- 前編:宇和島~八幡浜
- 後編:八幡浜~佐田岬半島~佐田岬灯台
新年早々3泊4日で四国を旅する機会があって、その旅の主な目的は愛媛県の佐田岬半島をロードバイクで目指すこと。前日は上記リンクの通り、宇和島から八幡浜までを走って今日に至ります。
個人的に日本全国の端っこの方には魅力的な風景が溢れていると思っていて、この佐田岬半島もその一つ。場所が場所なだけになかなかアクセスするのが難しいところではありますが、その分なおさら到達したときの感動はひとしおになるはず。
初日はまず宇和島まで輪行して八幡浜に抜け、2日目は中日扱いで1年前にも泊まった愛媛県大洲市の小薮温泉に宿泊。そして本番である今日は、小薮温泉から八幡浜を経由して四国最西端・佐田岬半島を目指していきます。
四国最果ての地へ
この日は散策的な意味でかなり長丁場になることを踏まえ、小薮温泉を出発するのは日の出前とせざるをえませんでした。
が、冬場の早朝にロードバイクで走るというのは結構な覚悟が必要になります。まず布団から這い出すのに一苦労するし、そこからロードバイクに跨ってスタートするまでがかなり辛い。走り出してしまえば身体が暖かくなるので特に問題ないけど、意を決するまでが長くなってしまいがち。
それを乗り越えて、まずは朝食を食べるために八幡浜に舵を切りました。道としてはほぼ平坦。天気の方は晴れ予報になっている一方で、山間部特有の霧が立ち込めているため青空はまだ見えません。
大洲市と八幡浜市の堺にある夜昼隧道を超えると霧が消滅し、望んでいた空が眩しい。
本番となる今日の天気は走る上で非常に重要となるためかなり重要でしたけど、結論から言えば最初から最後までずっと快晴でした。思えば、旅に出る旅に晴れに遭遇する機会がやたら多い気がする。自分は天候に恵まれているんだと思わざるを得ない。
そのまま下り坂を駆け抜け、まずは八幡浜市の中心部にある道の駅に到着。
ここから先では食事を取れる場所がほとんどないため、ここで朝食にしました。選んだのは道の駅の中にある「どーや食堂」という食堂で、朝7:00から営業しているため行程に寄らず利用しやすいところ。旅先の食事をコンビニで取るのはあまりにも味気ないし、できるだけその土地にしか無いような店を探して食事をするようにしています。
時間帯によっては選べないメニューもある中で、漁師のまかない丼(特盛)というのを注文。これは丼の半分がしらすで、残り半分に刺し身が乗っかっている豪勢な丼ものでした。見た目から分かるようにめちゃくちゃ美味しくて、水揚げされたばかりの新鮮な魚を朝からいただけるというのは幸福感があります。
比較的愛媛県の内陸部を走ってきた今までとは異なり、ここからはただひたすらに海沿いを走っていく行程であることを考えれば、その気分を盛り上げていく目的で海鮮丼を食べるのは理にかなっている。後から振り返ってみればこの日は景色はもちろん、食に関しても海要素で占められていたと思います。
道の駅「八幡浜みなっと」には色んな店が集まっている一方で、その脇にある風景も見逃してはならない。
宇和島~八幡浜の行程中にも見かけた、海の向こうの陸地にみかん畑が広がっている風景がここにもあります。しかも風景が開けているのでそのスケール感も強く、停泊中の船、その向こうの家屋、その上方の畑という風に視点が移っていく。四国といえば山が多いことが特徴の一つですが、その特徴と「海沿い」という要素が掛け合わさるとここまで雄大な景色になる。実に素敵だ。
また、すぐ隣には別府や臼杵への航路が繋がっているので大きなフェリーの往来もあります。こういうのを見ると、日本は(当たり前だけど)陸路や空路だけで繋がっているわけじゃないというのがよく実感できる。
本州と四国、九州、それらに付随する島々。船は移動手段としてもなくてはならないもので、船を介して各地は繋がっていると思うと感慨深い。
三崎港までの道
八幡浜から佐田岬半島の三崎港までは国道197号(佐田岬メロディーライン)を真っ直ぐ進んでいけば到着しますが、国道だけ走ってもつまらないのでいつものように寄り道主体で走ることに決定。
これから佐田岬灯台まで行くことになるので時間に余裕はそんなにないけど、かといって急ぎすぎるのは精神衛生上よくないのはよく理解している。いつもやっているようなライドとは少し状況が違う中で、ベースとなる遅すぎず早すぎずのマイペースは崩さない。
八幡浜からは海沿いに県道249号を抜け、保内~伊方~伊方ダムと交通量が少ないところを縫うように走って国道に合流する感じで走っています。
予想外だったのが道路上にブルーラインが敷かれていることで、ここに限らずロードバイクを歓迎している雰囲気は見て取れました。ちゃんとロードバイクが走りやすいルートを通っているのはありがたくて、しかも景色もいい。愛媛県でこのルートを考えた人はそのあたりを理解ってる感がある。
国道に合流するまでの区間は本当に走りやすくて、特に信号がないのが走る上で助かる。しかも常に海を眺めながらのライドはずっと継続できていて、交通量がない、適度な高低差の先に海に面した集落が見える…と良いことづくめ。
さらに言うと、陸続きでこれから走る道が海の向こうに見えているのも個人的に好き。今自分がいる場所から小さな半島や岬をぐるっと回り込んであの集落があるところまで走るんだろうな…とか考えながら走っていくとなおのこと気持ちいい。
そんな平和な道が国道に入ってからは割と一変し、半島の真ん中を通る山岳部を正面突破する感じでアップダウンが多くなります。
というか、海からちょっと内陸に行くだけですぐに山が登場してくるという特徴的な地形はここでも健在でした。国道を通す上では車道として走りやすい道でなければならないので、佐田岬半島の中ではこれでもマシな方なのかもしれません。上ったと思ったらすぐに下るパターンが多くて、その逆もあるしで結構ハードでした。
ただ、一旦上まで上がってしまえば展望が非常にいい。
山のてっぺんに立っている風力発電用の風車も遠くに見えるし、視界内の景色に奥行きを感じるのは走っていて楽しいです。
こんな感じで国道は走りやすいといえば確かにその通りで、ブルーラインが引かれている上に基本的にまっすぐ進めばいいので迷う心配はありません。
ただし車の通行量はそこそこ多く、トンネルも頻出するので走る際はそこだけ注意かと。
ただ、そんな風に走りやすい道ばかり選んで走るのだけが旅ではない。
全国どこでもそうですが、国道は後から建設された道なので景色的な良さはあまりありません。走りやすいのは走りやすいけど、それと景色の良さがどこかトレードオフになっている感は否めないのが現状。今回も国道から見える風景に飽きてきたこともあって、三崎ドライブイン周辺から脇道にそれてみることにしました。
この先が行き止まりだったとしたらそれまでの話だけど、道というのものはどこかで繋がっている。幸いにもこの道は三崎港まで繋がっているっぽいので、そのままの勢いで走った様子が上の写真です。
その先の道は「基本的にみかん畑、たまに集落」という感じのまさに旧道という雰囲気が残っていて、個人的にはどちらかというとこっちの方が好き。坂もきついし路面は結構荒れているものの、そこで出会える風景を考慮するとこういう体験があってもいい。
地名としては伊方町の名取~大佐田を海沿いに走り、坂道を下って三崎港側の海辺に到着。後は気持ちよく流して三崎港に着きました。国道とは打って変わって、遭遇した車といえばみかん畑の軽トラ1台だけ。ロードバイク的な意味だと走りやすいことこの上ない。
で、予定通りに昼過ぎに三崎港に到着できたということで一安心です。
通常ならこの時点で1日の行程が終了した…というお疲れ様的な気分を味わいたいところで、実質そうなりかかってましたけど休むのはまだ早い。佐田岬半島はこの先にも続いており、本当のゴール地点は三崎港ではなく半島の先端にある佐田岬灯台なんです。三崎港からの景色を見て「えっまだあんなにあるんですか!?」って絶望しました。
というわけで休憩もそこそこに、今日の宿であるえびすや旅館にサドルバッグとフレームバッグを預けてからのライド再開。1日の時間としてはまだ半日もあるけど、季節が冬ということを考えると日没までそんなに余裕はありません。
佐田岬灯台にて
三崎港から佐田岬灯台までの距離は約14kmで、往復すると約28km。
これだけ見ると余裕じゃんと思ってましたけど、今までの行程がそうだったようにアップダウンが非常に多いです。さらに佐田岬灯台の駐車場から灯台までの徒歩区間が地味に長いので、時間には余裕を持った行動をおすすめします。
灯台までの県道256号を走っていく中では、想像以上に多くの集落に出会うことができた。
正直なところ、人が住んでいる区間は三崎港までだと勝手に思ってました。しかし現実にはそんなことはなく、伊方町串の周辺には民家もあれば商店もあり、佐田岬漁港や民宿などもあって生活圏が形成されている。全国を旅していく中では予想だにしないところに人が住んでいる場面に遭遇することが少なくないですが、四国はそんなケースが比較的多い気がします。
でも、私としてはこういう景色こそ見てみたかったものだった。
旅先で遭遇する人の営みや、生活されている様子。それらを体感したいがために自分はあちこちに出かけているので、今回ここを走ることに決めて本当に良かったと思います。
そんな感じで感動しながらロードバイクを走らせ、ついに車道の終点である佐田岬灯台の駐車場に到着しました。走行中にそこそこな数の車に追い抜かれましたが、その目的地は例外なくここだったようです。
この駐車場から灯台までの遊歩道は完全に徒歩オンリーで、しかも写真に示しているように平坦ではありません。灯台周辺をゆっくり散策することを考えると、1時間半くらいは見ておいた方がいいかと思います。私の足で普通に歩いて片道30分程度でした。
遊歩道は基本的に階段が少なく、傾斜のみで構成されているのでかなり歩きやすいです。
そして歩くこと30分、椿山展望台を経て最終目標地点である佐田岬灯台に到着!
今朝早くから出発してひたすら西へ走り、内陸から半島を経て今は四国の最西端にいる。ここまで無事にたどり着くことができた嬉しさはもちろんのこと、1日の行程の濃さを今になって強く実感できたような気がする。ここまで自力で走ってこれて…良かった…。
佐田岬灯台が建てられたのは1918年(大正7年)のことで、当初は有人で管理されていたものの1993年(平成5年)に無人化されて今に至ります。
ここでちょっと思ったこととしては、灯台って大抵の場合は陸地の端っこの方にあるじゃないですか。
だからたどり着いたときの気持ちとしては"最果てに来た感"があって、周りの景色も相まってどことなく哀愁がある感じがする。それでいて灯台は船舶を導く役割を担っている孤独な存在なわけで、そこに今自分もいるという状況を再認識できるのもまた楽しい。
今日1日を通して快晴はずっと持続していてくれていて、天気のいい日しか見えないとされる九州(佐賀関)もはっきりと視認できた。
こうしてみると四国と九州は結構近いのでは?と思います。直線距離だと13~14km程度しか離れてなさそうな予感。
灯台がある岬から西側に遊歩道は続いていて、隣りにある御籠島まで歩いて渡ることができます。厳密に言うとここが四国最西端の地になるため、「四国最西島御籠島」と書かれた案内板がありました。
駐車場から遊歩道を順当に歩いているだけだと決まったアングルからしか灯台が見えないので、御籠島も合わせて訪問してみるのがおすすめ。時間帯にもよりますが、こちらからだときれいな青空と灯台がセットで楽しめます。
逆に椿山展望台から灯台を見る方角は西向きになるので、夕焼けと灯台を合わせてみたいという場合にはこっちがベスト。
真っ白い灯台と青い空、それに加えて深い青色をした眼下の宇和海と瀬戸内海。
天気はいいに越したことはないと言うけど、まさか今回の行程がここまで天候に恵まれるなんて思っていなかった。本当にありがとうとしか言葉が見つからない。
思い返してみれば割と突発的に四国に行きたいと思って、行く場所やおろか回りたい道も正直不確定な部分が多いままの出発となった。でも最終的にはこうして問題なく目的地に来れたわけだし、泊まった宿、走った道、そしてシチュエーションもすべてがうまく行ってくれた。
結局のところ、旅はやるかやらないかでしかない。だから個人個人が旅を実行する意思があるかどうかの問題だと思う。そこに距離の遠さは関係ないと思っているので、今後も行きたい場所があればさっさと行く方針でいきたい。
旅館でのひととき、そして帰路
灯台で気持ちのいい時間を過ごしたところで、ここから旅館に投宿するまでが今日の行程。気を抜かずに坂道と格闘しながら三崎港まで走りました。
三崎港に戻ってきたのは15時30分頃。
三崎港まで戻ってきた時点で気がついたけど、そう言えば早朝に道の駅で海鮮丼を食べたっきり何も栄養補給をしていない。このままだと旅館の夕食までにお腹が空いて倒れそうだったので、三崎港にあるお店で名物のじゃこ天とじゃこカツを買いました。
これがもうめちゃくちゃにウマい。空腹なこともあって、旨すぎてもう涙が出そうになるレベル。
特にじゃこカツは三崎で絶対に食べてみてほしい一品で、愛媛県のご当地グルメの一つ。じゃこ天との違いは作り方にあって、ホタルジャコなどをすり身にするところまでは同じですが、ごぼうや玉ねぎなど野菜のみじん切りを加えて味付けしたものとなります。これにパン粉をつけて揚げたのがじゃこカツ。
今回は揚げたてを提供していただいたのですが、熱々のカツは見た目こそ脂っこいものの味はとてもヘルシーです。材料が魚介類や野菜のみなので疲れているときにも食べやすく、ロードバイクでの散策時には頼りになる存在。
じゃこ天とじゃこカツを食べた後は、宿であるえびすや旅館に宿泊しました。宿泊記録については別記事でまとめています。
翌日はフェリーで大分に渡り、輪行で帰路につきました。
天気の方は昨日の快晴がなんだったのかと思うような悪天候で、その落差に驚いてしまった。
おわりに
四国は巨大な島という位置づけにも関わらず、その中には山あり川あり、そして海ありと場所によって全く違う顔を見せてくれる魅力的な土地。そんな中で今回は海辺の道×最果ての地という特徴の道を中心に走ってみました。
平坦な道だけでなくアップダウンも各所にあって、目まぐるしく景観が変わっていく様は圧巻の一言。今回到達した佐田岬灯台周辺もそんな感じで、三崎の地を始めとした地元の方の生活風景を見れたのも嬉しかったです。
おしまい。
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