【出雲~仁多米食堂~大原新田~福頼棚田】ロードバイクで石州瓦と水田を巡る初夏の山陰奥出雲ライド

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奥出雲の水田

島根半島を巡るライドから一夜明け、ゴールデンウィークもそろそろ終盤に差し掛かってくる5月のはじめ。今回は隠岐諸島や島根半島を回る際に印象的だった"日本海"から少し距離をおいた雰囲気を楽しむことを目的に、島根県の内陸部である雲南~奥出雲周辺を走ってきました。

同じ県内でも沿岸部と内陸部ではまったく異なる風景が広がっている…というのは全国どこも同じだと思いますが、島根県ではそれがより顕著な気がします。

ただし全体的に「石州瓦」という要素においては共通していて、どこの集落を訪れても切っても切り離せない。今日の目的はその石州瓦が広がる風景と、あとこの時期特有の水田を目当てに行程を決めました。

日帰りだとちょっと物足りない気がしたので同じ奥出雲にある温泉宿を宿泊先に選び、日中はまったくルートを決めずに走っていきます。

奥出雲を走る

沿岸部と内陸部ではまったく異なる風景が広がっているというのはすでに書いたとおりですが、それに書き加えるとするなら、観光的な要素が内陸部にはほとんどないということ。

沿岸部は出雲や松江、境港など交通が比較的発達しているところを中心に有名なスポットが多いのに対して、雲南市や奥出雲などはそれがあまり見られないような気がします。そういう中を走っていくとそもそも車に出会わなかったりしたりして、自分の時間をより充実したものにしやすいのが利点の一つ。

そういう意味でも、あえて内陸部を走る行程を島根旅の後半に持ってきたのは我ながら良い判断だったと言えます。

出発は出雲市にとり、ただ単純に斐伊川を遡っていくのは気分が乗らなかったので東にある国道184号へ。この神戸川のほとりをしばらくは南へ進み、適当なところで東に進路をきって奥出雲の中心部へ向かうという形にしました。

朝方ということもあり、静かそのものな山間部をまずは走っていく。

朝は空気がより澄んでいるようなきがするので、早起きして走るにはちょうどいい感じです。ましてやこういう大自然の中にこれから入っていくわけだし、朝方に行動するのは案外良いことが多い。早起きは三文の徳。

途中で立久恵峡という景勝地に遭遇し、神戸川の遥か上にそびえ立つ崖の迫力に驚く。

ここまで川の両脇がいたって普通の山々だったのが、ここにきていきなり崖に変わっているので突然感があります。

川の左右には森が広がっており、川の色と合わせて実に5月らしい風景というほかない。目がさめるような木々が視界を覆い尽くして、ここは別の季節、例えば秋や冬に訪れても最高だろうなと感じたりしました。

国道184号から県道39号へと移り、道筋にあった神社・須佐神社へ。ここは須佐之男命自らが「須佐」と命名し、自らの御魂を鎮めたと記されているところです。

旅先では当然ながら道に沿って目的地まで向かうことになる中で、ただ目の前の道を走るだけになるのは避けたいと常に考えています。走ること=目的地Aから目的地Bまで移動することだけに留まらず、やっぱり自分が知らないところを走っているのだから、出会うものすべてに新鮮な感情で接していきたい。

そういう中で神社は私的に寄り道としては最適ともいえる存在で、すでに何度も言っている通り旅先で出会う神社へ立ち寄る率はかなり高い。田園地帯に現れる神社ともなればそれは明らかで、今回も結構長居をしてました。

神社って一つとして同じものはなくて、周囲の環境なんかも土地によって違いがあるのがいいですね。地元の方からしたらもう日常すぎるかもしれないけど、こっちからすれば初めて遭遇した神社の一つという立ち位置になる。

ここで特に何をするというものでもない。目的があって訪れたわけでもない。でも、旅先の神社で過ごしていると個人的に良い気分になれます。(自分だけ?)

出雲市からいつの間にか雲南市に入り、ここら一帯では比較的まとまった石州瓦が見られる一帯にやってきました。

ここはかつての島根県で栄えていた「たたら製鉄」の町のうちの一つで、道の両側に立ち並ぶのは家屋だけでなく、土蔵が密集した土蔵群。これから向かうことになる奥出雲も含めて、島根県の内陸部にはたたら製鉄には必須となる山林(薪)や水(砂鉄)といった自然の資源が集まっています。

たたら製鉄は一時は日本におけるかなりの割合を誇っていたものの、製鉄としては小規模に留まっていたことから次第に西洋の方式を採用した製鉄所に押され、主流ではなくなりました。この町並みではたたら製鉄で財を成した家の土蔵を始め、古来の伝統的な歴史の一端を垣間見ることができます。

町の中心部を通る大通りを歩いていく中で、どこか観光的な要素が薄めなことが写真からわかってもらえると思う。

これはこの町に限らず県内で似たようなところが多くて、目新しい飲食店などの観光客向けの店はほとんどありません。あるのは昔からずっと残ってきた町並みと、そこに住まう人々の暮らしだけ。

だがそれがいい。

こう書くと確かに派手さはないものの、実に島根県らしい風景がここには残っていると思いませんか。町の中を歩いていると懐かしい感覚に襲われるのはこの地域、いや島根県の特色の一つだと思います。

町並みを後にして、相変わらずの平坦が皆無な山間の道を走っていく。

大きめな川沿いの道を走る分にはそんなに標高差がないのに対して、逆に言うと川沿いから少しでも離れると途端に坂道が登場してきます。道中では田んぼと山、小さめな川、そしてたまに遭遇する数件ほどの民家をもうどれほど見かけたか分からなくなるレベルで、そうそう中国地方といえばこんな感じだったと思い出すのにはちょうど良かった。

ただ、これからの季節の山間部は木々が生い茂っているのがとても助かりました。5月らしからぬ直射日光に辟易していたところなので、木陰で涼みながら走っていくのが気持ちいい。

たまたま見つけた湧き水(福寿水)で水を補給。うますぎる。

奥出雲周辺を走っていると川や田んぼなど「水」の存在を意識することが多くて、それは湧き水という形でも現れていました。適度に暑い日中に、キンキンに冷えた水を飲む。これほど充実感を感じることもなかなかない。

仁多米を味わう昼下がり

そんなこんなで奥出雲までやってきて、時間はもうすでに昼を過ぎたころ。

宿に向かう前に昼食にすることにして、前もって決めておいたお店に向かいました。

仁多米食堂 | 奥出雲町サイクリングターミナル

向かったのは、奥出雲における散策の拠点となる「奥出雲町サイクリングターミナル」の1階にある仁多米食堂です。サイクリングターミナル自体が宿泊や会議などに利用できる施設で、この仁多米食堂は飲食店として活用されている様子。

自分がこの仁多米食堂を訪れたのは理由があって、それはこの奥出雲地方で育てられているブランド米・仁多米を味わってみたかったというのが一番の理由。

これまでの道中で数多く見てきた通り、奥出雲には非常に田んぼ(特に棚田)が多いです。そもそもがたたら製鉄で栄えた土地なので豊富な森林に恵まれているほか、米の栽培にとって命ともいえる水に関してもミネラル豊富なので申し分なし。他にも昼夜の気温差が適しているなど、まさに米を育てるにあたって最適な場所が奥出雲なんです。

そういう背景から、今回の奥出雲ライドは実を言うと仁多米をお腹いっぱい食べたいというのも目的の一つでした。

この日の宿の食事だけでもそれは達成できるものの、お昼ごはんでもやっぱり仁多米食べたいよねという思いからここに決めました。

ランチメニューはチキンカツ定食や生姜焼き定食、唐揚げ丼やせいろ蒸し等をはじめとした「ご飯+おかず」という構成が基本となっています。

特筆すべきはどれもご飯のおかわりが無料という点で、何倍おかわりしようが値段は変わらないという神っぷり。

店内は自分が訪れたときを含めて常に満席状態で、地元の方の家族連れやツーリング客等で賑わっていました。

仁多米が美味すぎる件
おかわり余裕でした

今回はとんかつ定食と鶏皮を注文し、予想通り全然米が足りなくなったのでなんと2回もおかわりしてしまう始末。米が美味しすぎるのだから仕方ない。

店の方も米の消費率の高さは完全に把握しているようで、というか客が軒並みおかわりするので炊飯器の交換頻度が他の店ではありえないくらいでした。

あと、やっぱり運動した後というシチュエーションがお米の旨さに拍車をかけていると思う。

普通に訪問して食事を満喫するのもいいけど、何らかの形で運動した後に仁多米を摂取するとより美味しいと思います。この日は結構暑くて汗もかいたし、そんなベストな状況下で食べる仁多米と肉が美味しくないわけがない。

ライドで消費したカロリーを完全にオーバーするほど食べてしまって、良い時間が過ごせました。

奥出雲の棚田を巡って

昼食の後は宿のチェックイン時間まで、奥出雲の棚田を巡ってまったりすることにします。

県道25号を南下して最初に訪れたのは大原新田という棚田で、「日本の棚田百選」に選定されている有名なところです。2014年には「奥出雲たた中ら製鉄及び棚田の文化的景観」として、中国地方で初めて国の重要文化的景観にも選定されました。

ここはたたら製鉄による砂鉄採取地の跡地を田んぼとして造成し、現在の水田に造形した歴史があります。

棚田というと斜面に沿って土地を有効活用した結果、田んぼの形が千差万別だったりしますが、ここでは田んぼになった経緯の影響なのか一つ一つの田んぼの大きさが比較的均等で、棚田によく見られる石垣がないのが特徴。棚田の全体像も広々としており、棚田の中に通っている道を走っていると棚田という印象をあまり受けませんでした。

田んぼは四季を通じて様々な風景を見ることができ、周りの景観と合わせて日本らしい風情を実感できるスポットの一つだと強く思います。

そんな田んぼの季節で自分が一番好きなのがこの水田の時期で、水が張った田んぼが一面に広がっている様子が最高に好き。春から夏へと移り変わるタイミングで一斉に苗が植えられ、耳を澄ましているとあぜ道近くの水路に水が流れる音や、カエルの鳴き声が聞こえてくる。たまに爽やかなそよ風が吹いてきたり、展望台から棚田を眺めていると農作業の軽トラが爆走していったりもして。

ここにいると、日頃の喧騒の中では忘れていたものを思い出すことができる。日本の5月はこんなにも鮮やかさで溢れている。そんな当たり前のことを感じることができた。

走っていく中では川にかかった鯉のぼりや、小学校横のバス停のりばの上に茂った木々を見ることもできた。

5月というのは春から梅雨にかけての僅かな時間だけど、草木が力強く成長し、自然が生命に満ちあふれている様子を感じられる季節でもある。見るものすべてが瑞々しくて、走っているだけでこっちまで笑顔になってしまいそうだ。

夏になってしまえばもう暑すぎて屋外に出てあれこれするという気力がなくなるので、この貴重な期間を島根で過ごせたのは嬉しいです。

最後は、以前にも訪れた福頼棚田の近くで昼寝をしてました。

眼下に広がる棚田、こじんまりとした森、あぜ道、快晴の青空、所々に見える家屋。ここだけ切り取れば夏と勘違いしそうになるくらいで、一足早い夏休みに突入した気分になる。

気が利いたおしゃれな要素はここには必要ない。現代風らしい便利さも今は置いておいて、ただこの奥出雲の原風景を満喫できている。今回の旅はこれでおしまいになるけど、それを差し引いてもありのままの景色を見れただけで自分は十分。

旅先で何をやるかは人それぞれだとして、こういうところで木陰で休みながら横になるのも結構いいと思う。もう宿はすぐそこだし、急ぐ必要はどこにもない。

一通り昼寝した後、棚田の下の方にある商店でお婆ちゃんからアイスを買って軒先で食べたりしてました。そろそろ冷たいものがほしいなーと思っていたところにちょうどよくお店があったので運がいい。

お婆ちゃんと今日は暑いねぇとか他愛も無い会話をしつつ、古ぼけた椅子に座ってアイスを頬張る15時過ぎの奥出雲のひととき。旅先でしか味わえない体験ができているといえる。

この後はさらに山の方まで走って、斐乃上温泉の民宿たなべに宿泊しました。宿泊記録については別記事でまとめています。

翌日は斐伊川の上流、というかほぼ源流から出雲市までノンストップで走り、今回のゴールデンウィークの旅はすべて無事に終了。海から山まで、まだ自分が行ったことのない島根県のあちこちを楽しめたと思います。

結局のところ、自分はこういう飾り気のないありのままの日本の風景が好きだということ。

これからもそういう場所を目的に、全国各地を走り回ることは続くだろう。

おわりに

同じ島根県内でも、場所が違えば景色も雰囲気もガラッと変わる。同じ海沿いをずっと散策するよりは気分転換になると思って計画した今回の奥出雲ライドは、石州瓦と水田、それに仁多米という目的がほどよく満たされた結果になりました。

ずいぶん贅沢な時間の過ごし方をした旅になったものの、時間はカツカツに使うよりかはバリバリに余らせる感じのほうが精神的に余裕が出てくる。旅先で何かをするか?よりもどんな時間を過ごすかに重点を置いている自分として、満足の行くものになったと思います。

島根県にはまだまだ行ってみたいところが多いので、今後も折を見て再訪することになるはず。今から結構計画しているので楽しみです。

おしまい。

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