今回は、青森県深浦町にある黄金崎不老ふ死温泉に泊まってきました。
日本海を望む不老ふ死温泉は青森県を代表する温泉の一つであって、過去のライドにおいて日帰り温泉で訪れた際、ここはぜひとも一泊してみたいと思ったのが今回のきっかけです。特に不老ふ死温泉の「海辺の露天風呂」は説明不要の知名度を誇っており、たぶん誰しも一度は観光雑誌などで見たことがあるはず。
あのときの季節は気温も肌寒い秋だったのに対し、今回は多少なりとも行動しやすい夏の終わり。確か前回は日帰り温泉に入った後でライド再開して宿に向かい、その間の道中で身体が冷えてしまったので一泊したいと思うのも無理はない。
あと早期の再訪を決めたもう一つの理由は、今年の7月の豪雨によって建物周辺が冠水し、露天風呂や日帰り用施設(本館)に向かうことができなくなった上に停電が続いてしまったということ。8月上旬には無事にすべての施設が復旧されましたが、今後もどんな理由で温泉に入れなくなるかは分かりません。
古い旅館だけでなく、すべての宿泊施設はいつ営業を休止/廃業されるか誰にも予想できない部分があります。なので気になった宿があるならさっさと泊まりに行くのが吉という方針のもと、今回は泊まってきました。
外観
まずは外観から。
青森県の日本海沿岸部を通る国道101号から道を一本入り、JR五能線の線路を抜けてさらに下っていった先に不老ふ死温泉はあります。道中の道からはすでに日本海を見渡すことができ、その傍らに建っているのが印象的でした。
建物は日帰り温泉の施設を含んだ本館と、宿泊の受付がある新館から構成されています。道を下った先に分かりやすい分岐があり、左の海に近い側が本館、右の高台側が新館に続いていました。
まずは本館から。
分岐を左に下ると日本海が目と鼻の先にあるような一角があり、そこに日帰り温泉用の駐車場があります。そして海方面の海岸には有名な海辺の露天風呂が見え、本館から露天風呂まではそこそこ長い距離を歩くことになるのが分かると思います。
寒い時期になるとこれが結構無視できなくて、温かい館内から露天風呂へ向かうまでの間に身体が冷えてしまいがち。特に秋頃は風も強いし、温泉で温まった後でも本館に戻るまでに風にさらされることになります。あらかじめ厚着して行くなどの工夫が必要になるかと。
なお今回の訪問時は夕方になっても気温は比較的暖かく、寒くて行動できないということはありませんでした。
改めて遠目から眺めてみても、ここまで日本海を間近に見られる温泉はここにしかないと思う。海に面していることを謳っている温泉であっても一般的には湯船と海との間に何かしらの「間」が存在するところ、不老ふ死温泉のそれは本当に何もないんです。湯船のへりの向こう側がもう海なので。
あとこれらの写真は泊まった翌朝に撮影したものですが、これ以上ないくらいの快晴が頭上に広がっている。
温泉に入ること自体は天候に影響されないので予定を立てやすい反面、これが露天風呂になると雨よりは曇り、曇りよりは晴れの方が良いのは間違いない。しかも不老ふ死温泉の露天風呂は海と温泉との境界がないほどの近場にあり、天気がいいと嬉しさも倍増するはずです。
露天風呂は向かって右側が女性専用、左側が混浴となっています。
というわけで次は新館へ。
不老ふ死温泉は十二湖方面や最寄り駅からの送迎も行っているので、玄関前は送迎の乗り降りがしやすいような造りになっていました。周辺の開けた地形を有効に使われており駐車場も十分広く、アクセスしやすさはかなり良い方だと思います。
ここでちょっと感動だったのが、ロードバイクや二輪車については奥にある大きな倉庫に入れさせもらえること。
自転車だけでなくバイクも雨の日に屋外で放置するのは避けたいところで、このような配慮をしていただけるのは嬉しいです。
館内散策
共用部分~廊下
それでは館内へ。
この日は翌日が平日にも関わらず宿泊者が非常に多く、災害から復旧されたことにも起因して不老ふ死温泉そのものの人気度を実感できました。もちろん個人客だけではなく団体客も複数あって、詳しくは知らないけど平日は団体客で泊まる方が多いのかも。
そういうわけなので、館内の撮影は最低限に留めています。
最初に館内の平面図を示しておきます。
玄関があるのは新館1階で、そこから玄関ロビーを経て正面海沿い方面に進むと新館東棟の客室が並んでいます。フロント奥から西側に進んでいくと分かれ道があって、南へ進むといくつかの食事会場が、西へ進むと新館西棟1階~3階の客室があります。さっきも書いたように不老ふ死温泉は団体客も多いので、一般客が使用する大規模な食事会場(「津軽」の部屋)に加えて中規模の部屋がいくつか設けられているようです。
新館西側の客室を抜けると渡り廊下があり、ここのエレベーターを下ることで本館の客室や海辺の露天風呂に行くことができます。
建物の新しさを考慮すると新館に泊まるのがよさそうですが、仮に新館東棟に泊まった場合は温泉への行き来がちょっと遠く感じるかもしれません。
あと個人的に驚いたのが、翌日のチェックアウト時の支払いはフロントではなく自動精算機(下の写真左下の黒い機械)で行うという点。ルームキーを機会にかざすだけで宿泊料金が表示され、現金やカード払いが使用可です。
全体的に館内はリニューアルされていて新しく、清潔感があるので気持ちよく過ごすことができました。
泊まった部屋
今回泊まったのは本館2階に位置する327号室で、おそらくですが一人泊の場合は本館に泊まることになると思います。平面図によると一人用の客室は本館にしかありません。
自分が本館に泊まってよかったと思ったのは温泉への近さにあり、本館1階の「黄金の湯」や海辺の露天風呂への入り口は自分が泊まっているフロアのちょうど真下にあります。なので温泉に入りに行きたくなったときはすぐエレベーターに乗るだけでよく、「温泉まで遠いから行くのは後でいいや」という思考になることがない。
滞在中の移動距離が最も遠いと思ったのは食事会場である津軽の部屋に向かう時だけで、温泉に限定すれば本館泊は案外おすすめ。
泊まった部屋の様相はビジネスホテルの客室そのままと言ってよく、入り口を入って手前側にクローゼット、洗面所、トイレがあり、奥にベッドや机が置かれているタイプでした。いつも泊まっているような旅館の和室とはまるで異なるものの、これはこれで一種の安心感がある。
設備はテレビ、エアコン、加湿器、ポット、冷蔵庫、金庫、内線、ドライヤー等があり、アメニティについても浴衣、タオル、バスタオル、歯ブラシ、髭剃り等が揃っています。これだけ設備が充実しているのであれば何も持たずに宿泊しても問題なさげ。
不老ふ死温泉の客室がどういうものなのかは泊まってみるまで分からなかったものの、ホテルの客室みたいということでとても過ごしやすかったというのが正直なところです。シンプルだが清潔そのものなので不満はありません。
適度な広さなので大抵のものには手が届きやすい上に、窓からは日本海が見えるので展望も良い。おまけに温泉にも行きやすいとなれば懸念点が見当たらず、広大な面積を持つ館内の中で良い部屋に泊まることができたという感じ。
温泉
この日は当初の予定を変更して十二湖まで足を伸ばし、不老ふ死温泉に帰ってくる頃には割と疲れてました。なので一刻も早く温泉に入ってその疲れを癒やしたいというわけで、早速温泉へ向かいます。
不老ふ死温泉の温泉は全部で3箇所あり、その内訳は下記の通り。なお海辺の露天風呂には洗い場がないため、予め内湯で身体を洗う必要があります。
- 新館「不老ふ死の湯」利用時間 4:00~9:00、10:30~24:00
- 本館「黄金の湯」利用時間 8:00~20:00(冬期間は19:00まで)
- 「海辺の露天風呂」:利用時間 日の出~日の入まで(今回は5:10~18:10)
新館の宿泊者専用である「不老ふ死の湯」は24:00まで入れるのに対し、他の2箇所は比較的早い時間までしか入れません。
温泉の詳細については以下の通りです。湯船への供給はいずれも源泉かけ流しで、入浴に適すように加水をしているので注入温度は45℃、浴槽温度は42℃とのことでした。温泉の詳細はこちら▶不老ふ死温泉の温泉
- 源泉名:黄金崎不老ふ死温泉
- 泉質:含鉄-ナトリウム-塩化物強塩泉(高張性中性高温泉)
- 泉温:53.6℃
- 色:鉄を多く含んでいるため湧き出た瞬間は透明だが、空気に触れることで酸化し赤褐色になる。
- pH:6.68
- 効能:保温効果、切り傷、皮膚病、美肌
試しに少し舐めてみたところ、塩分濃度が高くて非常に塩辛い味がしました。
最初は一番遠い「不老ふ死の湯」に入り、次いで「黄金の湯」に入ってひとしきり温まってから海辺の露天風呂へ向かうという流れをとりました。不老ふ死の湯は内湯だけではなく露天風呂もあるので、海辺の露天風呂とは異なる視点から日本海を眺めることができます。
で、満を持してあの有名な海辺の露天風呂へ入りに行くわけですが、ここで注意点が二つ。
まず一つ目は、海辺の露天風呂は夕焼けの景色が素晴らしいということがすでに知れ渡っているので、日の入前(今回でいうと~18:10)の時間帯はめちゃくちゃ混雑します。それはもう芋洗い状態になるので、そういうのが嫌な場合は早めの時間帯に入っておく方がいいです。
二つ目は一つ目に関連した夕食の時間で、誰もが「日の入まで露天風呂に入ってから夕食」という流れをとるため、19:00周辺の時間帯は夕食会場が混雑します。プランによりますが夕食はバイキング形式なので、テーブルが埋まっている場合は空くまで待つ必要があります。
以上の理由から海辺の露天風呂には17:00くらいに入り、夕食の時間は混雑を避けて18:15からとしました。17:00くらいだと海辺の露天風呂に入っているのは多くて7人程度で、じっくり温泉に浸かれるし景色も満喫できます。
海辺の露天風呂の温度は屋外ということもあって大体40℃程度であり、比較的長湯がしやすい感じでした。これからの寒い季節だともっと長く入れそうです。
夕焼けそのものは本館近くからでも見えるので、写真を撮りたい場合には温泉以外の場所に行くしかありません(海辺の露天風呂は撮影禁止)。
ちなみに海沿いは夏の時期だとブヨが多いらしいですが遭遇することは一度もなく、代わりにトンボが多かったです。季節は夏から秋へと移り変わっていくというわけで、よいタイミングで訪問できました。
日の入の海辺の露天風呂の景色がどんなものなのか、上の写真から少しでも伝われば幸い。
すぐ目の前が日本海という雄大すぎるロケーション、激しすぎない落ち着いた天候、そして宿泊客が比較的少ない今日この日。すべての要素がパズルのように組み合わさってこの風景を生んでいて、まさに燃えるような太陽が地平線の彼方に沈んでいく様子を味わうことができます。
というか予約の電話を入れたのが前日なんですけど、勢いのまま予約して正解だった。何日も前から旅の計画をして予約するのが普通である一方で、突発的な宿泊もたまにはやっていきたい。
夕食~翌朝
3箇所の温泉に連続で入ることによって体内からは水分や栄養が消え失せているので、それらを補給するために夕食会場へ。
不老ふ死温泉の夕食は「特選和膳」と「津軽ふかうらバイキング」から選ぶことができ、いずれも深浦の海の恵をふんだんに使用した内容になっています。料理は素材の幸を引き出すシンプルな調理方法で料理され、今回選んだオープンキッチンのバイキングプランだとその品数がとんでもない数。大きなテーブルが3列あって、そこに料理がずらっと並べられていました。
覚えている限りで内容を挙げてみると、以下の通り。
- 海の幸…帆立や本マグロ、タコの刺身、鮑の天ぷら、南蛮漬け、酢の物、浜焼き、海鮮の陶板焼き
- 肉料理…深浦牛のスタミナ焼き、鶏の香草焼き
- 冷たいおでん、岩木高原豚の角煮
- サラダ、エビや舞茸の天ぷら
- ごはん、そば、焼きそば
- ケーキ、フルーツ等のデザート系
- ソフトドリンク、リンゴジュース
色んな年代の客に適用できるように料理の種類が本当に幅広く、メインのおかずもさることながらごはんの上に乗せる系のおかずも4種類くらいありました。
バイキング方式は豊富な料理を少しずつ味わえるのが大きなメリットで、もちろん料理のテーブルと自分のテーブルを何回も往復することに。予めおかずの品数が定まっている和膳もいいですが、お腹いっぱいになりたいならバイキングもおすすめです。
夕食後はさらに温泉に入りに行き、ひとしきり身体を温めてから就寝。
どこの温泉でも変わらないと思うけど夕食の後の時間帯は温泉に入る人が極端に少なくなり、今回の場合は黄金の湯が19:30~20:00のあいだ貸切状態でした。
宿泊から一夜明けた翌朝。
昨日にも増して今日は天気がいいということで、6:00くらいに起床して海辺の露天風呂へ。太陽の方向的に朝の時間帯はどこまでも上っていくような青空のなかで温泉に入ることができ、幸せな時間となりました。
早朝にも関わらず考えていることは皆同じみたいで、同タイミングで海辺の露天風呂に入りにきているのは5人くらいだったかな。日の入の時だけではなく、早朝の景色も同じくらいに素敵でした。
夕食に引き続き朝食もバイキング形式です。
内容は覚えている限りだと納豆、ナスの揚げ浸し、明太子、イカの塩辛、サラダ、豆腐、魚の照り焼き、ベーコンやウインナー、麦飯、カレー、パン類、ヨーグルト、デザートなどが並んでいました。朝から海鮮を食べることができるのは海沿いならではの良さですね。
普段の食生活もそんなに悪くないと思っているけど、旅先、特に青森県を訪問した際にはいつも食事の素晴らしさに感動してしまう。自分が青森県を好きな理由は風景や温泉のほかに、「食」がとにかく味わい深いからなんだと思います。青森県から帰ってきてから数日は明らかに体調が良い。
そんなこんなで、快晴の不老ふ死温泉における宿泊はこれで終了。
日本海の青色と青空の青色、二つの青色に挟まれながらのご機嫌な出発となりました。
おわりに
2019年に日帰りで不老ふ死温泉を訪れて以来、ずっと一泊したいと思っていた願いが今回叶いました。温泉のパワーに加えて深浦や青森の料理を堪能できたということで、心に残る宿泊になったのは言うまでもないです。
不老ふ死温泉を象徴する、まるで海と一体化したような「海辺の露天風呂」からの景色は天候次第なところが大きいのは事実。それでもこの風景にはここでしか味わえない感動があるので、一生に一度は訪れてみてほしいです。
おしまい。
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