TAMAISM

旅の記録とか、舞台訪問とか。(旧 OFFTAMA)

【小薮温泉】四国の秘湯に泊まってきた Part 1/2 (@愛媛県大洲市)

愛媛の温泉へ

今回からしばらく四国編になります。

出張の合間にライドをすることにし、せっかくなので自分好みな宿を巡ることにしました。いつもとは異なって完全に天気は運次第だったのものの、これがまた快晴だったので持っているとしか言いようがない。どうやら本当に天気に愛されているようで毎回嬉しい。

で、いきなりなんですが。

「愛媛の温泉」と聞いて、どこを思い浮かべますか。

この質問に対する回答は自分の中で決まっていて、たぶん100人いたら99人が道後温泉って答えるんじゃないでしょうか。道後温泉といえば言わずとしれた知名度を誇っていて、愛媛県のみならず四国、いや日本でも有数の温泉。

でも今回訪問したのはその道後温泉ではなくて、分類的には「秘湯」に位置するんじゃないかと思われる温泉なんです。

小薮温泉

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小薮温泉 遠景

それが、愛媛県大洲市の山中にある小薮温泉

今回のライドの主目的であるこの温泉旅館が素敵すぎたので、今回ご紹介したいと思います。

木造3階建ての旅館

小薮(おやぶ)温泉は瀬戸内海に注ぐ肱川の支流・小薮川に沿って約2kmほど遡った渓流のほとりにあり、古くから無色無臭透明なアルカリ性単純泉の霊泉として湯治客、観光客に親しまれている温泉旅館です。本館は大正2年(1913年)に建てられたもので、後述するように貴重な建物であることから平成12年には有形登録文化財に指定されました。 別館は昭和63年(1988年)建造で、部屋数は本館・別館併せて10部屋・30名程度の宿泊が可能とのこと。また、宿泊に加えて日帰り温泉も受け付けており、さらには大広間での宴会も可能なんだそうです。

そんなわけで、いつも通りにまずは外観から確認していきます。

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山中に佇む小薮温泉。その存在感は際立っている

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大洲市街から須崎市を結ぶ国道197号の途中を脇道に逸れ、本当にこの道で合っているのか不安になるくらいの曲がりくねった山道を登っていった先に位置している小薮温泉。山道の途中で視界が開けて家屋や田園が広がる集落に到着し、その先に本館が見えるのが非常に印象的でした。

町中にあり、周りが栄えている道後温泉とは対象的に、ひっそりとした山の中の集落にある一軒宿というのも個人的に好きなポイント。向こうの雰囲気を知っているだけに、その雰囲気の違いを味わえるのがたまらない。

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本館1階下から見上げてみる

遠目からでもよく分かる旅館の構造は、私が大好きな木造3階建て。このような3階建ての建築物、しかも現在進行系で営業されている旅館は、今日ではとても珍しいと言えます(主に建築基準法や消防法の関係で、そのままの形で運用していくのがほぼ不可能)。

ただでさえ目立つ3階建ての建物が静かな集落内にいきなり登場してくるのだから、初見の身としてはその存在感に驚くばかりでした。と同時に、この宿で一夜を過ごせると思うと期待で胸が高鳴ってしまう。

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旅館入り口

入り口は渓流上流側(奥側)にあり、低い位置にある瓦屋根がどっしりとした印象を与えてくれます。

ちなみに駐車場については本館近くではなく上流側に100mほど進んだところにあり、ロードバイクもここに置かせてもらいました。小薮温泉はどちらかというと日帰りで訪れる人が多いようで、自分の滞在中は割とひっきりなしに車が往来していた覚えがあります。駐車場そのものよりも、小薮温泉に至るまでの道が結構細いのでそこだけ注意かと。

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玄関内部。向かって左奥が休憩室、休憩室手前に1階に下る階段がある。中央奥に見えている階段は3階へ向かうためのもの。

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受付

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登録有形文化財 第38-0009号

先程示したように、本館の建物としては3階建てになっています。玄関はその2階部分にあって、旅館を訪れた客はそのまま階段を下って温泉へ向かう形になります。ちなみに本館3階部分は現在では使われておらず、後で触れますが完全に放置されている感じでした。

構造を把握しやすいように、ここで各階の役割を簡単に書いておきます。

  • 本館1階:厨房、朝食会場、囲炉裏、別館への通路
  • 本館2階:玄関、休憩室
  • 本館3階:使われていない(旧客室)

本館に繋がっている別館については下記の通り:

  • 別館1階:温泉、大広間(宴会場)、本館への通路
  • 別館2階:客室

以上、簡単な説明終わり。

で、あれこれ散策する前にひとまずお部屋に案内していただくことにしました。

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別館は温泉がある棟と大広間がある棟に分かれていて、それぞれの2階部分が客室になっている。今回泊まったのは前者。

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今回泊まったお部屋「萩の間」

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窓側から入口を見る

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右奥に洗面所がある

現在では、宿泊は本館ではなく別館のお部屋に入ることになります。

別館の建物は基本的に新しくて、設備も申し分なし。今回泊まった部屋には炬燵やエアコン、加湿器、ポット、洗面所や冷蔵庫があり、とても快適に過ごすことができました。アメニティも一式揃っているので手ぶらでも問題ないです。

ちなみに客室の数は温泉がある棟で4部屋、大広間がある棟で2部屋とかです。この日はほぼ満室だったので、知る人ぞ知る宿として有名なのかもしれません。

館内散策

さて、荷物をおろして浴衣に着替えたところで、本格的に小薮温泉でのひとときが始まります。

しかし、まだ夕食の時間まではかなりあるとはいっても、ただ温泉に入ったり部屋で時間を潰しているだけというのはもったいない。というわけで、次は小薮温泉の館内をささっと散策してみることにしました。

まあ、「次は…」とか書いてますが、自分は宿泊先でも毎回散策をしています。自分が今泊まっている宿、その全貌をまず把握したいという気持ちが働くのか、はたまた部屋と温泉、食堂の往復だけではつまらないと思うからなのかは定かではありません。単純に散策が好きだからやってるだけ。

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本館1階から本館2階へ

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本館2階。階段を降りれば別館へと続いている。左奥が休憩室

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本館の玄関に戻ってきて、ここから散策開始。

先程はそのまま下っていった階段を下らずにまっすぐ進むと休憩室があります。

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かつては客室(3部屋)だったという部屋は今では休憩室になっており、温泉に入った後などにくつろぐことができる。

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とにかく広いです

休憩室はその名前とは裏腹に非常に広く、空間的に余裕があるおかげで快適そのもの。下は畳敷きだし炬燵はあるしで、うっかり横になったらそのまま寝てしまいそうになりました。

今回訪れたのが土日だったのでここでまったりしている人はほんの数人でしたが、例えば平日だったら地元の方がここで寝ていたりしてそう。

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奥側に見えるのは別館。ちょうど1階の温泉がある部分になる。

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直角に曲がる廊下だけでご飯3杯いける

休憩室の周りは3面を廊下が囲んでおり、ここをただ歩いているだけでも落ち着くことができます。

想うに、小薮温泉の一番のまったりポイントはここじゃないかな。休憩室の外側がすぐ廊下で、その廊下の外側はもう屋外。そして目に入ってくるのは集落の長閑な風景のみ。まさに時間を忘れてくつろぐには最適な空間ではないでしょうか。

特に、廊下と外との隔たりが何もないというのが個人的にグッときましたね。廊下の端っこにあるのが膝の高さくらいまでしかない欄干だけで、外との境界がまるで存在していなくて一体化している。一般的な旅館だったら欄干はあるにしてもガラス戸が張り巡らされているものだし、それすらないというのが一種の潔さを感じさせてくる。実に歴史の深さを語りかけてくる構造だ。

もっとも、この構造のせいで台風の日などは全体を木製の雨戸で囲まないといけないようです。

3階へ向かう

本館2階部分を散策し終わったところで、やはり気になるのが3階部分。旅館外観からでも印象的だった部分ですが、今では使われていないとのことなのでたぶん散策はできそうにない。一応ダメ元でお願いしてみるか…と思い、女将さんに相談してみたところなんとOKをいただけました。本当にありがとうございます。

ただ、全く掃除してないので蜘蛛の巣とか注意してね~との忠告を受けました。

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3階へ足を踏み入れた瞬間にホコリの匂いがしてきた

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それでは、意を決して3階へ上ってみます。

3階部分はかつて客室として使われた階になり、部屋数は6。フロア中央の部屋を囲むように廊下が回っており(所謂回り廊下)、部屋同士は壁で区切られてため部屋への出入りは廊下に面した障子戸からしか行なえません。なので当然のように鍵というものはなく、今回泊まった別館の造りとは文字通り年代が異なっているというわけです。

鍵がない部屋という意味では、以前泊まった井出野屋旅館がまさにそれですね。あっちは現役でこの構造なので。

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廊下より内側には障子戸、外側は屋外というシンプルな構造で好感が持てる

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廊下からの眺めはパッと見だと2階と同じかと思いきや、高低差があるのでより眺めがいいです。

その分恐怖感も先程と比べて格段に増していて、ちょっとでもよろめいた途端に3階分の高さを落下することになるので正直怖い。欄干は落下防止に何も役に立ってくれないので、本館が旅館として使われていた頃には酒に酔った勢いで落ちた人が間違いなく居ると思う。たぶん。

ドアとかいう概念が導入されるよりもずっと前の構造がこうして目の前にあると思うと、なんかこう、いい気分になりますね。年月の経過を如実に実感できると言うか、今でも建物として残っているという現実が気分を高揚させる。

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凝った模様が施された欄干。経年劣化で消失している箇所もある

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部屋の様子

各部屋の障子戸については、どこも立て付けが悪すぎて開けるのは無理でした。

かろうじて破れていた障子の隙間からカメラを突っ込んで撮影したのがこの写真です。部屋の広さは6畳で、どうやら床の間と押入れがある様子。押入れの中に入っていたであろう布団が確認できました。

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それにしても、これらの部屋に泊まった人も自分と同じ風景を見たのだろうか。

障子戸を開ければそこはもう外で、聞こえてくるのは虫の鳴き声や小川のせせらぎだけ。(今回は冬に訪問したので虫は居なかったですが)季節が季節なら虫に悩まされたりもするし、エアコンなんてものは無いので扇風機で涼を得る。

2021年の中を生きている自分にとっては不便だろうなと思いつつ、そういう時代もあったんだと思いを馳せてみる。願わくば、その時代にタイムスリップして本館に泊まってみたいものだ。

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廊下の4面のうち、1面にはガラス戸が張られていました

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廊下は一歩歩く度にミシミシいいます

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夕日に照らされる廊下と屋外の景色の組み合わせが良い

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使われなくなって何年経つのか分からない電灯

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廊下を一周してきた

徐々に日が傾いてきて、西日の光が館内を照らしていく。

一つの階を回ってきただけなのに、ノスタルジーな感情が湧いては消えていくような、そんな気さえしてくる。

人の手が入らなくなった建物は途端に劣化していくとは言うけど、2階と3階で雰囲気が全く違うのが驚きだった。今も温泉客の憩いの場になっている場所と、忘れ去られた場所。その2つが同一箇所にあって、自分は今それを肌で感じている。

まったく、ちょっと散策するかと軽い気持ちで出かけたのに、あまりに没頭しすぎて時間が経つのを忘れそうになってしまった。夕食の時間が迫ってきているし、残りの部分の散策をしてから温泉に入っておくことにしよう。

というわけで、Part 2は散策の続きから始まります。

つづく。