここまで直線が多いと空間的な閉塞感をあまり感じません。

昔の建物ならではの造りというか、横方向への人の移動が快適になるように設計されているような気がする。

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温泉は内湯と露天があります

温泉についてはこんな感じ。

内湯のほかにこじんまりとした露天があって、内湯の方は浴槽の下から湯が吹き出てくるタイプでした。ちなみに男湯の露天の方は3階部分からちょっと見えますが、女湯の方は見えないように覆いがしてあります。

いずれにしても、広々+青々とした中庭の植物を眺めながら温泉に浸かるのは実に気持ちがいい。何かしらの風景が見えるお風呂もいいものですが、丹念に手入れされた庭を見ながらのお風呂も乙なものです。

夕食

そんな感じで適当に温泉に入りつつ、自室に戻って畳の上に寝っ転がったりして過ごす。

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夕食

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今夜の献立

ゴロゴロしていたらいつの間にか夕食の時間になってたため、1階の温泉の隣にある食事会場へ。

食事会場は完全に個室になっており、いわゆる大広間といった一箇所でいただくスタイルではありません。その分ひと目を気にせずに食事を楽しめるというわけで、自分にとってはありがたい。

ちなみにですが、食事のときは給仕の方がご飯をついでくれたり、お茶をついでくれたりとお世話してくれます。普通の宿だったら自分でやるのが普通なところ、金波楼はこのあたりもサービスがいいです。

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夕食はいわゆる会席料理で、がっつり食べると言うよりかは個人的には「酒を飲む」のが前提という内容でした。

味付けも料理によって薄いものや濃いものがあり、結論から言うと酒が進んで仕方なかったです。一品一品が丁寧に作られているのが伝わってきて、酒の進みもさることながら食の進みもすごかった。

特に、最後の「鯛の煮付け」が出てくるタイミングでは、給仕の方が「これにはやはり白米が合いますよね…すぐ持ってきます!」とご飯を持ってきてくれて、煮付けの味の濃さとご飯の旨さが合体しておかわりがマッハでした。

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夕食から戻ってくると布団が敷かれていた

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食後は再度温泉に入った後、夜の散策へ

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その後は最後お風呂に入りに行き、湯上がりで身体が温まったところで下駄に履き替えて夜の散策にでかけました。

ところで、春になって夜の気温もやっとちょうどよくなってきてくれて、散策が捗りますよね。冬だったらこの時間に外へ出るにはなかなかの気合がいるし、逆に夏だと夜でも暑くてやはり外出したくない。やっぱり春は色んな意味で歩き回るのにいい季節だ。

夜の日奈久温泉街はもう静かすぎて、自分の他に出歩いている人がほぼいませんでした。金波楼だけでなく他の旅館に宿泊している人も同様に、この時間帯になると旅館内で過ごすのが一般的なもの。

でも、あえて夜に出歩くことでその町の「夜」を味わうことができる。これはその土地で一泊しないとできないことで、日中との雰囲気の差を味わうにはこのタイミングをおいて他にない。せっかく日奈久温泉に泊まっているのだから、館内で過ごす時間の他にも自分の時間を作りたいところだ。

宿泊地の夜を歩くなんて普通の人ならやらないことかもしれないけど、こういう散策こそが自分がやりたいこと。良い時間が過ごせました。

翌朝

夜の散策を終え、自室に戻って布団に潜り込んで気がついたら朝になってました。

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朝起きて自室から中庭方面を眺める

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朝食

朝食は、日奈久名物のちくわを含めた堅実な内容。

おかずに事欠かないとはまさにこのことで、この日の走行距離に関係なしにご飯をおかわりしてました。

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窓から差し込む朝日を眩しく感じつつ、身支度を済ませて金波楼を後にする。

まだ宿泊客は自室でのんびりとしているみたいで、この時間から動き出す人間は自分ひとりの様子。日奈久の朝はとても澄んでいて、眠さよりも今日一日を満喫できそうな予感の方が上回ってくる。比較的朝早い時間に行動を開始するのも悪くない。

こんな感じで、金波楼での一夜は終了。

金波楼の方々には最後まで丁寧にしていただいて、伝統のある旅館の中でも特に接客が素晴らしかったと思います。あの規模の旅館を昔ながらの姿で維持しているのはとても大変だと思いますが、長いこと続いていってほしい旅館だと感じました。

おしまい。