【内容と感想】「氷菓」10周年記念フィルムコンサート~神山高校の小さな音楽会~に行ってきた

私の大好きなTVアニメ作品「氷菓」の劇伴が20曲以上も、しかも作中の映像とともに生演奏されるイベントに行ってきたので、内容と感想を書きました。

TVアニメ「氷菓」10周年記念フィルムコンサート~神山高校の小さな音楽会~

もくじ

あらまし

アニメ「氷菓」が放送されて、2022年で10周年を迎えました。

正直あっという間に10年が経ったけど、最初に氷菓という作品に出会ったときのことは今でも忘れられない。そこから聖地である岐阜県高山市を訪問して、原作を読んで…としていたらいつの間にか2023年になってました。高山を訪問した回数はもう覚えてないくらいで、自分の中の訪問が一段落したくらいから本ブログは始まっています。

そんな節目となる10年目ということで、去年企画したのが高山の桜、それと「あの」臥龍桜を見に行く春の花見ライド。結局天気も桜もこれ以上ないベストコンディションで、絶好調のままに終わったのが記憶に新しい。
でもアニメの方は放送終了して相当間が空いているし、原作の方は少しずつ進んで行ってるけど、アニメ「氷菓」としての新しい話題はもう出てこない。今後も今までと同じように、ファンとして個人的に熱を持ち続けようかなと思ってました。

そんな中に舞い込んできたのが、この10周年記念フィルムコンサートの情報。

まさに寝耳に水状態で、コンサートの詳細を読んだだけで感動しました。

直木賞作家・米澤穂信先生のデビュー作である『氷菓』。
今年TVアニメ化10周年を迎え、今なお根強い人気を誇る本作品初となるフィルムコンサートを開催いたします。
10年の時を経て、TVアニメ「氷菓」が、名場面と素敵な音楽との響演で蘇るスペシャルな1日。
ゲストアーティストにChouChoを迎え、生演奏であの名曲を披露。
さらに、メインキャストの佐藤聡美(千反田える役)、阪口大助(福部里志役)によるこの日限りの特別企画コーナー「古典部の屈託のあとがき」を予定。
10年の時を経て、TVアニメ「氷菓」が名場面と名曲の響演で蘇る!

角川イベント情報・TVアニメ「氷菓」10周年記念フィルムコンサート~神山高校の小さな音楽会~

氷菓の一ファンとしてぜひともこれに行きたいと思って応募したところ、無事に当選することができました。神様ありがとう。当日に備えてアニメを一から見直したのは言うまでもない。

当日

というわけで当日。

埼玉県所沢市にあるところざわサクラタウンに向かい、まずはグッズを購入してコンサートホールへ。今回はイベント割での参加で、多少安くチケットを買えました。

会場のところざわサクラタウン

滞りなく会場内に入ることができ、いざ席に座ったはいいけど始まるのが待ち遠しい。でもそういうときこそ時間の経過は早くて、かくしてコンサートが始まりました。

まず最初は「無伴奏チェロ組曲 第一番」と「薔薇色世界の扉」の2曲。

コンサートの基本的な流れを説明すると、楽曲を担当されている田中公平さんの解説を含みながらアニメで登場した順に曲が演奏されていきます。何曲か連続して演奏し、その後に解説という流れ。

早い話が、神山高校アンサンブルのバックに流れる作中映像(フィルム)と目の前の生演奏が完全にマッチしている。物語は奉太郎が神山高校に入学してくるところから始まるわけで、映像もその場面だし、演奏曲も上に示した通り。この構成によって、"これから「氷菓」が始まる"という実感が強く印象付けられました。

アニメの放送順で…ということで、「氷菓」「やるべきことなら手短に」「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」「連峰は晴れているか」「心あたりのある者は」「あきましておめでとう」「手作りチョコレート事件」「遠まわりする雛」の各場面が流れるように登場してきます。

で、田中さんはかなりお茶目な部分があって、4曲とか6曲とか続けて演奏するとどこの曲で終わったか分かりづらいので「プールのとこね」「ナコルル先輩と摩耶花のやりとりのとこ」など、分かりやすく教えてくれる。なんで曲のタイトルをこんな難しいやつにしたんだろ?とか、この曲って演奏するの難しい?とか、実際に演奏している方とのやりとりもあってとても面白いです。

次の4曲は「灰色かつ省エネ」「心に静寂と平和を」「妄想髪長少女」などが流れ、最後はパイナップルサンドで奉太郎とえるが会うシーンで流れる「シシリエンヌ

シシリエンヌほんと好きなんですよね…。氷菓はまさにこの場面にはこの曲が合う!ってのが多すぎる。

次は主に愚者のエンドロールで流れた「不明瞭な性質を伴う時間」「解決ながらも暗然」など6曲が演奏され、愚者のエンドロールの最後で第1部が終わり。奉太郎がブチ切れるシーンは何度見ても辛い。

氷菓って、推理シーンなどではピアノや弦楽器のメインとなる旋律がかなり目立っていて、それがずっと続くというイメージが強いです。(劇伴なので当然だけど)激しい・躍動感のある音楽とは対照的で、その分キャラの動作とか視線の動きとかに集中できる。
同時に、氷菓は画面内が大人しくまとまっている作品であるため、劇伴が聞こえやすいと思います。なので劇伴のタイトルは分からなくても、曲を聞いただけでどの場面か瞬時に理解できる。本当によく考えられているなと感じました。


さて、後半の第2部までの間に催されたのが、声優の佐藤聡美さん(千反田える役)と阪口大助さん(福部里志役)によるラジオトークコーナー「古典部の屈託」。当時アニメと同時期に放送されていたラジオ番組が一夜限りの復活です。

コーナーでは千反田さんが興味を持ちそうな情報を紹介する「わたし、気になります!」や、雑学に詳しい里志を唸るような知識を紹介する「福部里志のデータベース」など、マジで当時と同じです。
合間には朗読劇が前後に渡って挟まれ、千反田さんの将来を奉太郎が応援するという、未来への希望を感じさせる素敵な内容でした。アニメのその後を補完する形、すごく良い。



そうこうしているうちに第2部の始まり。

田中さんのピアノ独奏による「薔薇色世界の扉」からスタートし、作品としては「クドリャフカの順番」から。カンヤ祭が始まる際のお祭り気分のような陽気さ、そこから徐々に不穏な感じになっていくのが生演奏を通して強調されています。

確固たる分析発表」「ため息混じりのコメディアン」など、このあたりは里志の人間性や負の感情がダイレクトに現れている部分。

流れていく作中の映像の中には、胸が締め付けられるような場面も結構多いです。ここはちょっと見ていて辛かったなという体験もあるし、映像と曲とでそれを思い出す。「クドリャフカの順番」~「手作りチョコレート事件」あたりはその極地みたいなもので、改めて見てみるとアッアッってなりました。
そんな中で、「炎の料理人、見参!」は精神力を回復する意味での元気が出る曲。私も千反田さんが作った料理を食べたい。

そして物語とともにコンサートも終わりに近づき、「見上げた空の爽やかさ」「生き雛」そして氷菓という作品を体現する曲「G線上のアリア」が演奏。

このあたりのクライマックス感やばくない?生き雛祭りのシーンでは美しすぎて息止まっちゃたし。奉太郎も実際にこんな風に見えていたのかと思うと、作品との一体感が限界突破している。
遠回りする雛の段階では、まだ彼らの中の変化は緩やかでその途上にあるもの。残りの学校生活、そしてその後。そこで彼らがどう変わっていくのか?未来のことなのでそれはまだ分からないけど、おそらく希望が持てるものだろうという綺麗な終わり方だと思う。その「綺麗な終わり」が演奏によって何倍にも綺麗になっているのは、もう幸せとしか言えない。

で、〆はChouChoさん登場からの生歌×生演奏による「優しさの理由」。

最後にこれを持ってくるとか、感情に追い打ちをかけてくるメロディで気持ちの整理が追いつかない。本当に良い曲…ですよね。辛いことがあったら毎回これを聞いているくらいに好きな曲。ChouChoさんの優しい生の歌声で、最後の最後にうるっときました。全てが終わったあとは、そりゃもう放心状態でした。

作品の終わりはコンサートの終わり。
第1話から始まって最終回で締めくくられたということで、フィルムコンサートの良さってここにあるんだと思うと同時に、終わってしまった感も2倍、3倍…になってしまいました。帰路につく悲しみがマッハ。現実に帰りたくない。


以上、簡単ではあるけど「氷菓」10周年記念フィルムコンサート ~神山高校の小さな音楽会~の感想でした。

氷菓の劇伴って元気が出るというよりは、暗い・不安にさせるようなものが多いと思います。氷菓は「日常の謎」がメインなので推理パートが多く、しかも主人公である奉太郎の灰色感が前面に出ている。なので決して明るいだけではなく、苦味のある青春の様子を表しているとも言えます。

生の演奏を聞くのはスピーカー越しとは全く違くて、心に響いてくるようなピアノの旋律、空気を揺らすような弦楽器の音。楽器が奏でる音が、耳を通じて直に心に揺さぶりを与えてくる感触は癖になる。

劇伴はそこに登場するキャラクターの感情や機微、精神状態を如実に表現しており、作品そのものに没頭できるシチュエーションを作り上げている。今回のコンサートでは映像と生演奏の組み合わせが自分の感情を刺激してくれて、得難い体験になりました。

会場で購入した氷菓グラス。大事に使います。

作品自体は苦いけど会場内は優しい音楽で溢れていて、あのとき・あの場所はとても暖かい空間だったことは間違いないです。田中公平さんを始め、素晴らしい演奏をしてくださった神山高校アンサンブルの皆様、佐藤聡美さん、阪口大助さん、ChouChoさん、本当にありがとうございました!

今日という日が古典になって、次もまたお祝いできるように応援し続けていきます。

おしまい。


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