鎌倉温泉 大正末期建築 宮城蔵王山麓に佇む里山の一軒宿に泊まってきた

今回は、宮城県蔵王町にある鎌倉温泉に泊まってきました。

鎌倉温泉は平安時代における奥州の戦いの際、傷の療養を行っていた鎌倉権五郎景政という武士が発見したとされている温泉です。このぬるい温泉に浸かると景政の傷はたちまち全快し、以来この湯が湧き出た沢は"鎌倉沢"と呼ばれて近辺住民の湯治場となりました。鎌倉温泉の名前の由来はここにあって、神奈川県の地名である鎌倉とは関係ありません。

鎌倉温泉は温泉の名前を表すものですが、宿の名前として一般的な○○旅館とか、○○館という名前は特に付随していないようです。建物には何らかの名前が付けられているのが一般的だと思っていた自分としては、これは意外でした。従って、単純に鎌倉温泉といえば蔵王町にあるこの建物のことを指します。

現在の建物は大正末期から昭和初期のもので、鎌倉温泉を訪問するほとんどの方は日帰り温泉に入られる中、宿泊で一泊する形となりました。温泉の効能はその背景にもある通り、外傷や皮膚病、痔などによく効くそうです。

もくじ

外観

まずは外観から。

蔵王町を走る県道25号 岩沼蔵王線から道を一本入り、この先に本当に温泉があるんだろうかと次第に思ってくるような民家の近くを歩いて行った先に鎌倉温泉はあります。最後の一本道については車だとすれ違いが不可能なほど細く、かなり心細くなりました。

最後の一本道の手前には看板があるので迷うことはありませんが、県道から看板までは少々道が入り組んでいます。

鎌倉温泉 全景

農道のような小道の進んでいった先には山々が広がり、鎌倉温泉の建物は少し標高が低い眼下に見えます。このおかげで建物の存在を把握したときにはすでに全体が見渡せる形となり、徐々に…ではなく一気に到着した感が感じられる。屋根の色は自然界にはない濃い赤色で、自然の中でここだけ浮かび上がって見えるようでした。

駐車場については手前側に2箇所あり、そこに止める形になります。駐車場の先には「かまくら」と書かれた木彫りの柱があって、建物はその奥に位置していました。

駐車場の隣には新しめの建物(宿の方の住居)と、奥の赤い屋根の建物があります。

短めの坂を下って建物に近づいてみると、道路の左右に細長い棟が奥まで続いているのが分かりました。それらの棟は道路正面にある渡り廊下で繋がっているようで、行き来はここを通ることになります。

向かって右側が受付やロビー、温泉がある棟で、左側のいかにも古そうな造りの建物が宿泊者が泊まる棟です。

坂のすぐ左側にある宿泊棟1階。ガラス戸の向こう側に障子戸が見える
鎌倉温泉の正面玄関
渡り廊下
渡り廊下の裏側
宿泊棟を見上げる

日帰り温泉で訪問した場合は右側の棟にしか入らない形になるのですが、外観からも分かるように、左側の宿泊棟の存在感は際立っていました。何も知らないで訪れたとしても気になるだろうし、宿泊できると知ったらたぶん泊まりたくなる人が多いはず。

その宿泊棟に目を向けてみると、上から下まで木造ということが外観からわかります。敷地の中央を走っている道に面した側はすべてガラス戸になっていて、その内側に廊下、次いで客室への障子戸という構成になっている様子。廊下を歩いているだけで外の様子が確認できるのは非常に便利だ。

この日は最寄りのバス停から歩いて鎌倉温泉に向かい、到着と同時に雪が降り始めるというなんとも変わった天気でした。このまま外にいても寒いだけなので、早速チェックインします。

館内散策

温泉棟~玄関ロビー

鎌倉温泉の玄関口は向かって右側の温泉棟にあり、宿泊をする場合はこちらの屋内から宿泊棟に渡り廊下経由で向かう形になります。日帰り温泉/宿泊のいずれにおいても、入り口が一つというのは非常に分かりやすい。

この温泉棟は比較的新しい造りで、屋内も明るい印象を受けました。

正面玄関内側
受付兼売店
右側がロビー

入ってすぐの玄関土間の両側の靴箱があり、ここに靴を入れてスリッパに履き替えます。

動線としては玄関正面にある受付兼売店で日帰り温泉の料金を払い、建物奥側にある温泉に向かうという形。また右側にあるロビーは比較的広く、温泉から上がった後は飲み物を飲んだりアイスを食べたりしながら休憩することもできます。今の時期はコロナの関係で一度に温泉に入れる人数を制限しており、ロビーは順番待ちをする場所としても活用されていました。

売店については品揃えが実に豊富で、飲み物の自動販売機はもちろんのこと、お菓子、アイス、カップ麺、日本酒、野菜などが揃っています。特に宿泊においてはこれらの品が頼りになることは間違いなく、何日も宿泊するという場合だったら使わない手はないと思います。

ロビー周辺は窓が大きくとってあって自然光が入ってきやすく、窓側には植物も多くて居心地が良い。入り口~受付~ロビー間には余計な壁がなく、天井が高いのもそう感じる一因ですね。

あと、ロビーではなんと火鉢が使われていました。上に乗っている鉄瓶も黒さが限界突破していて、鎌倉温泉で昔からずっと使われていたものなんだろうな…としみじみ。

ロビーから受付前を通り宿泊棟方面へ。売店の範囲は広く温泉や宿泊棟へ続く廊下へも及んでいますが、この動線もなかなか考えられていると思います。

大多数を占める日帰り温泉客は玄関から受付前を通って温泉へと向かい、温泉に入った後の動きはその逆。
帰り道にはこの売店の前を通ることになり、否が応でも様々な魅力ある売り物が目に入るので何かしらを買っていく率は高くなります。夏だったらアイスや冷たい飲み物、冬だったら温かい飲み物が揃っているのは客にとって嬉しい。
おまけにちょっとくつろげるロビーもあることだし、自分も温泉後は飲み物を買って休憩してました。

宿泊棟 (大正末期&昭和初期) 1階

温泉棟は以上で、続いては今日泊まることになる宿泊棟へと移動します。

温泉棟から宿泊棟への移動は1階にある渡り廊下を通る形になり、つまり日帰り温泉客はここを通る機会がありません。宿泊する人しか立ち入らないので建物の構造としては非常に分かりやすいと思います。

客室棟は大正末期建築と昭和初期建築の部分とで分かれていて、渡り廊下を渡ってすぐのところが大正末期建築の部分。昭和初期建築の部分については、建物右側に進んだところで切り替わっています。

屋外から見た渡り廊下
温泉棟から宿泊棟を見る
宿泊棟から温泉棟を見る
渡り廊下から見た宿泊棟奥側
売り物にもなっている温泉水を汲んでいた

この渡り廊下の存在が、鎌倉温泉の中ではかなり好きになりました。

まずメンタル的な部分でいうと、温泉と宿泊を明確に切り分けているということ。温泉へ向かうときは要は人が多い場所へと移動することになって、どちらかというと賑やかな感情になりやすい。それに対して宿泊棟は身体を休息する場所ということで静かな面が強く、動と静でそれぞれ異なる良さがあります。

構造的な部分でいうと、宿泊棟全体のデザインをそのまま延長したような造りになっているのである種の統一感がありました。通りに面している側の宿泊棟はすべてがガラス戸になっていて、どこからでも中に入ることができます。渡り廊下が接続されている部分も同じくそうなっており、異なるのは渡り廊下部分に屋根があることくらい。昔の建物って同一な構造が連続するケースが多いような気がするけど、ここではそれが際立っています。

鎌倉温泉の昔の写真
洗面所。奥に男女兼用のトイレがある

宿泊棟は通りに面した側に端から端まで廊下が通っていて、客室はその廊下の奥(向かって左側)にあるという均一的な造りです。常に廊下の右側からはガラス戸越しに自然光が入ってくるので明るく、光によって室内の明暗が強調されている様子がなんとも良い。

入ってすぐにトイレと洗面所があり、宿泊棟のトイレや洗面所はここだけとなります。2階に泊まっていても、1階まで降りてくる必要があります。

まずは左側に進んでみると、スタッフルームの奥に古風なまっすぐの階段がありました。

これを使えば2階へと行くことができますが、2階の先には宿の方の居住スペースがあるため立入禁止となっています。宿泊棟の2階廊下部分は真ん中付近に区切りが設けられていて、宿泊棟を正面に見たときに左側が宿の方の部屋、右側が宿泊者の客室となっているようです。

それにしてもこの階段の古さが今までに見たことがないレベルで、廊下と1段目の間にあるステップや階段の幅がちょうど廊下の幅の半分になっていることなど、他の旅館ではなかなか見られない造りでした。

廊下の左側の端。このあたりの部屋もすべて客室になっている
ガラス戸と道に高低差がない

階段を通り過ぎて廊下を左側の端まで進んでいくと、外観確認のときに見かけた新しめの家に繋がる扉がありました。この近くの部屋も客室になっているようで、実際に歩いてみると分かるけど本当に統一感があって理解しやすい造りです。廊下も一直線で見通しがよく、自分が古い建物に泊まっているということを再認識できました。

駐車場方面から鎌倉温泉への道は少し坂になっているので、この客室の前のガラス戸を開けた道路との高低差はほとんどありません。ただ、すぐ上に久があるので雨等については特に問題ないようです。

扉から先が昭和初期建築となる(2階も同様)
右側の廊下の端には本棚がある

続いては1階廊下を右側へ。

洗面所の右側は一つ客室を挟んで2階へのもう一つの階段があり、その先は同じように客室になっています。階段のすぐ奥側には手前に開くタイプの戸があって、ここから先が昭和初期の建物。建物の古さは明確に違いがないように見えるものの、扉という境界があるのである意味分かりやすい。

昭和初期建築の客室の様子は上記の通りで、1階・2階に6畳の部屋が3部屋ずつ連続している配置。それぞれの部屋は襖戸で仕切られているので、満室のときは物音に注意する必要があるでしょう。

昭和初期建築の客室には名前が割り振られていて、1階が手前から順に桐の間・鶴の間・亀の間、2階が同じく竹の間、松の間、梅の間となっています。

ここまで散策してきた様子としては、客室としては大正末期の1階右側(直線の階段があった先)にも一応配置されてはいるものの、現在メインで使われているのはこちらの昭和初期の方のようです。

宿泊棟 2階

で、続いては今回泊まることになる2階へ進む…のですが、この階段がまた素敵な場所でした。

湾曲した手すり。手へのフィット感が良い
階段の壁には四季の写真が飾ってある

先程宿泊棟の右側で見た階段もそうでしたが、こちらの階段もまた他の旅館ではまず見ることのできないほど特徴的なものです。

人間一人分しかない幅、はしごと見間違うような傾斜の急さ、2階へかかる部分のみ設けられている湾曲した手すり、そしてこの狭さなのにも関わらず踊り場を確保している魅力ある設計。
鎌倉温泉の中でどこが一番好きかと言われれば、後述する扉も含めて階段付近だと答えます。そもそも狭くて急な階段は昔ながらの建物でよく見られる風景ですが、現役の旅館で維持されているのは珍しい。

もし鎌倉温泉に泊まるという場合には、この階段の存在を理由に個人的には2階への宿泊をおすすめしたい。客室から温泉へ向かうとき、洗面所で向かうときなどに必ずここを歩くことになって、1階に泊まるよりも刺激のある時間を過ごせるはずです。

扉のデザインが好きすぎる
扉を開けた状態
扉を閉めた状態
ドアノブ

そして階段周辺を好きになったもう一つの理由が、1階でも見かけた昭和初期建築部分へ入る箇所にあるこの扉です。

いやー…こんな素敵なデザインの扉はなかなかお目にかかれるものではない。ドアノブの部分や扉全体の木枠の意匠、すりガラスの意匠、扉の上にある小窓や通り側のガラス戸との対比など、良いところが前面に押し出されています。もう本当にここだけ切り取っても大満足すぎる。

古い旅館だと廊下と客室への行き来は障子戸だったり襖戸だったりがほとんどなので、このようなドア形式の扉はそれだけでも価値が高いです。

ガラス戸と欄干

昭和初期建築の2階は、1階と同じく3部屋続きとなっています。

泊まった部屋

今回泊まった部屋は宿泊棟の階段を上がって右側に一部屋だけある大正末期の客室で、大正末期の2階の客室はここのみとなっています。また昭和初期の客室で見たような部屋名はここには設定されておらず、何かしらの特別感がありました。

階段を上がって右側が今回泊まった部屋
泊まった部屋の前の廊下。干し柿が特徴的だった。

部屋の前に通っている廊下はここで終わりではなく、先程1階で見た直線上の階段の部分まで繋がっています。ただしこの部屋の2つ隣の部屋には先程述べたように宿の方が住まわれているため、ここから先には通り抜けができないようになっていました。

廊下と客室との境界は昔ながらの障子戸で、鍵はありません。廊下にはタオルを干すところや本棚があるほか、窓の外に見えるのは現在進行系で干されている干し柿たち。静かな空気に包まれて過ごすには申し分ない。

泊まった部屋

広さは8畳で、入り口を入って奥に床の間と押入れがあります。また、到着した時点ですでに布団が敷かれていたので昼寝も可能でした。

部屋に案内していただいた時点ですぐに思ったこととしては、これから一夜を過ごす上でこれ以上なく居心地がいい部屋だということ。

8畳という広さは炬燵にプラスして布団を敷いたときのスペース感がちょうどよく、歩いて通ることのできる畳の割合が実にマッチしている。確かに一人泊の場合として一般的な広さは6畳ですが、寒い季節で机ではなく炬燵(炬燵布団の影響で机よりも専有面積が広い)がある環境では少々狭く感じてしまう。温かい設備が必要な冬ということを考慮すると、冬場は8畳の方が過ごしやすいと思います。

それに加えて、室内では壁に取り付けられた扇風機や時計、床の間に置かれたもの等が目に入ってくる。これらの要素が生活感を感じさせて、何もない部屋よりも圧倒的に素敵だ。

令和の時代にVHS

設備としてはテレビ、ポット、扇風機があり、エアコンはありません。テレビについてはVHSですが様々な洋画が揃っているほか、床の間の後ろの方にある本棚では専門書などが置かれているので退屈することはないはずです。

また、浴衣やタオル、歯ブラシがあります。

驚いたこととして、客室の入口付近に火鉢がそのまま置かれています。しかも別に使えないとかそういうわけではなく、今も現役で使っていますと言われても不思議に思わないくらい。別の客室にもそういえば火鉢が置かれていましたが、ちょっと前まではこれで湯を沸かしていたんですね。

というか、すでに玄関入ってすぐのロビーで火鉢が使われているのを自分は目撃している。確かにポットを使えばお手軽に湯を得られますが、こういう古い要素をそのまま残しているというところに好感が持てました。

その他、必要事項は炬燵の上の冊子にまとめられていました。

宿泊や日帰り温泉以外にも昼食の提供を行っているようで、例えば一泊ではなく二泊、三泊して滞在するということも可能です。館内に自炊設備は特にありませんが、昼食の提供があるなら相当便利だと思います。

あと、冬場に宿泊する場合は炬燵、ファンヒーターそれぞれに別途利用料金がかかります。今回は予約時に炬燵のみお願いしていたものの、正直に言うとファンヒーターもあった方がいいです。室温が外気温と大差ないので、最高気温0℃だったこの日は炬燵と温泉を往復してました。

実際に泊まってみて分かったこととして、宿泊棟は本当に何も音がしません。無音。

周りの環境からして静かなことはなんとなく想像がついていましたが、まず宿泊棟を歩き回る人が非常に限られています。なので、これほど大きな建物なのにも関わらず静かな雰囲気がずっと保たれていました。

館内には1階廊下、2階廊下に多数の書籍が並んでいるので、滞在中に数冊読んでみるのもいいかもしれません。外に視線を移せば、音もなく振り続ける雪が見える。日頃のストレスから離れて療養するのはまさにこういう環境がベストです。。

温泉

続いては温泉へ。

鎌倉温泉の温泉は低張性アルカリ性冷鉱泉で、温度は21.3℃(使用位置43.6℃)。なので加温が必要となりますが、周辺の山林保全を兼ねて伐採した木々を薪にしています。浴室は内風呂が男女各1ずつあり、体感的には男湯の方は常に誰かしらが入っているくらい賑わっていました。

鎌倉温泉の温泉(公式サイトより引用)

お湯自体は癖のないpH9.4の無色透明で、臭いもほとんどありません。効果としては外傷や皮膚病、火傷、美肌、アトピーなど幅広く効くようです。

温度は個人的にはかなり熱めだったものの、外気温があまりにも低い(0℃)=室内温度も低く身体が思いっきり冷え込んでいることから、まるで解凍されるかのような気持ちよさがありました。血流が促進されていっているのが自分でも実感できる。

温度こそ高めだけど長湯が可能で、でもお風呂を出るとスッと熱が引いていくような不思議な感じです。湯船の方は3人も入ればいっぱいになるため、場合によっては人数制限に関係なく少し待ったほうがいいかもしれません。

宿泊棟から温泉に入りに行くには一旦外に出なければならないので、この季節だとなかなか辛いものがある…と当初は思っていたのが、実際にはそうではありませんでした。寒ければ寒いほど温泉の気持ちよさは何倍にもなっていくわけで、白い息を吐きながら廊下を歩いて行く体験はこれはこれで必要なもの。

夜の時間

館内の散策が終わった後は温泉に入りに行くのと部屋で炬燵に入るのを繰り返す形となり、どこか一箇所に留まって何かをするという時間は少なかったです。

何故かというと単純に寒いからで、温泉に入ったとしても身体が冷えるのが早いのでのんびりしていると寒くなってしまう。何もしなくても何度も温泉に行きたくなるのが冬の良いところですが、鎌倉温泉ではそのスパンが比較的短かった。

温泉へ行く合間では屋外に何度か出てみたりもして、というか渡り廊下を通る時点で完全に屋外だけど、その度に日帰り温泉に入りに来る人を見かけました。

こういう山深い旅館に泊まる度に思うことですが、やっぱり日中と夜とで館内/館外の雰囲気がガラッと変わるのが素敵だと思います。

周囲にあるのは自然のみということもあって日中はそれほど存在を感じないけど、夜になると人工的な灯りが支配的になって、そこに確かな人の営みを感じる。ましてや今日は一泊するわけで、暗闇の中で浮かび上がる光を見るととても安心できます。今回鎌倉温泉に宿泊できて良かった。

夕食~翌朝

夕食の時間は18:00、朝食は7:00でいずれも温泉棟のロビー奥側でいただく形となり、時間になれば係の方が呼びに来てくれます。ここのスペースは普段は昼食用に使われており、人数によって間取りを変えられるようになっていました。

夕食は天ぷら、刺し身、鯖の塩焼きと申し分のない内容で、これにご飯と味噌汁が付きます。建物の雰囲気に合った静かな時間を過ごすことができました。

夕食をいただく時間になるともう辺りは完全に真っ暗になっていて、日帰り温泉の時間帯ではあるけどここまで車で来るのは躊躇われるような状況です。雪の降る量も徐々に増えてきているし、とにかく寒いしで屋内にこもっているほうが過ごしやすいのは確かなこと。

でも、日帰り温泉の時間が終了するまで客足は途絶えることはありませんでした。自分が食べている間にもおじさんが何人か入りに来ていて、時間帯を問わず地域の温泉として愛されているのがよく伝わってくる。


そんな感じで夜を過ごし、眠くなったら布団に潜り込んで就寝。布団は毛布と掛け布団が重めで気持ちよく、一旦入ったら抜け出せませんでした。

翌朝はまず起きてから最初に炬燵に電源を入れ、そのままだと寒すぎるのでまずは温泉へGO。

日帰り温泉は7時から営業開始となっているのに対し、宿泊者は6時から入ることができます。7時になると同時に日帰り温泉には一気に人が入りに来るため、この1時間を有効に使いました。

7時になったので、ロビー奥の部屋で朝食をいただく。

しかしあれだな、この寒い時期に湯気が出ているものを見るとそれだけで安心してしまう。なにもかもが冷え切ってしまう冬の朝の中で、ほっとするような温かさは何よりも重要です。今回の場合は朝食のご飯とお茶がまさにそれで、特に朝食後にお茶を飲んでいるとしみじみとしてしまう。

最後は路線バスの時間までまったり過ごし、雪が降る中の出発となりました。

おわりに

鎌倉温泉は蔵王の里山に位置し、周りを自然に囲まれた中に静かに佇む木造宿です。

日帰り温泉が主体となっている宿ではあるものの、宿泊する棟の造りは貴重そのもので今回一泊して良かったと心から思えました。古風な構造のみならず滞在を充実したものにする工夫があちこちに見られて、ただ古いだけの宿とは一味違った良さがあります。鎌倉温泉は映画やyoutubeにも露出が多く、公式サイトの様子を見ても経営のことをよく考えられる方針が見て取れました。

アクセス自体も仙台駅から高速バス一本で近くまで行けるので支障はなく、別途交通手段を確保する必要がないのがとても便利。お手軽に古い木造建築に泊まりたいという場合はおすすめできるところです。次に来るとしたら、春先の植物の芽吹きが美しい季節に訪問したいです。

おしまい。


本ブログ、tamaism.com にお越しいただきありがとうございます。主にロードバイク旅の行程や鄙びた旅館への宿泊記録を書いています。「役に立った」と思われましたら、ブックマーク・シェアをしていただければ嬉しいです。

過去に泊まった旅館の記事はこちらからどうぞ。

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