【牛深~長島本島~湯川内温泉かじか荘~出水】ロードバイクで島原天草のキリシタン集落を巡ってきた Part 2/2

もくじ

牛深から長島・蔵之元港へ

崎津集落を後にし、続いての目標は天草下島の南端にある天草市牛深からフェリーに乗ることです。

ここでちょっとフェリーの時間を確認したところ、この後の行程を考慮するとこの便に乗るのがちょうどいいだろうな、という便が見つかりました。ただ走行時間的に間に合うか怪しく、崎津集落から牛深までは比較的急ぎ目で走ることにしました。

道としてはこのまま国道389号から国道266号へ行けば一直線に牛深まで行けるものの、内陸部を通るのでアップダウンが激しいことが予想されます。なので国道266号ではなく西側に位置する県道35号(二浦町~魚貫町)を走る方針としました。交通量があまりなくて走りやすかったので個人的におすすめ。

牛深ハイヤ大橋

県道35号を南進した場合、牛深港までの区間に牛深ハイヤ大橋という海上橋があります。

海沿いに架かっている一般的な橋と異なるのは湾の頭上を越すように緩やかにループしている点と、橋の途中に隣の下須島へ下るための交差点(信号付き)がある点。結果的に牛深港を囲むように巨大な橋となり、上から眺めたときの曲線美がまた美しい。夜になるとライトアップされるようで、昼間に来ても夜に来てもどちらでも楽しめるはずです。

内陸側の景色も良いですが、ループしている部分も見ごたえがありますね。落ち着いたデザインをしているので海上の景観を崩さずに各所への移動を効率化しているのが分かりました。

実は牛深ハイヤ大橋のたもとに着いた時点で割とフェリーの時間ギリギリだったけど、この橋はどうしても渡っておきたかったので寄り道をした形です。

牛深港からの次のフェリー時間が12:40なのに対して、港に到着したのは12:20くらい。この便を逃すと次は14:00の便になってしまい、ランチの時間とか出水方面へのライドの時間とかを勘定に入れるとなかなか厳しいところでした。無事に間に合って一安心だ。

なお走行距離は現時点で約73km、この後もゴールまで50kmくらいは走ることになります。

牛深は、いわば天草下島の南の玄関口。実は今回の行程をここ牛深側から始める案もあって、その際は牛深で一泊して夜は海鮮等を楽しむ予定でした。ざっと見たところ宿も飲食店も多いため特に困ることはなさそうです。

ちなみに牛深ハイヤ大橋の「ハイヤ」は牛深の伝統芸能である牛深ハイヤ節から来ており、江戸時代後期に誕生したとされています。当時は春の季節に牛深には海産物等を運搬する帆船が多く出入りしており、その船乗り達をもてなすために牛深の女性が歌い踊っていたのが牛深ハイヤ節の始まりだそう。

乗船

港の近くには飲食店が多数ありますが、どの店にしようかなと考える時間もなくあっという間に乗船時間になりました。改めて考えてみても間に合って安心してます。ランチをどうするか問題は長島本島に到着してから考えることにしようかな。

天草牛窓~長島蔵之元を結ぶフェリーは瀬戸内海でよく見かけるような、船首と船尾の両側にランプウェイが付いているタイプです。要は車を乗船させたのと同じ向きで下船させることができ、船の方向転換が不要になります。

あと意外だったのが自分以外にもロードバイク乗りの方がいらっしゃった点。話を聞くと上天草市方面から天草上島~天草下島を横断して牛深に至ったとのことでした。

出港

次第に遠ざかっていく牛深港を眺めながら、天草下島での滞在のことを振り返ってみる。

朝の始発便で島原半島から下島に入り、朝の澄んだ空気を味わいながら海沿いを走っていく。そうこうしていくうちに地形が徐々に変化してきて集落の数が少なくなり、気がつけば隠れキリシタンの文化が残る一帯に入っていた。ロードバイクでの移動は電車のようにドアtoドアではなく、環境の移り変わりや道の様子の変わり方をシームレスに楽しめるのが利点の一つです。さらに言うと身体が自然に対してむき出しになっている分、風の強さや日差しの柔らかさ、草木の匂いなどもリアルタイムでインプットされていく。

自分はこういう時間の過ごし方が好きだし、各地を訪れる上での移動手段は自転車が最適だと思っています。

長島本島の坂道を走る

しばらく船に揺られ、長島本島の蔵之元フェリー乗り場に着きました。この区間は口之津~鬼池間とほぼ同じくらいに距離にあるので、乗船時間も約30分で同じです。

道としては国道369号(ぐるっとフラワーロード)を走りつつ、ランチスポットを探しながら鹿児島本土を目指します。

蔵之元フェリー乗り場
畑が多い
橋の上から

天草下島から長島本島に入って感じたことは、国道が海岸線からやや内陸部へ入ったところに通っていることとと、坂道が結構多いという点。フェリー乗り場からまずいきなり坂道が登場してくるし、以降も上っては下っての繰り返しとなります。

ただその地形に合わせて景色の方も変化が激しく、坂道の向こう側に広大な段々畑が見えたり、カーブが多いので曲がり道の向こう側が気になったりと走っていて飽きることがありません。さっきよりは疲れやすいと言えるものの、同じ島なのに得られる体験が明確に違うのが新鮮でした。脇道へ入れば山の方にも行きやすいみたいだし、高速走行とポタリングの両方を同時に満喫することもできます。

ランチの場所については、たまたま目に止まった「StopBy」というハンバーガーのお店に決めました。

こちらの店はシンプルにロケーションが最高なことに加え、サイクリストにも優しくラックが置いてあります。店内もお洒落な雰囲気で注文時にはテラス席か店内席を選ぶことが可能。今回は暑かったので店内席にしました。地産地消にこだわった食材を使用したオリジナルのハンバーガーはとても美味しく、なんかご当地感もあって満足です。

その後は道の駅 黒之瀬戸だんだん市場近くの黒之瀬戸大橋を渡って鹿児島県本土に上陸。さらに直進すると肥薩おれんじ鉄道の線路や国道3号線が見えました。このあたりになると他のライドでも通過したことがあり、迷う心配はもうないです。

名物のぬる湯で疲れを癒やす

そのまま線路沿いに走れば目的地の出水駅に到着できるところ、その前に本日最後のスポットである湯川内温泉かじか荘に立ち寄りました。

湯川内温泉かじか荘は出水市街地から少し南に行った山の中にある日帰り温泉で、約270年前に発見されたアルカリ性単純温泉です。この時期に最適な「ぬる湯」を求めて全国各地から温泉ファンが集まるほどの人気を誇り、現に私の知り合いが実際に行ってみて絶賛してました。

しかし2024年8月に台風10号による甚大な豪雨災害を受けて休業。そこから約10ヶ月に渡って復旧作業が行われ、この2025年4月26日に営業再開となりました。実は今回の訪問時はその再開日から一週間も経っておらず、午前10時から午後6時までのプレオープン期間。なお正式オープンは7月からとなります。

天草下島からの道中で近くを通るし…ということで、行程の最後にはぜひともこの温泉に入りに行きたいと思っていました。道中のフェリーの時間を気にしていたのはこのためであり、到着が遅れると入浴できる時間が少なくなってしまう。予定通りの行程になって嬉しい限りだ。

湯川内温泉までの道のりは、県道374号方面からだとそこそこの上りがあります。今日は数え切れないくらいの坂道を上ってきたけど最後の最後まで坂道が続きました。

右側の建物
左側の建物

湯川内温泉かじか荘に到着。

下から上がってくるとまず右側の2階建ての建物が見えてきます。そのまま直進すると右手に駐車場があり、駐車場の奥に左側の建物が見えました。これらは昔の宿泊棟で、受付の方に話を聞くと昔は素泊まりで泊まることができたみたいです。

向かって左側の建物の1階部分が受付として改築されていて、こちらで入浴料を支払いました。

受付の様子

すでに述べたように、湯川内温泉かじか荘の温泉は長湯が可能なぬるめの温度。その気になれば数時間でも入っていられるほどですが、入浴は1時間までの時間制限がありました。

上っていくと男湯がある
プール跡の前で振り返ったところ。左側の建物が女湯(下の湯)
池の奥が男湯(上の湯)

受付を通り過ぎて左に曲がると女湯の建物があり、その前を山側に向かうと斜面に沿ってプール跡と男湯があります。

斜面を上がっていく途中の風景が素晴らしく、プール跡や神社のミニ鳥居、池、たくさんの木々、そして2階建ての棟とは別に宿泊棟と見られる建物が点在しています。てっきり敷地内には宿泊のための建物と温泉くらいしかないのではと思っていたのが、良い意味で期待を裏切られました。高低差のある庭の中に苔むした岩や木々があり、適度な間隔で建物が建っていて居心地がいいです。

というわけで早速温泉へ。男湯は左右それぞれに脱衣所と浴槽が一つずつ存在し、どちらに入っても大差はありません。

  1. 源泉名:湯川内温泉
  2. 泉質:アルカリ性単純温泉(低張性・アルカリ性・温泉)
  3. 泉温:36.1℃(気温20.1℃)
  4. pH:9.4
  5. 知覚的試験:無色透明、無味、極微硫化水素臭

浴槽は一言でいうと「川底の一区画を切り取って木枠を取り付けたもの」で、浴槽の底には一般的な温泉ではまず見ないような大きな石がゴロゴロしていました。なのでゆったりと座れるかというとそうではなく、いい感じに身体にフィットする部分を探して座ることになります。最初は右側の方の浴室に入ったところすでに3人ほど入られており、端っこの方に入れさせてもらいました。

温泉はこの浴槽の下から気泡とともにブクブクと湧き出す「足元湧出温泉」であり、全国的にもこの形態の温泉は大変に貴重。浴室内はほぼ無音で、温泉の温度は体感で約38~39℃。目を瞑っていると本日の疲れがじわっと抜け出ていくようで、気を抜くと寝てしまいそうになるほどでした。人気になるのも納得です…。

昔の宿泊棟。2階に人が見えたので整備中なのかも。

しばらく入ってから今度は左側の浴室へ入りに行き、ここでもじっくりと温泉に浸かって湯を満喫する。営業再開となったことで地元の方が多く入りに来ているようで、人の往来は多めだったように思えます。

九州地方は毎年のように台風や豪雨の被害が大きいけど、今後もこの地でずっと続いていってほしい。心からそう思えるほど素敵な場所でした。

目当てにしていた日帰り温泉に入れたことで、本日のライドの目的はこれで全て達成。ゴール地点である出水駅に向かいます。

行きとは異なるルートで市街地方面へ向かったところ、北薩オレンジロードとの分岐にも湯川内温泉の大きな看板がありました。

出水駅

出水駅から熊本市街地へ移動し、島原天草の島々を巡るライドは無事に終了。もともと長丁場な行程に加えて観光を含めると時間管理が難しいのではと思っていたけど、最終的には狙い通りに収まってくれました。しかもラストは温泉で疲れを癒すこともできたし、ロードバイク旅の行程として大満足に終わりました。

スポットも全部回れて朝から夕方まで快晴で、ここまで何もかも充実していれば言うことはない。特に天草下島の西側は走っていて気持ちよく、春先のライドということで気温も控えめで快適さが上々だったと思います。これからも離島の景色を目的として、各地の島を訪ねていきたい。

おしまい。


本ブログ、tamaism.com にお越しいただきありがとうございます。主にロードバイク旅の行程や鄙びた旅館への宿泊記録を書いています。「役に立った」と思われましたら、ブックマークやシェアをしていただければ嬉しいです。

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