【道東 弟子屈~屈斜路湖~美幌峠~女満別】ロードバイクで北海道最果ての地を巡ってきた Part 3/3

北海道最終日の朝。

この日は女満別空港から帰路につくことになるため、それに応じた走行距離控えめの行程としました。流れとしては釧路から輪行で弟子屈町に向かい、そこから自走で屈斜路湖や美幌峠を経由して美幌町・女満別に帰還する形です。飛行機に乗る最終日は空港に到着してからの準備や手続きもあるし、早めの時間に到着しておくのが吉。

ただ一つ気になる事項があって、それは南から徐々に雲が迫ってくる予報になっていること。方角的に南から北へ向かうので追い風基調になってくれるのは嬉しいけど、曇りになるまえに回りたいところを巡っておく必要があります。というわけで出発。

もくじ

弟子屈から屈斜路湖畔を目指す

昨日に引き続いて今日も釧路駅から始発に乗ることになりますが、根室方面への始発と違って斜里方面の始発は出発時間が少し遅め。なのでほんの少しはゆっくり起きることができました。

同じ宿を出発して釧路駅に向かう道中は全く同じ。異なるのは荷物の多さのみという状況で、もう釧路を離れることになるのは名残惜しいものがある。今回二泊した宿はとても対応が良かったので、次回の旅でも泊まろうと思っています。

平日早朝の釧路駅
摩周駅

反対列車がシカと衝突してちょっと待ち合わせがあったものの、無事に摩周駅に到着。

この場所の駅名は弟子屈町にあるので弟子屈駅だとばかり最初思っていましたが、実際は摩周駅で全然違いました。あと全然関係ないけど、北海道の地名に疎いので弟子屈(てしかが)のことを「でしくつ」って読んでいたという。まあいい加減覚えたけど。

道東の内陸部は弟子屈を起点にすると割りとアクセスがよく、北へ向かえば摩周湖や屈斜路湖、西へ向かえばマリモで有名な阿寒湖に行くことができます。さらにこの辺りは登山目的でも個人的に気になっている一帯で、硫黄山(アトサヌプリ)や雌阿寒岳からの展望はいずれ楽しみたい。

涼しげな風が吹く道をのんびり走っていると、いつまでもこういうシチュエーションの中で走っていたいと強く思う。

温暖化の影響なのか年々秋や春の期間が減っているように思えるものの、できるかぎりは涼しい季節にあれこれ行動していきたい。

遠くに硫黄山が見える
道端の田園風景

弟子屈の市街地を抜けて国道243号に入り、これを北上していけば屈斜路湖までスムーズに行けます。国道といっても交通量はそんなになく、平日ということもあって至って快適に走行可能でした。

マップを見ると屈斜路湖周辺は山岳地帯になっているので上りが多そうに思えますが、実際にはほぼ平坦。山岳部と湖の間にある僅かな平地をかすめるようにして道が続いているようなイメージでした。やっぱり現地を走ってみないと分からないことは案外多いです。

そして屈斜路湖畔に到着してまず立ち寄ったのが、無料で入ることができるというコタン温泉露天風呂です。

実は今回の旅を行う前に北海道出身の同僚におすすめスポットをあれこれ伺い、その中に一つにこのコタン温泉露天風呂がありました。「ロケーションが最高」との話だったので、休憩がてら寄ってみることに。

コタン温泉露天風呂があるのは国道243号から道を一本入って道道52号に移り、ちょっと先に進んだ場所です。

周辺にはアイヌ民俗資料館やコタン共同浴場などがあるほか、屈斜路湖へ出入りするカヌーの発着場にもなっているようでした。確かにこれだけ広い湖があるとなればそれに応じたアクティビティが存在するし、船を漕ぐのも面白そうな予感。

コタン温泉露天風呂の入り口

建物の間を抜け、林の中を通ってコタン温泉露天風呂に到着。

コタン温泉露天風呂は町とボランティアの方々によって運営されている無料の露天風呂で、すぐ目の前に屈斜路湖が広がっているという抜群のロケーションが特徴です。あと形式的には男女別に更衣室が設けられているものの、湯船は事実上一箇所のみなので混浴といっても過言ではない感じ。

  1. 登録番号:北海道第2号
  2. 泉質:ナトリウム-炭酸水素塩泉(低張性中性高温泉)
  3. 泉温:68.3℃(使用位置38~43℃)
  4. 知覚的試験:微淡黄色透明無味無臭
  5. pH:7.0
脱衣所の様子
湯船の様子

入り口から脱衣所の様子はこんな感じで、仕切りは無いに等しいので気になる場合は水着等を着用した方が良いかもしれません。湯船についても男湯と女湯の境界は大きめの岩のみな上、奥に進むと湯船が繋がっています。

ただ無料の施設なのにも関わらず、どこを見ても掃除が行き届いている点が素晴らしいと感じました。こんなにクオリティが高い温泉に無料で入って良いのかと躊躇われるくらいで、清潔感があるので露天風呂でも気軽に入ることができます。

で、極めつけは露天風呂から見ることができるこの圧倒的な展望。

露天風呂の前面からは屈斜路湖を一望することができるほか、よく見ると露天風呂の湯面と屈斜路湖の水面が同じ高さにあることに気がつく。まるで屈斜路湖そのものに入浴しているかのように錯覚するほどの一体感と開放感があります。

自分が訪問したタイミングでは他に入浴客がおらず、つまりこの景色を独占できたということ。これから美幌峠という核心部に向かうことになる前に、すでに身体中の力が抜けていくような充足感を得られました。

今回は午前中の明るい時間帯の入浴となりましたが、コタン温泉露天風呂は夕方になれば屈斜路湖が金色に染まり、冬になれば目の前で白鳥が休んでいる光景にも出会うことができるようです。この秘湯は自分としても心からおすすめしたい。

屈斜路湖畔の風景
露天風呂の側面部分。ちゃんと木が生えているので中が見えないようになっている。

しかし、今回の道東ライドを振り返ってみると実に多彩な風景に遭遇できている。

丘陵部や海岸線に加えて断崖絶壁や林の中を巡り、そして今は湖のそばにいる。くくりとしては同じ「道東」という枠組みの中に収まるものの、そこには一つとして同じような状況はない。3泊4日の行程の中でできるだけ各地を回るように決めた内容が、これほど濃いものになるとは思っていなかったです。

旅の前の予想では何も事前情報がなく"北海道の風景"としか想像できない部分が多かったのが、蓋を開けてみれば次にどんな体験が得られるのか分からないという嬉しい悲鳴。同じ道内でもこれほど複数の感動を享受できるわけで、実に自分の性格に合致した旅ができていると思います。

温泉に入った後は再び国道243号へと戻り、今度は北ではなく西方へ。

ここだけ見ると全く別の場所のように思えるけど、さっきの交差点からほんの数kmの地点です。「水」を感じさせる湖畔の風景はしばし息を潜めて何度目かの丘陵地帯を通り過ぎ、広大な畑を横目に見ながら走っていく。目指す美幌峠は、そう遠くない。

美幌峠からの眺め

今自分がいるのは屈斜路湖の南部ですが、ここ屈斜路湖は日本最大のカルデラ湖(火山活動によってできた湖)です。日本の他の地域におけるカルデラと同じように、中心から外側(外輪山)に向かうに連れて斜面が激しくなってくるのは予想が付きますね。

これから向かう美幌峠はそのカルデラのちょうど外周にある標高525mの峠であり、弟子屈町と隣の美幌町との境界にもなっています。釧路方面から女満別空港へ向かう道中にあることから最終日にはぜひ通りたいと計画しており、これからそこまで上っていくというわけ。

美幌峠までの上り区間
大きくワインディングしながら標高を上げていく

軽くヒルクライムをして、ついに美幌峠に到着。湖畔から頂上までの斜度は終始5~7%程度でキツくはなく、つづら折りも少ないので短距離で一気に標高を上げるタイプではありませんでした。

美幌峠周辺には「道の駅 ぐるっと パノラマ美幌峠」や駐車場が整備されているほか、駐車場から南へ少し上れば展望台もあります。ここまで予定通りに上ってこれたこともあって時間にかなり余裕があったため、美幌峠の周りでのんびりと過ごすことに決定。

ここから先へ行ってしまえばもう美幌町まで下るしかなく、つまりこの高さは今でないと味わえない。スッと通過すぎてしまうよりは少しでも長居したい気持ちがあります。

展望台への坂を上っていくにつれて徐々に視界が変化していき、遊歩道から左側に見えるのは屈斜路湖を一望できる大パノラマの絶景!

この展望を見てテンション上がらないわけがなく、自走で訪問できた達成感も相まって嬉しさが爆発しました。ここまで本当に長かったな…。

美幌峠の展望が優れていると思う個人的な理由は、近景(手前のなだらかな丘と林)、中景(屈斜路湖)、遠景(硫黄山等の阿寒の山々)の全てが一つの画面の中に収まっていること。写真撮影の際には近距離や遠距離を意識するとダイナミックさが伝わりやすいといいますが、美幌峠からのパノラマはその条件を満たしているというわけです。

よく見ると手前の林の中にはさっき上ってきた道路が視認でき、この道路によって屈斜路湖のスケールの大きさがより強調されて感じられる。いや、本当にどこを見渡しても歓喜の声しか出てこなくて、自然と笑顔になってしまった。

展望台の頂上
コタン温泉露天風呂方面を遠くから見る
峠の西側には牧場が広がる

展望台付近をふらふらと散策。

展望台の頂上では地元の小学生と思われる団体が来ており、どうやら美幌峠を紹介するためのビデオ撮影を行っているようでした。編集してクラスごとに発表したりするのだろうか?地域のことを知るにはとてもよい行事だと思います。


そんな風景が見られるくらいに美幌峠での時間は静かに過ぎていき、上空を見ると南からは予報通りに薄い雲がやってきている。あちこちで道草をしていたら今頃は雲の中を走っていた可能性もあり、今回は(温泉に入ったけど)時間優先で来て正解だった。

今日は最終日という印象があまりに強かったのであんまり出発したくない気持ちが強く、でも帰らないといけないのでとりあえず道の駅で昼食をとることにしました。

昼食に選んだのは、美幌町の特産品を使用した美幌豚の肉味噌ラーメンセットです。道の駅って食堂が併設されていることが多くて、しかも料理が安くて旨いので個人的に立ち寄り頻度が高め。

ご飯としてこれまた美幌豚を使った肉丼がプラスされていて、温泉からのヒルクライムで消耗した体力を回復させていく。スープも具も濃厚な味わいでご飯にとても合い、目の前の窓から愛車と峠の風景を眺めながらいただくとなおさら美味しい。

これから北海道も本州も本格的な秋に突入する段階に入っている中で、今の環境はちょうど夏と秋の中間地点。その絶妙な気温がどうやら食欲を増しているようで、あっという間に完食してました。まあ美味しいから仕方ない。

で、ラーメンセットだけでは足りなかったので美幌峠のあげいもを追加で買いました。

これは北海道ならではのじゃがいもを丸ごと衣で包んで油で揚げた料理で、書かれている内容によれば道産子のソウルフードとのこと。試しに一つ食べてみると説明通りにじゃがいもが丸々入っている上に、そのじゃがいもがあまりにもホクホクしている。

屋外で佇んでいると適度に涼しい風が通り過ぎていく中、ちょっと座りながら食べるじゃがいもの旨さがもう堪えられなかった。あげいもを食べて冷たいジュースを飲んで…としていると、幸せってこういうことをいうんだろうなって思う。

残りのあげいもはジャージの後ろポケットに入れておき、下りの途中で立ち止まって休憩している時に食べてました。サイクルジャージはこういうときに色々入れられるから便利だ。

美幌町から女満別へ

そんなこんなで風景も食も満喫して、美幌峠を味わい尽くしたのでようやく下ることにしました。

美幌の白樺並木を抜けていく
白樺並木はかなりの距離続いていた
最後のセイコーマートで休憩

美幌峠から先の国道243号は下り一辺倒で上りは一切なく、追い風に吹かれながら速度を上げて北上を続けました。これだけ長い直線区間を気持ちよく下れるのは北海道では珍しい気がする。

下りから平坦区間に入ってからは道の両側に白樺の並木がずっと連続する牧歌的なところもあり、道一つとっても北海道は一様ではないことが伺えます。

なんというか、これだけ多種多様な道を走ってきて最後の最後が田園風景というのが本当に良い。女満別空港から時計回りに道東を一周してきて、ここにきて視界に入ってくるのが北海道らしさ全開の直線道路×畑という組み合わせ。飾り気のない素朴なままの一面を見れてホロッときました。

美幌町中心部に着いてからは、女満別空港に向かう前に最後のセイコーマートで休憩。ここを離れればまた北海道を再訪するまでセイコーマートに飢えなければならないので、セイコーマートオリジナルのアイスや飲み物を買って思い出としました。個人的にセイコーマートのアイスって無限に食べられると思うわ。

お疲れさまでした

そして、フライト時間に十分な余裕を持って無事に女満別空港に帰還。ここまで長かったけど、何事もなく行程を完遂できたことにまずは感謝したい。

旅が長丁場になればなるほど、遠方になればなるほど何かあったときの緊急度が増す中で、やっぱり大事なのは景色とか行程とか以前に安全第一だということ。これからもこの方針は変わらないだろう。

おわりに

いつかは走ってみたいと思っていた北海道の道東。

終わってみれば知床峠に納沙布岬、霧多布岬、そして美幌峠と、行きたいところは全部回れた上で天気に恵まれて幸運でした。夏から秋にかけては天候が変わりやすく、天気予報があまり当てにならない状況下で晴れを引き当てたのは本当に運がいいと思います。

北海道はとにかく広すぎてロードバイクで回るには工夫が必要な上、自分としては走っている最中に飽きが来ない程度のいい感じの行程にするのが割と至難でした。でも振り返れば「ここにしかない唯一無二の風景」ばかりで、飽きとは無縁だったというのが正直なところ。

今回回った場所も含めて、次回はまた別の季節に北海道を再訪したいと思っています。四季折々の旅が楽しめる北海道で、また新鮮な気持ちで色んなところを回りたい。

おしまい。


本ブログ、tamaism.com にお越しいただきありがとうございます。主にロードバイク旅の行程や鄙びた旅館への宿泊記録を書いています。「役に立った」と思われましたら、ブックマーク・シェアをしていただければ嬉しいです。

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