川渡温泉 藤島旅館 慶長元年創業 湯守の湯治旅館「真癒の湯」に泊まってきた

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今回は、鳴子温泉郷の川渡温泉 藤島旅館に泊まってきました。

川渡温泉は東西に長い鳴子温泉郷を構成する温泉の一つであり、その立地から鳴子温泉郷の東の玄関口とも言われています。開湯時期は明らかではないものの、一説によれば約千年前とのこと。鳴子温泉郷には鳴子温泉や東鳴子温泉などの温泉が連なっている中で、最も歴史が古い温泉街です。

温泉の歴史ってどこも非常に古くて、気の遠くなるような昔から続いているのが素敵だ。


藤島旅館は川渡温泉の湯守としてこの地で営業を続けてきた古来の湯治旅館で、記録によれば創業は慶長元年(1596年)。湯守はその温泉の代表みたいなもので、温泉の管理や入湯客からの税の徴収、そしてそれを伊達家仙台藩に納める役割がありました。江戸時代にはすでに名湯で有名になっていた鳴子温泉郷ですが、その立ち位置で湯守を続けていくのはかなりの苦労があったと思われます。

今の女将さんの息子さんの代で20代目か22代目とのことで、歴史を鑑みればそれも納得。女将さんのお話や館内の散策を通じて、滞在中はとにかく歴史の深さを感じることが多かったです。鳴子温泉郷の歴史調査にも情報提供をされているようで、女将さんにお話を伺えば詳しい歴史を知ることができるはず。

建物自体は何度か火災で消失しているため、館内はリノベーションが進んではいるものの、それでも古き良き湯治場としての雰囲気が色濃く残っていました。ただ時代の流れに合わせて色々考えられているのは間違いなく、この手の古い旅館では珍しく公式サイトも近代的でした。公式サイト内でプランの確認や予約が可能なのでお手軽です。

もくじ

川渡温泉までの道中

陸羽東線の車窓
最寄り駅の川渡温泉駅

今回は、旅館までのアクセスに電車を使いました。

もともとロードバイクという気分ではなかったし、レンタカーでサクッと向かうのもなんか違う。温泉を主目的とした旅館への道中は、車窓からの景色を見ながらが一番似合っている。個人の感想だけど。

山形県の新庄駅から陸羽東線に乗り、田園風景を眺めながら電車に揺られているといつの間にか県境を越えて宮城県に入ります。

そうこうしているうちに鳴子温泉駅や東鳴子温泉駅に停車し、そういえばこれらの温泉の旅館にはすでに泊まったことがあることを思い出す。高友旅館いさぜん旅館も、個人的に好きな要素があふれている旅館でした。また冬になれば泊まりにいきたい。

上記の温泉はいずれも温泉街周辺が比較的賑わっており、町中を歩いていると他の宿泊客に遭遇することも多かったのですが、川渡温泉に限っては逆に静かすぎるほどでした。実際、この電車で川渡温泉駅に降り立ったのは自分一人だけです。

温泉街までの道
川渡温泉のメインストリート

駅からのどかな道のりを2kmほど歩き、川渡温泉のメインストリートに到着。

メインストリートといっても温泉街というよりは集落の一角のような感じで、良い意味で観光地化されていない印象を受けました。川渡温泉にはもちろん藤島旅館以外にも旅館はあるものの、ひっそりとしていてどことなく知る人ぞ知る的なイメージ。

そのまま駅から20分くらいメインストリートを直進していくと、目的地の藤島旅館に着きます。

旅館の建物は大きくカーブしている道の外側部分にあるので、見逃すことはないはずです。道の両側に巨大な看板もあるし、遠くからでも十分目立ちました。

外観

まずは外観から。

駐車場入口
正面玄関

藤島旅館の敷地はとてつもないほど広く、入り口を入って正面部分だけかと思いきやそうではありませんでした。カーブを右に曲がってしばらく進んだところも藤島旅館の建物が続いていて、これがさらに奥行き方向にも連続しているのだから凄まじい。

湯治旅館って客室数が多いので必然的に建物が広いことが多いのですが、藤島旅館の場合は全体が平屋や2階建てといった低層階で構成されているため、なおさら平面方向に広がりを見せているようです。これについては航空写真だと分かりやすいかな。

道から敷地内に入ってすぐ右側に建物があり、左側が駐車場になっていました。藤島旅館は日帰り温泉も営業しており、しかも日帰り温泉客がかなり多いので、朝早くから夜遅くまで常に車が止まっているような状態です。

正面玄関については手前部分がせり出している形で、その奥側は台形の屋根が特徴的な2階建て。ここを中心に、手前を除く三方向に通路が繋がっている分かりやすい構造でした。

敷地入り口の大きな看板には、「天然の温泉 真癒の湯」の文字。

藤島旅館の温泉は湯量豊富な源泉かけ流しで、しかも加温加水なし。環境庁指定国民保養温泉という言葉も相まって、一目見ただけで関心が高まってくる。

館内散策

玄関周辺

それでは早速館内へ。

なおチェックインは14時から可能です。

藤島旅館 館内図

最初に藤島旅館全体の館内図を示しておくと、上記の通りです。

2階があるのは一部だけで、ほとんどが1階のみの平屋構造。しかしそのぶん平面方向にとてつもなく広く、端から端まで歩くのは骨が折れそうなほどでした。

玄関を入って右方向にずーっと進んでいくと客室エリアがあり、逆に建物奥側に向かうと広間や温泉などの共用設備が集まっています。

正面玄関を入ってすぐに広々した玄関土間があり、その向こう側のスペースも含めて玄関周辺は横方向、縦方向ともに面積が突出していて、いわば藤島旅館を代表する部分です。

玄関の広さはその旅館の格式の高さを思わせますが、ここまで広いのは個人的に初めてでした。屋外から屋内へと切り替わる遷移的な場所にも関わらず、屋内という感じがまるでしない開放感があります。

玄関土間は真正面の中央部分がくぼんだ特徴的な形をしており、上がりの部分は欅の一枚板で構成されています。先程述べたように藤島旅館は修復を繰り返している旅館ですが、この玄関部分は昭和3年~4年の造り。上がりの下部分には昔の靴箱の跡が残っていました。

靴を脱いで上がろうとした矢先に発見したのが、呼び出しの用途にしてはどう見ても位置が低すぎる玄関チャイムです。

玄関チャイムって一般的には目線とほぼ同じ高さにあるところ、ここではなんと玄関の上がり(要は足元)と同じ高さ。これにはちゃんと理由があって、女将さんによれば年配の方のためにご主人がこの高さに設置したとのことです。確かに年配の方って腰が曲がっているので、この高さのほうが便利…なのかも。

なお、左横の帳場部分にはちゃんと適度な高さに設置されている玄関チャイムもあります。

玄関の左側は旅館側のスペースとなっており、向かって手前に帳場があります。帳場には日帰り温泉料金の掲示や傘立て、杖置き、それから旅館に宿泊する人向けのスリッパやサンダルが置かれていました。

ここから館内に上がるとすぐにアイスの冷凍庫があり、日帰り温泉/宿泊を問わずにアイスを購入することができます。温泉とアイスの相性が良いのはもちろん自明なことなので、こういう形でアイスを食べられるのはありがたい。

帳場の向こう側には宿泊客用の靴置きがあって、つまり宿泊する人はここに靴を保管する形になります。古い旅館でよく見かけるような巨大な靴箱の棚は、ここには無いようでした。

建物としては帳場の更に奥に続いていて、向こう側には厨房や居間があるようです。

で、アイスの冷凍庫の上に飾ってあった写真がまた貴重そのもの。

これは鳴子温泉郷を訪問しようと思った際にお世話になる「JR陸羽東線」が開業した当時のもので、写っているのは藤島旅館の居間部分です。この居間部分は現存しておらず、今ではこうして写真に残されているのみ。年代的には1913~1917年あたりになるのかな。

いずれにしても、建物というものは常に設備や構造の面で新しくなっていくのが常で、その逆はない。つまりその旅館の古い部分は一度更新されればなくなってしまうわけで、どのような形であっても当時のことが分かるのは大切です。

旅館に宿泊するときはよく女将さんやご主人から「昔はここに○○があったけど、今はない」というお話を伺うことがあるけど、これだって今となっては人の記憶の中にしか残っていない。そう考えると写真って偉大だなって思うし、自分が旅先で写真を撮るのはそういう意味もあります。特に自分の場合は忘れやすいので。

玄関の右側はどちらかというと日帰り温泉客向けの部分となっていて、そのための鍵付きの靴箱が設置されています。

大部分の日帰り温泉客が入りに行く大浴場はその靴箱の左から通路を歩いていった先にあるので、確かにこっちにあったほうがシームレスに移動が可能。なんてことないとは言っても、合理的によく考えられていると感じました。

なお藤島旅館の利用客はほとんど日帰り温泉客で、老若男女年代を問わずに大勢が訪問しています。実際に自分が滞在していたわずかな時間であっても次から次へとやってきていたし、地元の方にとっても重要な温泉なのは間違いない。

猫の調度品

玄関ロビーに相当する場所には数多くの展示があって、温泉の合間にここを眺めているだけでも正直満足できるレベルでした。

というか、旅館や温泉などでこういう風に壁に色々書かれているものに自分は目を通しがち。多くはその土地の観光案内だったり歴史だったりするものの、藤島旅館では宿泊料金の案内や看板の説明もありました。自分はこういう掲示が好きなので、別に意図していなくても自然と内容を読んでしまう。


上記の内容の補足として、宿泊のプランについて。

公式サイトを見てもらうと分かりやすいですが、藤島旅館の宿泊形態には二食付きの「はたご」と、食事は自分で用意する「自炊」の2つがあります。後者は湯治宿でよく見られる形態で、多くは一週間とか二週間とか、長い期間宿泊する場合ですね。

「はたご」については部屋の広さや食事の内容でA~Cタイプがあり、上の掲示で一人あたりの宿泊料金に差があるのがそれです。一人の場合はCタイプになるみたいで、Aタイプとかだと食事もグレードアップします。

その隣にあったのが、もうすでに存在しない団体の看板類でした。ここでは天然温泉と旅館賠償責任保険加入旅館についての説明が書かれています。

「この看板は、お風呂が沸かし湯ではなく、地中から天然に湧いてくる温泉だけを使用している旅館の印です。」

「この看板は、旅館で怪我をした、食中毒になった、旅館の備品を破損した等の場合の保険に加入している旅館の印です。安心してお泊りになれます。」

前者はここの温泉が源泉かけ流しということを謳っており、後者は旅館内における不測の事態にも対応できますよという内容。後者については、そんなことを心配しながら泊まる人はいないと思うけど…。

でも「安心してお泊りになれます」という言葉と、どこか力の抜けるような適度なフォントが温かみを感じさせる。何よりも手書きっていうのが良いね。印刷されたちょっと無機質な説明書きとは一味違う良さみがある。

提灯の灯りが幻想的

ここまでで玄関部分について触れてきた中で、この玄関周辺の雰囲気の良さを構成している要素の一つが照明の提灯です。この灯りがとにかく良くて、時間帯を問わずに美しさを際立たせている。

藤島旅館では玄関入ってすぐの真上に一般的な電灯があるのに加えて、玄関を横断するように連続した提灯が設けられています。これらは常に点灯されており、玄関から入ってくる自然光と合わさってなんとも言い難い魅力がありました。提灯ならではの明るすぎず暗すぎない絶妙な明るさ。これが自分は好きになりました。

今回宿泊した当日の天気は雨だったので屋外はそこまで明るくなく、したがって玄関周辺は適度に暗くなっています。そこを提灯が照らしていて、特に玄関奥側から入り口側を見た風景が個人的に好き。

玄関奥側にはタオルやおもちゃ、お土産品等が並んだ大きなショーケースが4箇所置かれていました。スペースとしてはかなりの面積を取っていて迫力があります。

その奥の壁には昔使われていたと思われる、木製の「藤嶋旅館」の看板が飾られています。「嶋」から現在の「島」に変わったのには、何か理由がありそう。

右が中広間、左奥が中浴場と大広間
温泉前の廊下
大広間前の廊下
AタイプもしくはBタイプ客室前の廊下

玄関周辺は以上で、一緒に玄関奥の部分についてご紹介します。

玄関周辺には上記のほかにAタイプとBタイプの客室があり、玄関左奥部分と玄関2階部分がそれに相当します。これらの客室周辺の構造は比較的新しく、照明も含めて近代的になっていました。

また、昔の木製看板から奥に進むとまず最初に中広間(夕食会場)があり、廊下を直進すると中浴場と大広間(朝食会場)があります。中浴場は大浴場とは別料金になっていますが、宿泊客の場合はどちらも普通に入ることができるので、この廊下を歩く機会もそこそこ多いはず。

中広間や大広間については多くは宴会で用いられていたものの、現在では夕食や朝食の会場としてのみ使われているようです。なので、食事の際には部屋からここに来ることになります。

玄関から客室エリアまでの廊下

続いては、玄関右側にある長い廊下を歩いて客室エリア方面へ。

この廊下の直線感が気持ちよくて、温泉に入った後はここでのんびりしていました。まっすぐというのは見通しがよくて気持ちいいし、廊下には窓も多いので自然光が多く取り込まれていてこれまた快適。距離こそ結構長いものの、歩くのには苦はありません。

少し歩いた先の左側に売店があって、ここではお土産品やお菓子、カップラーメン、洗面用具、ちょっとしたおつまみ等が販売されています。

ここが湯治旅館であることを考えるとこれも納得で、長い滞在期間中に外部に買い物に行くのが面倒なときに便利ですね。温泉上がりにちょっと欲しくなるものばかりなのがよく分かっているという感じ。

ちなみに売店には普段人がいないので、何か買いたい場合にはチャイムを押して帳場に知らせる必要があります。

売店の前には休憩所もあるので、売店で買ったものを食べたり、すぐ横にある自動販売機の飲み物で一息つくのに利用できます。

ここの居心地もかなり良くて、自分が温泉に入った後は大抵が玄関周辺かここでまったりすることが多かったです。なんというか、売店周辺は自然と座って休憩したくなるような雰囲気に包まれている。藤島旅館全体が比較的静かな中にあって、その空気感も一緒に影響しているのかもしれません。

自動販売機とゲーセン

その売店の数m先には、自動販売機とちょっとしたゲーセンコーナーがあります。

この廊下は大浴場から玄関に向かうときに必ず通るルートになるので、ここに自動販売機があるのは非常に大きい。しかも、一般的な自動販売機に加えてコーヒー牛乳や酒の販売機も完備されています。しかもその手前には長椅子やゴミ箱もしっかりあるし、もう湯上がりにはここで休憩していくしか選択肢がない。

さらに帳場まで戻れば豊富なアイスが待っているので、特に日帰り温泉客は十人いたら十人全員がここで休憩していました。道中に色んな誘惑が待ち構えているので、温泉だけ入ってすぐ帰るというのはちょっともったいない。

ここから先が客室エリア
洗面所

自動販売機コーナーの先は廊下が二方向に分かれており、右へ向かえば客室エリアへ、左へ向かえば大浴場へと続いています。ここでいう客室エリアは主に一人用のCタイプと自炊形式のことで、AタイプとBタイプについてはさっき見た通りです。

客室エリアについては写真からでも分かるように、今まで訪れてきたところとは明確に年代が異なっていました。

壁や扉の外観がまず古いし、廊下に至っては言わずもがな。そういう意味では、こちら側に泊まる方が湯治場としての雰囲気を強く感じられるかもしれません。少なくとも玄関周辺の客室はこういう感じではなかったし。

客室エリア

上記の曲がり角から奥が客室エリアとなり、廊下の左右に客室が配置されています。

フロアとしては正面に続く廊下の部分と、右側に見えていた階段を上がった先の2階部分から構成されています。

階段の手前の部分にはコインロッカーがあったり色んな注意書きがあったりと、殺風景というわけではありません。古い旅館って端の方まで手入れが行き届いていないところもあるものの、ここではそういうことはなさそうでした。

階段を上がって2階へと進んでいく。

階段は踊り場を含めて幅が広く、古い旅館にしては斜度も緩やかで上りやすい印象を受けました。あと、手すりの木材が全体的にがっちりとしていて力強い感じがあって、華奢な構造ではありません。このあたりは当時から変わっていないのかも。

2階部分の様子はこちら。

階段を上がったすぐのスペースがかなり広く、その先の廊下も人間一人が優にすれ違えるだけの十分な幅があります。藤島旅館は全体的に廊下が広々としているので移動が大変に思うことはなく、湯治=客室と温泉を行き来する上で気になるところが考慮されていると感じました。

個人的には上の1枚目のアングルが結構好きで、階段窓から差し込んでくる自然光が廊下の奥まで照らしているという図式がなんか良い。

そのまま2階の廊下を進んでいくと突き当りに別の階段があり、これを下ると先程見た1階廊下の奥に降りることができます。

こうしてみると、空間的に比較的狭さを感じる廊下部分の左右にそれぞれ階段と窓があるために、精神的に苦しさを感じることがありません。例えば廊下を進んでいくと何もない壁がある、とかだとどことなく暗い気分になるけど、ここではどちらの方向に進んでも明かりが待っている。昔は明かり自体が貴重だったことを考えると、これも先人の工夫の一つだと思います。

階段部分の構造は客室エリア入り口のものとほぼ同一ですが、踊り場で折り返す箇所の柱が1本ではなく2本になっていました。

下宿エリア

そして、建物の最奥には東北大生の下宿用の部屋が集まっています。

実はこの藤島旅館は湯治とは別に下宿もやっており、すぐ近くに東北大の研究施設があるので下宿生が多くお世話になっているみたいです。旅館の中で下宿を見るのは初めての経験。確かに湯治旅館は部屋数が多いのでそういう用途にも使えなくはないけど、まさか実際に活用されているとは思ってもみなかったです。

農学研究科のことはよく分かりませんが、大学院の生活はほぼ家と研究室との往復だけになるのでこの形は良いかもしれません。共用の干場も洗濯機もあるし、何より帰ってくれば温泉に入れるのはかなり大きい。

泊まった部屋

今回泊まったのは2階の「竹1番」の客室で、広さは6畳あります。

他の客室については、どうやら工事関係者が長期滞在しているようでどの部屋もほぼ埋まっていました。

廊下から客室に入ってすぐに踏み込みがあり、その右側には冷蔵庫が、さらにその右側には押入れ。部屋の天井は比較的高めです。投宿時にすでに布団は敷かれているため、自分の好きなタイミングで寝ることができます。

設備としてはエアコン、洗面所があるのでトイレ以外は部屋内で完結できるほか、浴衣やタオル、アメニティも完備されていました。

部屋の奥がまるごと窓になっていて、ここからは温泉方面の眺めがいいです。後は旅館の裏手側が山になっているので、鳥の鳴き声なんかもよく聞こえました。

逆に旅館正面側の客室だったら車の音とかが気になっていたかもしれないので、今回泊まった部屋は自分の好みからすると当たりです。やはり旅館の滞在中は余計な音は聞こえないに越したことはない。

金庫もあります
上が金庫の鍵、下が部屋の鍵
冷蔵庫は昔、飲み物がすでに入れられていて料金式だった名残がある

個人的には古い旅館で部屋の中に洗面所があるのは結構珍しいと思っていて、そういえばあまり見たことないなと感じてました。

ただ、実際に部屋で過ごしているとちょっとしたタイミングで水が欲しくなるときがあります。手を洗いたかったり顔を洗いたかったり、そういうときに水場にすぐ行けるというのはとても便利でした。

壁の薄さについてはどうかというと、多分これくらいの年代の旅館だと普通レベルだと思います。隣の部屋の咳き込む声が聞こえてくるくらいでそんなに気になりません。

温泉

館内を一通り見て回ったことで疲れたので、その後はすぐに温泉に入りに行きました。

藤島旅館の温泉は玄関正面を進んだところにある「中浴場」と、客室エリア近くにある「大浴場」の2箇所。日帰り温泉ならば別々の料金が必要になりますが、宿泊の場合はどちらにも自由に入ることができます。

まずは中浴場から。

中浴場はどちらかというと日帰り温泉で訪れる人は少なめなので、比較的ゆったり入りたいという場合にはこちらの方がおすすめです。洗い場の数は3箇所あり、湯船は十分すぎるほど大きいサイズ。ここに少人数で入っているとまったり感も増幅されます。

いわゆる真癒の湯と呼ばれる温泉は昔から「脚気の川渡」の名で親しまれており、特に神経痛や関節痛に効能があるそうです。泉質は含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉 低張性弱アルカリ高温泉といい、源泉温度は47.6℃。pHは7.5です。

見ての通り抹茶のような渋い緑色の濁り湯が特徴的で、お湯の中には白色や黒色の湯の花が多く舞っていて効能の高さが伺えます。温度は自分的には適温よりも少し高めで長湯ができました。換気のために窓が開けっ放しになっていて、外の冷えた外気温が中に入ってくるので温泉の気持ちよさが増幅されている感じです。

この時期に温泉にじっくり入るのはまだ少し早いかなと思っていましたが、杞憂に終わって何より。特に早朝は寒くて温泉が恋しく思えました。

続いては大浴場へ。

大浴場に続く廊下の途中はなだらかな階段になっていて、休憩所や洗濯機スペースになっていました。建物の背後は山になっているため、どちらかというと上り階段になっていると思いきや、その逆を行く下り階段。つまり大浴場の場所は他と比べると標高が低いことになります。

大浴場の様子はこちら。

先程の中浴場と比べると湯船の大きさが2倍くらいあります。しかも洗い場の数も脱衣所の棚の数も多く、一度にかなりの人数を収容できるほどの広さがありました。中浴場と異なり大浴場は窓が一面にしかないため、明るい時間に訪れたとしてもちょっと暗めです。

大浴場については、どのタイミングでも日帰り温泉客が入っているという印象です。朝早くから夜遅くまで、近所の人がひっきりなしに入りに来ていてとても賑やか。すでに上で書いた通り、川渡温泉の中で人々の憩いの場になっているのは間違いありません。

温泉上がりのアイス

そして温泉から上がれば飲み物が充実しているし、アイスもあるしで時間を忘れてだらけるにはもう最高でした。

結局自分が泊まっている部屋には戻らずに、中浴場→休憩→大浴場→休憩という順番で温泉に入りまくっていた。温泉そのものが充実しているのに加え、温泉と温泉の間をつなぐ要素もまた充実しているのが藤島旅館の良いところだと思います。

夕食~翌朝

夕食の時間は18時頃からで、時間になったら帳場付近に来てくださいと女将さんから伝えられます。今回の夕食会場は、玄関奥の中広間でした。

夕食の内容

夕食の内容はこんな感じで、刺し身、焼き魚、酢の物、鍋、すき焼きなど一通り揃っています。味、ボリュームともに申し分なく、お腹いっぱいになれること間違いなし。

ご飯については食事の開始時点ですでに持ってこられているので、後は完全に自分のペースで食べ進めることができます。食事中は旅館の方が特にいらっしゃらないため、飲み物は最初にしっかり注文しておくのが良さげです。

夕食や朝食は宿泊者一斉スタートのようで、このときに初めて今日の他の宿泊者に出会ったりもしました。

夜の時間

食後はまた温泉に入りに行ったりして、気がつけば完全に夜になっていることに気がつく。日中の時間は自然光が支配していた館内にも照明の明かりが目立つようになり、雰囲気がまったく異なるのを楽しみつつ過ごしました。

この時間帯になっても日帰り温泉に入りに来る人は多く、近所の人ならたぶん朝方か夕方とかに温泉に来るんだろうな思っていたら果たしてその通りでした。

その後は部屋に戻り、就寝。

翌朝の様子。温泉の湯気が見える
朝食

翌朝はキジバトが鳴く声で目が覚めた。すぐ近くに山があるとはいっても、ここまで自然に囲まれていることを実感できる体験はなかなかない。

朝風呂に入りに行き、美味しい朝食を頂いて藤島旅館での滞在は終了しました。

おわりに

川渡温泉は鳴子温泉郷の中でも訪れる人が比較的少ないのか、自分がこうして宿泊している間にも観光的な目的で日帰り温泉に訪れたり、宿泊しているような人は見かけませんでした。真に静かな環境を求めているというか、時間の流れがゆっくりと感じられる場所で温泉に入りたい。そういう目的の人が訪れている感じ。

藤島旅館は川渡温泉の中で中心的な立ち位置で現在まで営業を続けられており、館内の様子や温泉、食事も含めて、今回自分が求めていた宿そのものでした。周囲の交通量も少なく、良い時間が過ごせたのは感慨深い。心からおすすめの旅館です。

おしまい。


本ブログ、tamaism.com にお越しいただきありがとうございます。主にロードバイク旅の行程や鄙びた旅館への宿泊記録を書いています。「役に立った」と思われましたら、ブックマーク・シェアをしていただければ嬉しいです。

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