【テント泊登山】最南端の百名山 夏の宮之浦岳を縦走してきた Part 2/2

無事に宮之浦岳山頂に到達できた時点で、時刻はまだ朝の8:30。

これからゴール地点の白谷雲水峡まで下っていくことになるのでまだ油断はできないものの、ペース的にはかなりいい方です。

もくじ

笹原を歩く

眼下に広がるのは縄文杉までの笹原の縦走路。

今から歩いていく道がここから見渡せるのは、否が応でもテンション上がります。

ここから先は基本的には登りのときと同じような道が続く中で、登りとの違いはなんといっても膝を上げないで済むこと。

下りなので当たり前なんだけど、やはり疲労の溜まり方が格段に減るので色々と余裕がでてきます。例えば景色を見渡したり、近くの植物に目をやったりする気力が湧いてくる。

宮之浦岳を登頂するという主目的はすでに達成されているわけで、そういう意味では精神的にも安心できますね。

ただし、道の方は相変わらず限界っぷりを醸し出しています。

まるで笹が覆いかぶさってくるかのような道がかなりの割合を占めていて、場所によっては地面が見えないくらい笹で覆われてました。段差が多い場所で足元が確認できないのはかなり怖いです。

この縦走路を歩く人自体が今年はそこまで多くないので、笹が必要以上に成長しすぎてしまったんだろうか?仮に半袖や半パンで歩いているとスパスパ切れそうで怖い。

宮之浦岳周辺は、ある程度の標高以上になると笹原と巨石がメインの地形になることはすでに触れているとおりです。

宮之浦岳から縄文杉へ向かうルートではこのような巨石のすぐ近くを通ることが多く、その大きさに圧倒されることが多くありました。さらにこの辺りにはサルも多く生息しているようで、鳴き声だけでなく巨石の上をうろちょろする姿も確認できたりします。

登山道上の木の板の上を歩いていたりもするし、笹原をガサゴソ歩いている様子も見えたりするので相当数は多い様子。

巨石の上に登って宮之浦岳方面を眺めてみる。

巨石はたいてい下側にせり出しているのでかなり高度感があり、周囲の地形と相まってダイナミックな風景が楽しめます。

これから向かうことになる方角をざっと眺めてみたところ、ご覧の通り思いっきり森の中。

森の中から始まった今回の縦走は宮之浦岳で一段落し、ここから下山までは最初のときみたいな樹林帯歩きが再度続きます。展望は得られないから退屈な時間を過ごすことになるのかと思っていたものの、ここからの歩きも実に楽しかった。

頂上付近の笹原地帯から一変し、木の根が支配する森の中を歩いていく。

自生している植物も(よく分からんけど)南国っぽいものが徐々に増え、今まで歩いてきた道とのあまりの差に驚くばかりでした。ずっと同じような雰囲気の道が続くのではなく、いい意味で風景に変化があるので歩いていて全く退屈しません。

そして何よりも、自分はいま太古の原生林を歩いているという感覚がだんだん強くなってくるのでとにかく面白い。

この時点でこれなのだから、"原生林感"が最大になるであろう縄文杉やウィルソン株周辺では一体どのような雰囲気になってるのだろうか。

屋久島の原生林

あれから樹林帯をひたすら歩き、コース上では淀川小屋の次に登場する新高塚小屋に到着しました。

新高塚小屋(収容人数60人)は淀川小屋と同じように水場やトイレがあり、その標高は約1,500m。宮之浦岳の標高が1,936mなので、およそ400m下ってきたことになります。

小屋の周辺には木の板が敷き詰められた広いスペースがあり、テントを張るのがかなり楽そう。混雑時にはここがテントで埋め尽くされるようですが、到着時点では1張がぽつんと張られているだけでした。

単に宮之浦岳にピストンで登るだけであれば、ここに張っておいて身軽な装備で往復するのもアリだと思います。

そのままの勢いで、新高塚小屋から1.7kmのところにある高塚小屋まで下ってきました。

高塚小屋自体は新高塚小屋に比べてかなり小さいため、収容できる人数も20人程度と相当限られています。縄文杉方面から来る場合は「新」の方まで行ってしまった方が楽に寝られるかも。

ここら辺りからさっき話した"原生林感"が途端に強まります。

具体的に言うと著名な縄文杉が多く登場するゾーンに入ることになり、まるで童心に帰ったようにはしゃぐことになりました。

その初っ端にして最強なのが、この縄文杉

縄文杉は確認されている屋久杉の中でも最大級の老大木として有名で、その胸高直径(成人の胸の高さの位置における立木の直径。材積測定に用いる)はなんと5.2m

展望デッキから杉までの距離がかなり遠いのでその巨木さを若干感じにくい面もある中で、それでも圧倒的な存在感はひしひしと伝わってきます。

最新の研究だと樹齢は約2,200年くらいらしいので、今自分が行きている西暦よりも前、紀元前から存在していたということになります。もう果てしないほどの昔すぎてよく分からなくなってきた。

縄文杉は屋久島を訪れる人にとっても重要な訪問ポイントらしく、今までの道では全く遭遇しなかった人間がここにきて急に増えます。

ほとんどのグループはガイドを伴って訪れており、熱心にその説明に聞き入っている様子が確認できました。自分たちもこっそり聞いてました。

しかし、屋久島の観光地とはいっても最寄りの登山口から往復最低10時間はかかる道のりなので、ちょっとハイキングも兼ねて訪問するか程度の認識で来るのはなかなか難儀だと思います。

結構アップダウンもあるし、一筋縄ではいかない感じ。

大王杉

縄文杉を過ぎたあたりから人も増えるけど巨木も増えます。

正確に言うと今までも大きい木はそこら中にあったんだけど、大きいでは済まないほどの木が登場してくる。

例えば上の写真、奥に見える比較的普通の杉の木と手前の杉とのサイズの違いがやばい。遠近感を抜きにしても、突然変異みたいなデカさの木がいきなりヌッと姿を見せるもんだからかなり驚く。

ウィルソン株

そんな巨木がひしめき合う屋久島の原生林を歩いていくにつれて標高は徐々に下がってきており、快晴だった天気も雲が増えてきて、森の中は次第に薄暗くなってきます。

ただ、適度にガスっている方が雰囲気がより色濃く出るように思えるのは気のせいではないはず。

屋久杉の切り株ウィルソン株では、巨木のデカさを十二分に味わうことができます。

なんと切り株の中が空洞になっており、その中に入ることができるんです。株の中には清水が湧き出てたり祠があったりして実に神秘的。普段ならとても混雑してて中に入れないときもあるものの、今回の訪問タイミングでは数えるほどしか人がいませんでした。

そのため静寂感をまったりと満喫することができたし、切り株の中で座って上を眺めてみるだけでもう力が抜けてくるくらい。

湧き出る水の音しか聞こえてこない空間の居心地の良さといったら、もうずっとこの場所に居たいくらいです。

翁杉跡地

石と苔、それに木々が重なり合う世界。

日常ではまずお目にかかれない風景なだけに、ただそこにいるだけで心が落ち着いていくのがわかる。まるで異世界に来たみたいな感想ばかり湧いてくるんだけど、本当に景色が壮大過ぎるから仕方ない。

この屋久島に多くの人が訪れる理由が分かった気がしました。

下山

翁杉を過ぎたあたりで道の様相がまた変わります。

突如として道の上に登場した線路

これは一体何なのかというと、かつてこの地を走っていた安房森林軌道という森林鉄道の名残なのだそうです。

今でも登山道の整備等でたまに使われているそうですが、普段はこのように線路の上を歩けるという話なのだから極めて珍しい道といえます。

しばらくはこの道をトコトコ歩いていくことになって、これが楽しい。

線路の上を歩けるだけでも興奮するというのに横目に見える風景も素敵という、まさに二重で楽しめる区間というわけ。

ただし、登山的な意味ではこの木の板の上を長距離歩くのはなかなか疲れました。

登山靴は基本的に硬いものの上を長く歩くようにはできていないので、足の裏や足首周辺が結構痛くなってきたりします。1時間くらい歩くことになるので相当辛かった…。まあ雰囲気が良すぎるから問題なし。

三代杉

森林軌道上をひたすら歩いて、ゴール地点である白谷雲水峡までの最後の山場まで到達しました。

この先の辻峠までがこの縦走路での最後の登り区間となり、あとは白谷雲水峡まで下りオンリーとなります。

すでに体力もあまり残っていないのでペースはガタ落ちする一方。

とはいえ、無理に急いでスタミナを切らすのが一番の悪手なので自分のペースで登ることが重要です。とにかく焦らないことが登山で一番大事なことじゃないかな。

辻峠までくればもう一安心。

あとは白谷雲水峡の入り口までゆるゆると下っていくだけです。

そして15時45分頃に白谷雲水峡に下山完了。お疲れさまでした。

今日の歩行距離は約20kmで、山で1日に歩く距離としてはそこそこ長いです。後半はもうバテバテだったのでもっと体力をつけたいところ。

時間には余裕を持って出発したつもりだったものの、なんだかんだで最終バスの時間ギリギリになってしまいました。最終バスが16時10分なので、途中で休憩を長く取っていたら間に合うか微妙なラインだったかもしれません。

本当の最終バスはさらに1本後にもあったはずなんですけど、どうやら現在では本数が減らされているようです。それを知らないままに普通に歩いてきてこれだったので、結果論になるけど偶然うまく行程がはまってくれたという感じ。

何しろ白谷雲水峡では電波が一切通じないので、下手するとタクシーも呼べません。

ともかく、なんとか無事にバスに乗れました。めでたしめでたし。

宮之浦岳をほぼ日帰りするみたいな限界登山を終えて下界に降りてきた我々を迎えたのは、とてつもない暑さと快晴、それにこれ以上ない達成感でした。

改めて山手方向を眺めてみると、登山の入り口にすぎない白谷雲水峡もあんな上の方にあるのがわかります。さらに宮之浦岳は島のどの集落からも見えないくらい奥地にあって、海沿いからではその奥深さをうかがい知ることが全くできません。

でも自分たちは数時間前にその山頂に立っていて、それが今はこうして下山して一息ついている。

あの360°の展望の良さがまるで夢だったんじゃないかと思えるくらいに山間部と沿岸部の環境に差があった。屋久島ってほんとすごい。

予定ではこの日に下山できるか不透明だったため、宿はとってませんでした。

そのため下山してから宿を探すことになりましたが、宿探し1件目で問題なく空きがあったのでここに決定。屋久島は民宿の数が非常に多く、さらに素泊まりで安く泊まれるところも多いので登山者にとって優しい宿泊環境といえます。

宮之浦岳登頂おめでとうございます

下山後にやることといえば、やっぱりお酒。

ずっと行きたかった宮之浦岳に登ることができ、しかもあんな天気のいいベストコンディションで歩けたのは奇跡に近い。二人で最高の体験ができたことを近くの居酒屋で祝うことにしました。

今回自分が注文したのはサバフライ定食。

屋久島というと昨日食べたトビウオが有名なのに対し、地魚としてはサバもまた非常に美味しいとのこと。そんな話をちらっと聞いたからには食べてみるほかないということで頼んでみました。

一口食べてみてまず思うのが肉厚で身が大きいこと。

食べごたえがもう十分すぎて、登山終わりでカロリーを欲している身体にサバの旨味が染み渡っていきます。そしてサクッとした食感の後にふわっとした柔らかさが口の中に広がる幸せ感。これの後にビールを流し込めばそれだけでもう優勝できる。

もちろんトビウオやサバ以外にも海鮮系は間違いなく美味なので、何を食べても優勝できることは間違いないです。


夕食を満喫したあとはもう寝るだけ。

民宿に帰った途端に登山の疲れがやってきて、布団で死んだように眠りにつきました。

屋久島を離れる朝

むくり。知らない天井だ。

エアコンの効いた部屋で目覚める民宿の朝はテント泊とは別の意味の快適さを感じる一方で、もう登山が終わったという事実を突きつけてきて、どことなく寂しい気持ちになりました。

どうやら今日も、昨日に引き続いて屋久島の天気は良い様子。

この日は鹿児島に移動するだけなので天気はあまり重要ではないけど、屋久島を離れるときまで晴れてくれるのは正直嬉しいです。

バスで空港に移動してからは早いもの。

屋久島から鹿児島に飛ぶ始発便に乗り、屋久島を後にしました。

上空から眺める屋久島は先刻までとは一変してガスがかなり発生しており、同じ晴れ予報でもここまで天気に差があることに驚きを隠せません。

そう思うと同時に、昨日はなぜあそこまで快晴だったんだろう?と不思議にさえ思えてくる。

昨日の今頃は宮之浦岳の山頂にいたわけで、つまりは天候に愛されていたということ。

鹿児島空港に無事到着。

今回の旅での登山は宮之浦岳で終わりではなく、実はこの後に鹿児島空港の目の前に見えている霧島山にも登りました。それはまた別の話。

おわりに

去年から1年後しの願いが叶った今回の屋久島登山。

予想以上に好天に恵まれ、雨が多い屋久島において一度も雨に降られることなく登山を終えることができて本当に良かったと思います。

天気予報を見てからすぐに行動に移さなかったらたぶん後悔してたと思うし、やらないで後悔するよりはやって後悔したほうがいいという言葉の通り実行しておいて正解でした。

ただ単に登山ができたというだけでなく、屋久島の奥深い森の中を歩くという体験もできたことはとてもいい経験になりました。まさに百聞は一見にしかずの通りで、直に自然に触れるのは想像以上に心に来るものがあって。これは本当に嬉しかった。

屋久島、自然好きにはたまらない土地だと思うので個人的に一押しです。

おしまい。


本ブログ、tamaism.com にお越しいただきありがとうございます。主にロードバイク旅の行程や鄙びた旅館への宿泊記録を書いています。「役に立った」と思われましたら、ブックマーク・シェアをしていただければ嬉しいです。

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