今回は、ロードバイクで富山県南砺市を中心に訪問してきました。
この日の目的は南砺市の井波にある東山荘に宿泊することで、単純に当日の天気が良かったので交通手段を車にするのはもったいないと思った次第。そもそも今年の抱負が「アクティビティを増やす」だし、鄙びた宿に宿泊するにしても日中に運動したいのでこうしました。
例えば旅か何かで遠方の宿に泊まる機会があったとして、電車や車だと宿に辿り着くまでの行程が結構限定されてしまうような気がします。でもロードバイクだとそういうことはあまりなくて、道があるところなら自分で道筋を自由に選択することができる。
今回の場合だと高山から八尾へ走って井波へ到着、翌日は井波から金沢へと走る形になって、ロードバイクならではの適度な速度感で風景を満喫できました。比較的近所で一泊二日という一般的な日程という中で満足感を得られたし、別に遠くに行かなくても自分なりに継続できる趣味をやっててよかったという感じ。
国道41号から八尾へ
初日は岐阜県高山市まで輪行し、ここから井波へ向けて走っていく。
始発に乗ればそこそこ早い時間に高山に到着でき、これからの季節だと乗鞍ヒルクライムも含めて選択肢が多くとれるのが良いところです。高山以外にも下呂温泉という有名地もあって、観光目的で高山本線周辺を外すことはできない。
久しぶりに訪れる飛騨高山の様子は以前とは一変していて、駅を降りた瞬間から外国人観光客の姿がとても多かったです。というか駅前で日本人の姿を探すほうが難しく、2019年の高山とかこんな雰囲気だったなと思い出してしまう。
朝市の方へ向かうとそれがより一層顕著で、本当に人が多くて移動が大変でした。まだ土曜日の昼前なのにこれほどの混雑度とは。
当初は適度に高山を散策してから北上するつもりが、いきなり精神的に疲れたので飛び出しえるちゃんの看板を見るだけにしておきました。
高山を後にして、国道41号から国道360号を走って北へ。
単純に国道41号をずっと走ることでも富山県には向かえるものの、神岡までの区間で上りに入るのでおすすめできません。
宮川と高山本線に沿って国道360号を走ればアップダウンも少なく、快適に走れます(トンネルがめっちゃ多いけど)。国道360号を通って岐阜県と富山県を行き来しようという物好きなドライバーは少ないので、ロードバイクで通るならここしかないという感じ。
富山県の南側は基本的に山ばかりだけど、山と平野部との境界くらいの風景が自分は好きです。具体的に言うと田んぼが広がっている田園地帯のすぐ側に適度な山があるという地形がそれで、この日は天気が良かったのでなおさら気持ちがいい。
富山県の八尾に到着。
「おわら風の盆」として知られる八尾は、昔ながらの家並みが続く坂の町。特に諏訪町の本通りは山の傾斜に合わせた石垣の上に形成されており、石畳と白壁、格子戸の家々が直線状に連なっている様子は見事なものでした。
この辺りにはいずれ宿泊したいと思っている宿もあるので、散策をしっかりやるのはその時かな。見ての通り観光客は少なく、夏の越中おわらに向けての準備が進められているようでした。
八尾までくれば井波はもうすぐそこということで、両者の間にある丘陵地帯を抜けていきました。
この辺りは以前走った国道471号などの完全な山岳地帯とまではいかず、丘と僅かな平野が連続するような特異な地形です。これもまた平野部と山との境界に位置する場所ならではの特徴であって、ロードバイクで走っていると地形そのものの変化をダイレクトで実感できるのが良い。
電車だったらまず山岳部に路線が走っていないし、車だったらアクセルを踏み込むだけでスピードが出るので斜度の変化は気にならないもの。でもロードバイクって完全な人力なのでそういうのに敏感で、要はアップダウンが多くて疲れたということ。
ただアップダウンの多さにうなだれつつも、林の中を通れば涼しいし日向に出れば暑さを感じる。自分の性格的に夏場は暑すぎて走らないことを踏まえると、「五感をフル活用して屋外の環境を存分に体感できること」としてロードバイクに乗れるのは今の時期しかない。気分転換にもなるので、梅雨前に乗れるだけ乗っておきたいところです。
木彫刻のまち 井波を歩く
というわけで、南砺市の井波に無事到着。
井波は有名な木彫りの町として、「井波彫刻」の名を全国に轟かせているところです。その始まりとなった井波別院瑞泉寺を中心に八日町通りと呼ばれる表参道があり、その道の両側に数々の店が集まっていました。
今までにも数多く古い町並みを訪問してきたけど、井波のように単一の技術文化を持ち、木彫師たちが日夜作業をされている町というのは個人的には珍しい。2018年には日本遺産にも認定されたほどの職人の町ですが、そういう背景もあって散策中は木彫刻の技術の高さに目を引かれました。
宿にチェックインする前に、八日町通りを軽く散策。
表参道というだけあって道幅が広く、見通しが良いのがまず良い。家屋や店が集まっている中でも空間的な余裕があって、頭上に広がる青空の割合が狭められていないので開放感があります。
そんな中で、店舗を除きながら瑞泉寺方面へと歩いていく。まだチェックイン時間にすらなっていなくて時間には十分余裕があるとなれば散策をするしかない。井波のような昔ながらの建物が並ぶ通りは個人的にかなり好きで、変わった建物とかを眺めているだけでも満足できる。
というか古い町並みって、同じような建物が無いのが素敵だと思っています。
アパートみたいに同じ構造が連続する画一的なものではなく、その家や店の用途・家族構成などに応じて建物の広さは異なってくるし、戸の配置や窓の多さにも影響してくる。一つ一つの家屋はそんな感じで外観も雰囲気も違うんだけど、「町並み」として一つになったときにある種の統一感が生まれている。
自分がこういう場所を好きなのは、そういった統一感の有無が関係しているのかもしれない。
それにしても、町内のいたるところで木材の存在感を感じる。
看板や表札が木なのはもちろんのこと、木材の動物の像があったり木彫りのバス停があったりと、井波のまち全体が木彫刻の装飾で彩られているのが分かります。
古い町並み=古い建物は木造建築ということを前提としても、あえて木材を使用することで雰囲気の良さに大きな影響を与えている。現代生活では身近に木材の存在を実感することは少ない一方で、井波ではむしろ木材がメイン。
石と木に包まれた通りを歩いていると、代々受け継がれてきた技術の一旦を垣間見れたような気がして嬉しくなりました。
一通り歩いた後は、井波の街の真ん中に位置する瑞泉寺に参拝。
時間はすでに夕方に差し掛かっており、さっきからひっきりなしに訪れていた参拝客の車列も一段落しています。
割と拝観可能時間のギリギリに訪問したので、比較的人が少ない中で参拝できました。
瑞泉寺の広い境内には見頃になっている藤の花が見られ、建物の各所には井波彫刻の繊細な造りがあります。寺のように大きな木造建築は家屋のそれとは全く違った印象を受け、北陸最大級を誇る巨大さは圧倒されるばかり。
ちなみに瑞泉寺は寺には珍しいくらいの高い石垣で囲まれており、これは戦国時代に起きた越中一向一揆の際に拠点として活用されたことによるものだそうです。今回泊まった東山荘からはこの石垣越しに山門が見えて、石垣の高さがかなりのものなので気になってました。
瑞泉寺に参拝後は、そのまま東山荘に宿泊。宿泊記録は別記事でまとめています。
東山荘の存在は昔から知っていたものの、なかなか訪問タイミングを確定できずにいました。せっかくなら宿泊と一緒に井波の町並みを散策すれば理解を深められそうということで、今日の行程に至っています。
これは個人的にはかなり良い選択だったと思っていて、その土地にしか存在しないような宿、つまりその町と一緒に歴史を歩んできたような宿に泊まるのであれば周辺の散策も一緒にやるのが吉。今回の場合でいうと井波の昼と夜、そして朝を過ごすことで、井波の雰囲気を十二分に堪能できたと思います。
翌日は金沢へ
井波での宿泊から一夜明け、この日はもう帰宅するだけ。
富山から高山本線で帰ると時間がかかるので、金沢まで走ってから滋賀経由で帰る方針としました。
富山県西部の砺波平野(庄川と小矢部川が形成した扇状地)においては、このように水田の周りに形成された屋敷林が有名です。
古くから稲作が盛んだったこの地域では、適度な間隔で農家が散らばって建つ「散居村(田畑が広がっている平野に農家が一軒一軒散らばっている農村形態)」が形成されました。その際に風雪や夏の日差しなどから家屋を守るために植えられたのがこの屋敷林で、家屋に接するようにこじんまりとした林があるのが特徴です。
この時期だとちょうど田んぼに水を張っているので建物周辺が浮き上がっているように見え、水田と青空に挟まれたところにぽつぽつと家屋がある風景がとても美しい。一般的な農村形態は集落と田畑が完全に分離している「集村」ですが、富山県の屋敷林は対極にある存在と言えます。
現在進行系で農作業をされている方が多くて、のどかな日本の原風景を眺めながらのライドは心が落ち着いてくる。
井波から順当に西へ走り、金沢ではひがし茶屋街等を軽く散策してからカレーを食べて帰宅。
ひがし茶屋街もまたかなりの人だかりだった上に、海鮮系のお店はどこも行列待ちがひどかったのでカレーにして良かったという感じ。海鮮自体は東山荘でも頂いたし、翌日の今日はなんかカレーの気分だった。
以上で、一泊二日の北陸旅は終了。
富山県は登山では今までに何回も訪れているものの、標高が低いところは案外訪れたことが少なかったので良い機会になりました。自分が住んでいるところとそんなに距離がないのに知らないことが多い…という土地は多いので、タイミングを見計らって訪問していきたいです。
おしまい。
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