【KUALIS CYCLES】フルオーダーチタンバイク 導入記録 Part 1/2 設計思想&フレーム仕様編

今回は私の新しいバイクの話。

2019年に趣味としてロードバイクを始めて、もう3年になります。当時からずっと乗り続けてきたTADA No.275はフルオーダーのクロモリフレームで、旅をしていく上での強力な機材でした。▶【TADAフレーム No.275】クロモリオーダーバイクの仕様まとめ - TAMAISM

ロードバイク初心者の私が初めて乗るバイクということで、要は車の免許を取得したばかりのペーパードライバーが最初に購入する自動車のような立ち位置だったTADA No.275。

世の中にはメインバイクとサブバイクという呼び方があったりなかったりしますが、自分に限ってはメインもサブも関係なかったんですよね。なんせこのクロモリバイクしか知らないのだから。

その乗りやすさはこのブログで何度も取り上げてきたことだし、ここで改めて述べるようなことではないです。何よりも自分自身が乗っていて非常に楽しいもので、まさに旅の相棒という言葉がふさわしい存在でした。

旅をしていく上では平地や山、アスファルトや完全なダート等、あらゆる地形や様々な状態の路面を走ることになり、クロモリ特有の"しなり"が自分の身体にフィットしていたと感じます。

もくじ

経緯

しかしそうは言っても、ロードバイクについて右も左も分からないようなシチュエーションで選択した1台目のバイクで、しかもオーダーフレーム。

そのジオメトリは自分の身体に完全にフィットしていたとは言い難く、数年も同じバイクにばかり乗っていると「ここはもう少しこうしたいな」という点も出てくるというもの。

そうしたちょっとしたことがライドの度に気になるようになって、いつしか「2台目のバイク」に乗り換えることを決めました。

KUALISのチタンフレーム

結論から言うと、2台目のバイクはチタンフレームです。

実は自分がロードバイク趣味を始めるにあたって最後まで迷ったフレームが2つあって、それがクロモリフレームのTADAと、チタンフレーム(TITANIUM ROAD)のKUALIS CYCLES(以下KUALIS)。自分で調べた限りでは、これらのフレームならロードバイクを楽しくやれそうな予感がしました。

当時は、というか現在も、いわゆるメーカーが作るようなロードバイクにはあまり興味がなくて、最初から自分に合ったフレームを細部まで設計できるオーダーフレームのみが候補に挙がっていました。

せっかく趣味として始めるのだから、その道具には自分の好きな要素のみを含めたい。

メーカーのフレームってどれもロゴが存在感ありすぎたりカラーリングが微妙だったりと、自分が100%気に入るものではなかったので、そのあたりを好きなようにできるオーダーフレームの方が自分に合っていると思ったからです。

その時は自分がロードバイクをずっと続けていくのかどうか不明確な部分もあって、予算の関係でチタンフレームは見送ったのですが、今回様々な理由からチタンフレームを選択する動機が生まれたのでオーダーしました。

1台目で得た経験や情報をもとに2台目を導入する。形としては順当な手順になっていると思います。

KUALISのオーダーの流れ

概要

よしKUALISをオーダーするかとなったところで、まずKUALISについて簡単にご紹介。

公式サイト▶KUALIS CYCLES

  • 工房は和歌山県和歌山市にあり、ビルダーは西川さん。
  • 選べるフレームの材質はチタンかクロモリ。
  • 日本国内のみならず海外からのオーダーも多い。

少なくとも日本国内では、チタンのオーダーフレームといえば真っ先に名前が挙がるほど有名なのがKUALIS。

というか他にチタンフレームを作っているところがあるのか?ってくらい、クロモリのオーダーフレームに比べればビルダーの数がぐっと減ります。

フルカスタム VS セミカスタム

公式サイトを見てもらえると分かる通り、チタンフレーム(KT)についてはRoad / Disk Road / All Road,CX / MTNの4種類があって、MTN以外にはそれぞれフルカスタムセミカスタムがあります。

詳細▶PRODUCTS / PRICE

価格についてはセミカスタムの方が5万円安く、差としてはチタンチューブがノンバテッド(厚みが一定のチューブ)だったり、ヘッドチューブやシートステーの選択肢が少なかったり、他にも色々あります。

セミカスタムは各部の選択肢を少なくしているぶん納期が早くなっていますが、色々凝りたいという人はフルカスタムの方を選んでおいたほうが良さげ。

フルカスタムとセミカスタムの比較表。※自己責任でご覧下さい。

私が適当に作った比較表がこちら。ご参考までにどうぞ。

正直、差の部分を考慮するとフルカスタムの方がおすすめかなと思います。そもそもロードバイク自体が手に入りにくいご時世だし、納期の遅さもそこまで気にならないと思います。

あと価格については、例によってこのご時世なのでこれより下がることは多分ないと思われます。公式サイトに記載されている現在の価格も2020年時から更新して値上げしたものなので、気になるなら早いうちにオーダーするのがおすすめ(別に煽ってない)。

KUALIS訪問

KUALISのオーダーは公式サイトに記載があるディーラーを介して注文するのと、自分で西川さんにアポをとって注文する2通りがあって、自分は後者を選びました。

ただ後から振り返ってみると、ディーラーを介する方が圧倒的に楽です。今回は自分の意見を間を介さずにそのまま伝えたかったので直接連絡する方を選びましたが、やり取りがかなり大変でした(やり取りだけでメールの件数が100件超えました)。

ディーラーはもちろんKUALISのことをよく理解しているし、色々相談に乗ってもらいながらの方がオーダーもスムーズに進むと思います。

詳細▶DEALERS


オーダーに関連して、KUALISのフレームがどういった場所で生み出されているのか?西川さんとはどういう方なのか?等の「生産者の顔」を知っておく必要があるとずいぶん前に感じたことがあって、その際にKUALISを訪問した写真を載せておきます。

この訪問時はまさにオーダーするというよりは、単純に色々お話を伺いたかったという背景がありました。思い返してみればTADAをオーダーしたときもまず最初に工房の見学に訪れたし、自分なりに納得したいという気持ちがあったのかもしれません。

※現在はコロナウイルスの影響もあり、やり取りはすべてメールで行われているようです。なので工房の見学ができるかどうかは不明です。

KUALISの工房は中がめちゃくちゃ綺麗で、散らかっているようなところは一切ありません。

整理整頓が行き届いている中で一種の清潔感があり、ここがバチバチにチタンフレームを生み出している工房だとは一瞬分からないくらい。適度な広さもあって、作業時には動きやすそうです。

見学の後、あれこれお話を伺う時間に突入。

西川さんは生粋のエンジニアというか職人気質な方で、その正確さがこうした工房の様子だったり、フレームづくりに表れていると思います。

出来上がるチタンフレームは信じられないほど精度が高く、仕上がりについても評判がいいともっぱらの噂。こうした見学を経て最終的にオーダーに至ったので、結果的には自分としても納得のいく流れになりました。

設計コンセプト

要望事項

ここからが本題。

予め決められたスペックに合うように作られたメーカーのフレームとは異なり、ユーザーの要望を取り入れてから製作に入るオーダーフレームはある種の独自性を持っており、うまくいけば自分の目的や体格、思想に合致した理想のフレームが手に入ります。

ただ、逆に言えば自分が理解しているそのフレームの明確な仕様や、それをビルダーに上手に伝えることができるコミュニケーション能力が必要不可欠ということ。これらが不十分なままオーダーしても、訳の分からないフレームが出来上がることになる。

自分はどんなライドを楽しみたいのか?
自分はどういうバイクだったら嬉しいのか?

これらについては自分が今までにどういう走りをしてきたのかがダイレクトに効いてきて、要は完全に経験則。今までの走り方、そしてこれからの走り方。まあ未来については不明確な点もあるけど、自分なりにこういうフレームが欲しいというのが納車時から3年間乗ってきてようやく見えてきました。

色んなことを考慮して、KUALISのビルダーである西川さんに以下のことを伝えました(大まかな点のみ抜粋)。


  • ハンドリングは軽いというより安定性重視。
  • ロングライドに使うため、長距離走っても疲れないようなバイクが良い。
  • 平坦、ヒルクライム、ダウンヒル、ダート走行等、旅で使うとなるとあらゆるシーンがあることから、コンディションを問わずバイクが助けてくれるような安定性が欲しい。
  • 現状のクロモリバイクと比較して、走行性に軽快さがプラスされていると嬉しい。
  • ジオメトリはバイクフィッティングのデータをベースに決定。

後から見返してみても抽象的かつかなり矛盾があるような要望に見えますが、要望があるのなら遠慮せずビルダーさんに投げればいいと私は思ってます。

そもそもビルダーさんは年間とんでもない本数のフレームを制作されている方なので何よりも経験があるし、具体的すぎるよりはある程度ふわっとした要望の方がフレームに落とし込みやすい面もあると思います。そういう点も相談して、ここの長さは何mmで…といった数字の話はあまりしないようにしました。

オーダーシート

オーダーの際には「オーダーシート」と、あと参考用のために今乗っているバイクや身体の各部寸法をフォーマットに記入したものを提出する必要があります。

オーダーシートの内容は、ざっくり書くと以下の通り。


  • 氏名や連絡先、メールアドレス等
  • 注文する型番(KT-SR、KT-SAR等)
  • ホイールサイズ
  • ヘッドチューブの種類
  • ボトルマウントの数と場所
  • シフターケーブルの種類(ワイヤー、Di2等)
  • ブレーキケーブルのルーティング(外、中)
  • BBの種類
  • メインコンポーネント / クランク / チェーンリングのサイズ
  • 追加したいオプション
  • あなたが新しいバイクに求めること。どのような目的で使用するか。どのような特性を希望するか。伝えたいニュアンスや情報、補足事項等。

最後の項目が一番重要で、フレームに盛り込みたい事項はすべて伝えることになります。

逆に言うとここに書いていないことは考慮されないので、漏れがないように書ききってしまうのが吉。自分の場合も結構な文字数になりました。

補足事項として自分はフィッティングデータを一緒に送付して、こちらから伝えることはすべて終了。

ジオメトリ決定

オーダーシートを提出してから1週間~2週間くらいでジオメトリが送られてきて、問題がなければフレーム代金等の前金(デポジット)を入金します。

ジオメトリとして具体的に数字が入ると、自分がフルオーダーのフレームをオーダーしたという実感が湧く。主要寸法であるフレームサイズは、TADA No.275が560mmだったのに対して、KUALISは542mm

フィッティングの結果としてTADA No.275のステム長が80mmとかなり短くなったのでフレームサイズは小さくしたいなとは考えていたが、フレームサイズ542mmなんてラインナップはメーカーのフレームにはまずない。「自分の身体に合っている」フレームというのが伝わってくる。

ついでにチタンのステムとシートポストも一緒にオーダーしたので、ジオメトリにはそのデータが入っている。ステムの長さは110mm、これは以前よりもコントロールしやすそうだ。他の寸法については正直よく分からないけど、たぶん西川さんの方でうまいこと設計されたんだと思います。


で、設計内容としてはジオメトリを決定したのでほぼほぼ終わり…ではなく、KUALISの場合はここからチタンチューブのバテッドの決定に入ります。

バテッドとはチューブの板厚を変化させることをいい、強度が必要なところは厚く、そうでないところは薄くしたりして軽量化と強度の両立を図るのが目的です。セミカスタムの場合はこの作業がないのに対して、フルカスタムの場合はなんと0.05mm単位でバテッド量を計算しているそうです。マジかよ。

公式サイトの記載によれば、「レース、ロングツーリング、性別、体重…カスタマーごとに異なるライドスタイル。ジオメトリーを決定する際に検討したライドスタイルは、適正なチューブサイズ(径と厚み)の選択においても重要な要素となります。
そして更に、カスタマーが求める乗り味により近づけるために、Tube butting process (titanium) を通してテーパー度合、厚み、そしてそれらの長さ配分を調整するチュービングデザインを行い、具体的に数値化していきます。」とのこと。

要は、フレームを制作する上での数値類はめちゃくちゃ厳密に計算していますということ。

結果的に各部で異なる直径やバテッドのチューブでフレームが構成されることになって、見た目がクロモリとは明らかに違ってくる。クロモリフレームは全体が細い直径のチューブで統一されていますが、KUALISの場合はそうではないわけです。

詳細▶PRODUCTION

フレーム仕様

デポジットを入金したら、後はもう待つだけ。

待っている間にパーツを揃えたり、フレームのペイント案を考えておきましょう。ペイントについては長野県のアトリエ・ピノキオさんで塗装されるので、ディーラーを通じて早いうちに相談するのがベストです。自分も連絡を取って、カラーについて相談しました。

Atelier Kinopio

そして春が過ぎ夏が過ぎ、待ちに待つこと18ヶ月後の2022年6月。

西川さんから連絡があって、たまフレームが完成したことを知りました。

エロすぎるフレーム
チタンステム
チタンシートポスト

もう美しすぎて泣きそう。

この芸術品のようなチタンの輝き。これが欲しいがためにチタンフレームをオーダーして、自分が憧れたものがこうして現実世界に完成している。完全に気分がハイになってしまって興奮が止まらない。

その後2度目の支払いを経てオーダーに関する諸々の契約が終了し、2日ほどで手元に一式が届いた。

たまフレーム全体像 (Photo by KUALIS CYCLES)

ふつくしい…。(n回目)

完成した私のフレームの主な仕様をまとめると、下記の通りです。


  • Di2専用設計。
  • チタンの光沢を活かすため、フレームは無塗装。
  • フィニッシングについても、ロゴとロゴマークのみでシンプルなものとした。
  • ブレーキはインナールーティング。
  • 振動吸収目的でシートステーを曲げている。
  • 輪行用のチェーンレストを装備。
  • ボトルマウントはバイクパッキング時とそうでない時の切替のため、ダウンチューブ/シートチューブともに3箇所開けている。

いわゆる「乗り味」の方は西川さんにお任せして、自分は旅にロードバイクを活用する上で必要になる事項を盛り込みました。なので一部についてはTADA No.275と同じ部分もあります(インナールーティング等)。

今までの旅の中では「やっぱりあった方がいいな」というものと、「これは便利だな」というものがあって、両方を入れ込んだ形になります。とはいえ特別なものは何もなく、最低限に済ませました。

ペイントするのはフォークのみということもあって、フレーム完成後からそれほど間をおかずに手元に送られてきたのも良かったです。KUALISのチタンフレームに塗装する人は全体の半分程度らしいけど、自分としてはやはり素材の良さを活かしたいと思ったので無塗装にしました。

というわけで、後はパーツを含めた完成車として出来上がるのを待つだけ。今現在進行中で組付けをやってもらっているので、完成が待ち遠しいです。

というわけで、Part 2に続く。


本ブログ、tamaism.com にお越しいただきありがとうございます。主にロードバイク旅の行程や鄙びた旅館への宿泊記録を書いています。「役に立った」と思われましたら、ブックマーク・シェアをしていただければ嬉しいです。

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