今回は、ロードバイクで高知県を走ってきました。
四国は個人的に好きなスポットが多いので訪問頻度が高く、その中でも高知県は鄙びた宿・ライドの両方で満足度が高いところです。太平洋に面した海沿いを走るもよし、ちょっと内陸部に行けば比較的高い山々がそびえているしで、短い走行距離の割に景色が目まぐるしく変わっていくのがその理由。
もちろん食べ物も美味しくて、地形の特徴は特産品の豊富さに繋がる。山の幸、川の幸、海の幸とどれをとっても魅力的で、何度訪問してもすぐにまた行きたくなるほどです。こういう風に自分が好きなところを全国につくっていきたい。
今回の主な目的は内陸部の越知町にある谷脇旅館に泊まることで、行程としては一泊二日で高知龍馬空港と旅館をピストンするというシンプルなものにしました。
移動手段を含めて休日という貴重な時間をどう過ごすかは人それぞれですが、今回は初日に山越えルートでヒルクライムを楽しみ、二日目は順当に海を眺めながら空港まで戻るというルートにしています。同じルートを続けて2回走るのはどうしても飽きてしまうので。
というわけで早速出発。
高知の山と棚田
人の出が完全に戻って大混雑な名古屋小牧空港から、FDAに乗って高知県へ。
FDAは路線の数が多く、その上輪行ボックスが大変便利なので自分の旅にとても助かっています。
高知龍馬空港(南国市)から宿がある越知町までは、普通に行くんだったら国道33号を西へ進むだけでOK。ただ今回はちょっと寄り道を多めにしたいという気分もあって、高知市から先は北へ進路を切ることにしました。
まずは高知市街方面へと向かう必要があって、交通量が多い国道55号を西へ。
交通量が多い国道などを走るときは毎回緊張するけど、高知県は割と距離を取って抜いてくれる安全な車が多いような気がします。なんかのニュースで高知県民はクロスバイクやロードバイクに乗っている率が高いというのを見た気がするし、自転車が浸透しているせいかもしれない。
はりまや橋や高知駅前といった高知の中心部に至り、そこからは県道16号を上って土佐町を目指します。
四国の真ん中の方って基本的に東西に山脈が伸びているので、大きい道もそれに伴っていることが多いです。逆に南北に伸びる道はそんなに多くなく(徳島県とか見るとよく分かる)、あったとしても獲得標高がそれなりにある道ばかり。
今回の行程思想でいうと国道32号がそれに相当するものの、それよりは車があんまり通ってなさそうな県道16号を選択しました。道が思いっきりグネりながら山の中を突っ切っているのが地図上からでも分かるレベルで、まあ冬なんだから多少は上ったほうが身体温まるよね??というノリで決めたというのもあります。
これが個人的にかなり当たりで、そうそう四国ってこういう景色だったと思い出すような景色がずっと流れていく。
具体的にはまず道が川のそばを通っていて、その向こうには山の斜面にへばりつくように立ち並んだ家屋や畑、そして高い山々が遠近法のように視界の中に納まっている。比較的平地のところには店とか学校があり、標高が高くなるにつれて次第に民家の数は減っていく。
なんというか、生活の中に必ず「山」と「川」が組み込まれているのがこのあたりの特徴だと思っていて、実際に走るとそれがよく理解できました。
そうこうしているうちに、いつの間にか峠に到着してました。
このルートでいう最高到達点は「高知市工石山青少年の家」(標高1177m)周辺で、看板を見るとすぐそこにある工石山という山の登山口にもなっているようです。付近にはもう家屋が見えないほど高いところまで上ってきましたが、急に人工物が現れてきて驚きました。
で、峠のトンネルを抜けた先はもう別世界。
今までは比較的温暖な感じでずっと走っていたのが、いきなり気温がガクッと下がった感触でした。道の脇には溶け切っていない雪がまだ積もっていて、標高は同じなはずなのでここまで環境が違うなんて。
山一つ違えば気候が異なるというのは思っきり標高が高い山に限った話ではなく、ロードバイクで上れるくらいの山でも実感することができますね。四国は手軽に上れる山が多いので、同じ季節だったとしても場所によって全然違う体験ができると考えればお得かも。
このトンネルを堺に高知県から土佐町に入り、酷道で有名な国道439号へ向けてダウンヒルがしばらく続きます。国道439号は高知県の北側を移動しようとすると無視できない存在で、高知県内の区間はよく整備されているので「酷」感はなし。
そして、頭上を見ればどこまでも突き抜けていきそうな快晴。
気温の低さによって空気がとても澄んでいて、さらに標高が高さがプラスされて空気の美味さが限界突破している。ダウンヒルは強烈な寒さだけど、こんなに美味しい空気を簡単に味わえるのは冬の特権だ。道が凍結しない範囲で冬にヒルクライムをするのは結構アリなんじゃないか。
下り坂を下っていった先は高須という地名の場所。ここには見渡す限りの無数の棚田が広がっていて、高須の棚田という名称でれいほく地区を代表する棚田と位置づけられています。
確かにこんな山間部で農作をしようとすると棚田になるのは理解できるけど、何より忘れてはならないのは田んぼには水が必要ということ。しかもこれだけの田んぼを維持していくためには膨大な水がないといけないわけで、特に説明がなくてもここには豊富な山水という恵みがあると分かる。
棚田は景観としても優れていて、しかもここは棚田だけが集中してるんじゃなくて間に林や集落が適度に混ざっているのが個人的に好き。人々の生活のそばに棚田があるのが強調されているというか、ずっと昔からこうなんだなってのが納得できる。
今回、高知市側からここを訪れたことは我ながらすごく良い選択で、順当に道を下っていくと突如として上の写真の風景が目に入ってきます。このインパクトはかなりのものでした。
反対だったらまず最初に家屋の間の道を通って徐々に標高を上げていって、ああさっき見えた棚田を上から見るとこんなに規模が広いんだなという流れで楽しむことができる。気分を段々盛り上げていくのがいいか、それとも最初にクライマックスを向かえるのがいいかという嬉しい悩み。
今の時期の田んぼは、稲はもちろん水すらない冬眠状態。でも春に向けての準備は着々と進んでいるようで、その合間の景色を見れたような気がして一人でニンマリしてました。ちょっとお得気分。
ここでちょっと愛車の話をすると、チタンフレームは本当に旅に向いていると思ってます(n回目)。
旅の道中って平坦な道だけではなくて上りもあるし、上った分だけ下りもある。そういう様々なシーンでバイクの方から助けてくれるのがこのKUALISで、ヒルクライムが本当に楽になりました。踏んだら踏んだだけすぐ推進力に変換してくれて、ワンテンポ遅れたりといったロスがないような感覚です。
実際にKUALISに乗り始めてから上りをなんとも思わなくなったし、これは本当に良い選択だった。
冬の上八川川を走る
寒さを感じるダウンヒルもここに来て終了し、無事に国道に合流しました。高知市から北に向かうルートはここにきて終了し、ここからはこの国道439号を西に向かって越知町を目指します。
この道中は川の存在が道のすぐ近くにあって、途中の郷ノ峰峠を通る郷ノ峰トンネルを境にして東側が吉野川の支流である地蔵寺川、西側が仁淀川の支流である上八川川(かみやかわがわ)。それぞれの川は名前を聞いただけでもピンとくるほど有名ですが、その始まりとなる小川をダブルで見ることができる道をこれから走っていくというわけ。
峠とはつまり山のことなので、山から流れ出た水がそれぞれ河川となって東西に続いていくわけですね。従ってさっきまでのヒルクライムで上りは終了と思っていたのが実はそうではなく、峠まで軽い上りがあります。
国道439号は車線も広くて快適に走ることができ、地蔵寺川の流れも静かで落ち着く風景が広がっています。
「道のそばに川が流れている」という特徴は県道16号と同じ。でもこっちは平野部の割合が多くて広々としている。大きな川のそばには住みやすいということで、昔の人がここに済むことが決めた理由がすぐに分かります。
民家がたくさん登場してきて精神的に安心できた反面、実はしばらくコンビニや商店はないので補給という観点からはあまり期待できませんでした。看板にあるように県道から国道に合流した地点から東へ進めば道の駅があったけど、そのまま目的地の西へ向かったので何もなし。
ただそんな状況でも出会いはあって、自動販売機を見つけたので無事に水分補給ができました。食べ物はなくてもコーラさえあれば走り続けるのに支障はない。
飲んでる途中では隣の家で作業をされていた方に話しかけられ、今日はどこから来てどこまで行くといった世間話に花が咲く。自転車がかなり普及している高知県でもメインなのはあくまで海の方で、内陸部の国道439号周辺はそうでもないみたいです。
後は順当に峠を超えて下りに入り、向かい風にボコボコにされながら西へ。国道194号との合流地点あたりからは川幅も広がり民家の数がどっと増えて、そこからちょっと進めば道の駅もあるしで安心できます。
今日の行程は道だけが存在するような心細いところを走っていたかと思えば、その逆で精神的に休まる風景が交互にやってきて気持ちの移り変わりが激しい。
山岳部を通るルートはそんな躁鬱みたいな感情になりやすく、四国はどちらかというとやっぱり山が主体なので個人的にも経験が多いです(特に徳島)。あと標高の高さは民家の多さにダイレクトに直結しており、国道439号という大動脈でもそれを実感できました。
このあたりは以前に「竜とそばかすの姫」の舞台訪問ライドで訪問したことがあって、特に国道194号を北上したところにあるにこ淵は個人的に特におすすめ。仁淀川が本気を出す夏の時期にこそ、ぜひ訪問してみてほしい。
後は順調に国道194号から県道18号に入り、浅尾沈下橋を横目に見ながら走って越知町に到着。
越知町の町並みは商店街がずっと続いているような感じで、国道から一本入ったところにはたくさんの店が集まっています。どの店も新規にできたばかりというよりは、昔からこの地で営業されている古びたところばかり。それでも生活に必要な施設はかなり揃っているし、良い雰囲気でした。
結局昼食は食べる時間がなかったので食べませんが、宿に到着するまで保ってくれて良かったです。(中途半端な時間だったので越知町の飲食店も休みに入っている)
で、この日に泊まった谷脇旅館の宿泊記録は別記事でまとめています。
今回のライドの主目的だった旅館での一夜は本当に素晴らしいもので、旅館の外観、内装、部屋、雰囲気、食事と何から何まで感動しっぱなし。
特定の宿に泊まるために飛行機まで予約して酔狂だと思う人もいるだろうけど、自分にとってはこういう鄙びた宿ライドこそがやりたかったこと。自分にとっての旅の優先順位はこれでいい。
翌日、須崎へ
翌朝は早くもなく遅くもない時間に出発し、最終的に定刻までに高知空港へ到着する以外は完全に自由です。なので全く何も決めていませんが、単純に海が見たかったので沿岸部を走ることに決定。
ただこれも能天気に決めたわけではなくて、自分の走行能力と散策の時間、あと適度に「暇」な時間を確保しておいての方針。自分の旅は散策がメインなところがあるので、少なくとも今回はそれほど走らないことにしました。
今日も昨日に引き続いて快晴ということで何よりで、ちょろい性格なので天気がいいと気分が良くなってきます。
海を見るためにまず越知町の南に位置する須崎へ向かうことにし、その初っ端として隣にある佐川町へ移動。
最短距離を行くなら国道494号を通ればいいところ、そういう気分ではなかったので川沿いの県道ルートを選択。やっぱり朝の時間は静寂が似合うということで、文字通り何の人工音も聞こえてこない環境に身を置いてみました。
出歩く人が少ないという理由で朝はいつだって静かなものだけど、冬だとその静寂レベルが極限になっているような気がする。何もかもが冬眠しているんじゃないかって勘違いしてしまう中で、ふと立ち寄った橋の上で立ち止まっていたら川の流れる音に感動しました。
自然の音だけが耳に入ってくるって、なんて素敵なんだろう。
佐川町へはすぐに到着しました。
佐川町は酒蔵の町として知られ、その名の通り創業400年を誇る司牡丹酒造の工場郡が有名で「酒蔵の道」と呼ばれています。高知県内でも日本酒の製造規模でここまでのところは珍しく、白壁の蔵がずらっと立ち並んでいる光景は圧巻でした。
実は昨日の晩に旅館でテレビを見ていたところ、この司牡丹酒造で立春の朝に搾ったばかりの新酒「立春朝搾り」の出荷風景がニュースで放送されてました。このめでたい日にできたばかりの酒をその日のうちに飲んでもらうために、酒販売店らによって朝から箱詰め→出荷を大忙しでされていて、この日は日本酒が一番売れる日らしいです。
自分も昔は日本酒を結構飲んでいて、その製造場所を見れたことが体験として嬉しい。やっぱりその品がどういうところで造られているかをざっくりでもいいから知っておくと、より美味しく感じると思います。
今回がロードバイクでなく、公共交通機関による移動だったら試飲とかをしていたかもしれない。
佐川町を散策した後は国道494号へ入り、軽い山越えをして須崎へ。須崎にもちょっと泊まってみたいと考えている木造旅館があって、これは今年中に訪問したいと考えています。
佐川町~須崎市街の道のりは景色が目まぐるしく変わっていって、最初は平野部で田畑が多く存在していたのが山間部に入って高低差のある地形に変わり、最終的には海へと下っていった先に町並みが広がっていました。
同じような地形がずっと続くわけではなく、それでいて山から海へ移り変わっていく過程が実にシームレス。と同時に今までの行程はずっと内陸だったわけで、ここに来て眺める海は新鮮味がある。遠くに見えた海が徐々に大きく見えてくるのはテンション上がる。
須崎という町はかなり特殊な感じがして、海沿いにある港町…かと思いきや工業の存在感が大きいです。JRの線路が通っている側には市街地、反対の岸には巨大なセメント工場がそびえていて、その対比が美しい。高い場所に上ってみるとそれがよく分かるはず。
高知の海沿いを走る
この後はもう高知空港までひたすら東へ進んでいくだけになるものの、その前に県道284号を迂回して集落を巡っていくことにしました。
セメント工場を抜けた細い道の先にあるのが、猫好きとしては立ち止まらずにはいられない猫神社という名前の神社。これは通称ではなく、鳥居の上にしっかりと「猫神社」と書いてあるので猫神社以外に呼びようがない。
一般的に猫神社といえば「猫がいる神社」のことを想像すると思いますが、ここでは実際に猫を祀っています。
言い伝えとしては昔、吾川郡吾川村(現仁淀川町)の寺には大猫が住み着いており、この猫は夜な夜な和尚の袈裟を持ち去っては僧に化けて踊っていました。それがばれて和尚に追放された後、ここ須崎の箕越にやって来て安住の地としたとのこと。
猫神社の前の風景は長閑そのもので、ガードレールがない道の向こう側には静かな高知の海。さっきまで通ってきた道や町並みも遠くに見えて、確かにここなら平穏に過ごせそうな感じがする。
姿は見てないけど、今日は暖かいので猫の神体はたぶん昼寝をしていると思います。
猫神社を後にして、引き続き県道を走っていると見事な風景に出会うことができました。
特に須崎市立南中学校周辺はその立地が自分の琴線に触れて、上り坂に入ったと思えば曲がり角の向こう側に集落が広がっているというシチュエーション。
海沿いでありながらも高低差のある地形の先には遠くまで連続する海岸線が見えて、そこに人々の暮らしが形成されているという様子がとにかく好きすぎる。海がすぐそこにある学校って個人的に憧れます。
てっきり高知県にはこういう場所は少ないと勝手に想像していたものの、自分の好きなアングルというか一角に遭遇できたので運がいい。
その後に訪れたのは、県道284号から県道23号へと移る途中にある須賀神社。
ここは田園地帯の真ん中を通る道路の先に鳥居があるというロケーションもさることながら、「大谷の樟(クスノキ)」と呼ばれる巨大なクスノキが有名です。その粋定年齢はなんと約1300年で、少なくとも四国最大級とのこと。
ここに限らず、なんか神社ってどこも大きな木が生えているような気がする。
そもそも神社自体がその土地で古くから存在している建物なわけで、たぶんここに人々が生活を始めた最初のときからあったんじゃないかと思います。家屋と違って人為的な理由によって他の土地に移動することが基本的にないし、そこにあった植物が長い年月をかけて今のサイズになっている。
自分が神社が好きな理由は過去に書いたけど、その土地の歴史みたいなものを知ることができるのが理由の一つかなと感じます。ロードバイク旅の途中の休憩にも最適で、今後も良さげな神社を見つけたら積極的に立ち寄っていきたい。
その巨大なクスノキがどれくらいの大きさなのかというと、上の写真の通り本当に大きいです。
幹の周囲だけで何mあるんだ?って思って説明書きを読んだら25m(!??)もあって、中は空洞になっているのでそのまま入ることができます。もちろん高さも大きくて、真下に立つとそのスケール感に圧倒されるばかり。
高知県といえば毎年台風の被害が大きいことが知られている中で、幾度の台風に耐え抜いてきた巨木の生命力は半端なものではない。目の前の木肌を触りながらそう思いました。
この後は県道23号に合流し、以前走ったときと同様に海沿いを走って東方面へ。一度海沿いに出たら高低差がなくて走りやすいのが自転車的には楽で、このルートは自分の他にも自転車で走っている人が多かったです。
県道23号は15kmほど何もない区間が続いた後、県道47号との合流地点くらいからコンビニや飲食店が現れ始めるのでこの辺りで昼食にすることに。
「帆竿」というお店で注文したのは、巨大なエビフライが3本も乗っているエビフライ定食。細かいパン粉を使用してカラッと揚げているフライは身が大きく、しっかり中が詰まっていて有名になるだけのことはあります。
ここは観光客向けというよりは周辺地域の方が多く来られる店のようで、料理の美味しさのほかにも緩い空気感が好きになりました。訪問当初はかなり混んでいたけど、それも納得です。
後はもう桂浜までド平坦な道がずっと続き、(向かい風だけど)周辺の交通量も多くてスピードに乗ることができました。
道中に通ることになる仁淀川河口大橋は、昨日眺めた仁淀川が太平洋に注ぐ重要なポイントに建っている橋。
ここから上流側を見てみると美しい青色がずっと続いていて、川の透明度には季節は関係ないことに気がつく。綺麗なものを見ると精神的にリラックスできて、今回の場合だと昨日からずっとテンションが下がらないままだったので余計に感動しました。
一日、あるいは複数日をまたぐ旅では同じ場所を2回通ることは少ないけど、「同じものを複数回見る」という意味においてはやっぱり川が印象的だと思います。
川はとても広い範囲に渡って流れているので、昨日は上流側を通って今日は下流型を通過した、という経験になりやすい。仁淀川を例に取ると、昨日は上流に相当する支流の周辺の様子を眺め、今日は「川」としての終わりを迎える河口を見た。
同じ存在を別々の場所で見ると、受ける印象がこうも異なるということ。ロードバイクで移動していると横を流れる風景はあっという間に過ぎ去ってしまう中で、色んな視点から風景を見ることを忘れないようにしたいです。
自分で焼くカツオのたたき
桂浜を通り過ぎ、橋を渡って高知空港へ向かう県道14号へと合流します。
今回の旅も終わりがもう近い。思い残すことは本当にないだろうか?
桂浜から高知市街方面へ向かう際に便利なのがこの浦戸大橋という橋です。
ここは橋の下を船が通れるようになっているため標高が高く、今まで見てきたような海と同じ目線ではない俯瞰した展望が得られるのが良いところ。橋の左右はフェンスで覆われてはいるものの、端っこの方からは遮るものなしで見渡すことができました。
ただ、問題なのがいかんせん歩道がめちゃくちゃ狭いということ。上の写真でいうとオレンジ色のところが歩道で、幅は50cmくらいしかありません。普通に車道を走ればいいという意見もある一方で、交通量がかなり多いので通るのが怖いです。
で、橋を渡っている途中に今回はカツオのたたきをまだ食べていないということに気付いてしまった。
まあ高知県を訪問する度にカツオのたたきに注力するのは盲目的すぎるような気もするし、そういう意味もあって昼食からあえてそれを外しました。ただ、なんだかんだ言ってもやっぱり食べたいよね?ってなったので、高知空港に向かう前に立ち寄ることに決めました。
「本物」のカツオのたたきの魅力は底が深くて、一旦は忘れようとしたけどすぐに気になってしまう。美味しいんだからこれはもう仕方ない。
到着したのは、浦戸大橋のすぐ近くにある土佐タタキ道場というお店です。
高知県においてカツオのたたきを供するお店は星の数ほどある中で、こちらのお店の特徴は自分の手でカツオの藁焼きができるという点。予め調理されたものが出てくるところと異なり、客も参加する体験型の食堂なのです。
入店するとまずカツオのたたき単品か定食にするかを聞かれ、迷わず定食を注文。出来立てのたたきは白米と一緒に食べることで最高になれるので迷うまでもない。
その後はレジの横に串に刺さった生のカツオがたくさん置かれているので、好きなものを選んで藁焼きエリアへ。大量の藁が投入されたかと思えばそこに火が付き、あっという間に周辺が炎上してました。火力がものすごいので、ある程度距離を取っておかないと非常に熱いです。
時間が経ったらお店の方の指示でひっくり返し、もう片方も表面を焼いたら藁焼き終了。焼き終わったカツオはすぐにカットされて、予め準備されていたご飯や味噌汁と合わせていただくことができます。
こうして出来上がったカツオのたたきはほんのりと温かく、それでいて藁の香りがかすかに漂う至高の逸品。
一般的に食べるようなカツオのたたきって冷凍されているので冷たいままなんだけど、ここでは温かさが美味しさを加速させている。見た目と香り、そして味。何もかもがご飯と最高に合うので何杯でもいけそうな気分。控えめに言って天国です。
調味料については本場の食べ方に則って、最初は塩とわさび、その後に柚子とお好みでポン酢という順番です。塩で食べるカツオのたたき…あまりに美味すぎる…。
満腹になった後は高知空港まで走って、週末の2日間が終了。
高知旅の最後にあんな美味しいものを食べることができるなんて、なんか最初から最後まで嬉しさを感じる二日間だったな。
おわりに
高知県はどこを訪れても自分が好きな風景が広がっていて、季節に関係なく訪問を計画するほど好きなところ。
今回は鄙びた宿に加えて山と川、そして海と欲張りセット気味な行程にしたところ、満足度が2日間のそれじゃない。走った距離は大したことないし、移動に極振りしなくても満足感を感じられるのは大きな魅力ですね。今後も折を見て再訪したいと考えています。
おしまい。
コメント