【熊本~日奈久温泉~湯の鶴温泉~南阿蘇~秋の草千里ヶ浜】ロードバイクで熊本の歴史ある温泉街と阿蘇山周辺を巡ってきた

今回はロードバイクで熊本県の日奈久温泉湯の鶴温泉を巡ってきました。

1年が終わりに差し掛かりつつあり、徐々に寒さを感じるようになってきたので温泉を主体にして遠方へ行く予定を立てていました。今回の熊本旅も宿泊メイン、それも2箇所の温泉に入りにくのが目的ということで当初は空身で行く予定だったものの、予想以上に天気が良い予報だったのでロードバイク同伴で向かうことに。

よく考えてみれば温泉旅館に泊まるといっても、日中に運動をすることによって温泉の気持ちよさや食事の美味しさが何倍にも増幅して感じられる。今回はそういう背景のもと熊本空港から日奈久温泉、次いで湯の鶴温泉を走り、最終日は阿蘇を走ってフィニッシュという流れです。これからも天気がいいのなら積極的に運動する方針でいきたい。

もくじ

日奈久温泉へ

初日は熊本空港から益城町や宇土市、宇城市などを経由して八代市の日奈久温泉へ向かいます。

いつもの場所

もう何度も走っている熊本県内ですが、これまた何度も訪問している長部田海床路を今回も訪れてみました。やはりこの場所は雲が少ない快晴のときが一番似合っている。海の青色に空の青色が加わり、視界の中が青色で染まっている様子がとてつもなく好き。

夏場はかなり人が多い長部田海床路、この時期はそんなに混んでないので訪問するのに向いていると思います。寒い時期だと空気が澄んでいるので島原の方まで見えやすいはず。

昼食
日奈久温泉の金波楼前
コンビニからの眺め

そのまま順調に南下を続け、約90km走って日奈久温泉に到着。

温泉街の雰囲気は前回訪問時から大きく変わっていないと思いきや、金波楼の前の空き地に新しくコンビニ(セブンイレブン)が建ってました。これによって国道3号方面からの金波楼の眺めが一部遮られる形になったため、前回の宿泊時に拝んでおいてよかったと思います。

景観というものは未来永劫同じものが見れるわけではなく、むしろ建物のような人工物こそ時代の流れとともに大きく姿を変えてしまうもの。あったはずの建物がなくなったり、かと思ったら今回のように何もなかった場所に新しく建っていたり。撮影については特に明確な熱意がない自分だけど、訪問時の様子は記録として残していきたいです。

到着後はひとしきり温泉街を散策した後、今日の宿である鏡屋旅館に投宿。宿泊記録については別記事で書いています。

ばんぺい湯の猫

投宿後も夕食前に温泉街を再度歩いてみたところ、日奈久温泉センターばんぺい湯の入口付近でハチワレ猫が鎮座している光景に出会えました。マンホールが温泉か何かで温められているらしく、ここから動こうとしません。係の方に聞いてみたらいつの間にか居着いた地域猫だと仰ってました。

景色の中でも猫がいる風景が心が休まると思っていて、建物や自然といった無機物に猫がいるだけで途端に平和になる。向こうから寄ってきてくれるかどうかは運次第なところがあるものの、温泉と猫は相性がいいです。

左奥がばんぺい湯
翌朝は別の猫と出会う

ちなみにばんぺい湯の前は翌朝の出発前にも気になって訪れた結果、別の猫が何匹がたむろしてました。散歩中のお婆さんも猫がいることについて不思議そうな顔をしていたものの、いずれにしろ日奈久温泉に行くと猫に出会うことができます。

日奈久温泉から湯の鶴温泉へ

日奈久温泉の宿泊から一夜明け、今日は八代市から芦北町、津奈木町を経由して水俣市の湯の鶴温泉へ向かいます。ルートについては国道3号を無心で走れば問題なく着けるものの、それだと面白くないので最初は県道254号を走ることにしました。

熊本県における海沿いは一見すると平坦な道ばかりのように見えますが、その考えが適用するのは八代市まで。八代市から水俣市までの区間はアップダウン多めの山の中を走る形になって、海沿い=平坦だと思っていると少々面食らいます。

県道254号については一部区間を肥薩おれんじ鉄道の線路が並走し、次第に山間部を抜けて御立岬に至るという流れ。昨日の道が割と平坦だったので今日は山道を挟んでみました。

肥薩おれんじ鉄道の線路
御立岬公園シンボルタワー
御立岬公園シンボルタワーからの眺め。奥に天草諸島が見える。
芦北町の県道56号付近
水俣市の湯出川で肥薩おれんじ鉄道の電車と出会う

その後は「放課後ていぼう日誌」で有名な芦北町を抜け、水俣市街に到着。時間は昼過ぎですが特にお腹が空いていなかったため、そのまま湯の鶴温泉を目指すことに。

芦北町周辺は夏の時期に走るとまた違った印象を抱きそうなので、また再訪を計画しておきます。

湯の鶴温泉
湯の鶴温泉のシンボルとも言える特徴的な橋。なお通行止めになっているので渡れません。

湯の鶴温泉に到着しました。

湯の鶴温泉は水俣市中心部から9㎞ほど南東にあり、山間部の湯出川沿いに4軒の温泉旅館と2軒の公衆温泉浴場が立ち並ぶ温泉地。山と川という自然豊かな環境に加え、水俣の奥座敷として古くから湯治文化が根付いているようです。

湯の鶴温泉の散策

湯の鶴温泉に到着してまず衝撃的だったことは、川を中心にして両サイドに個性的な建物が集まっているということ。道を順当に進んでいるだけなら素通りしそうになってしまうものの、ちょっと脇道に入って橋の上まで行ってみるとそこはもう異世界のようだ。

川に近い側はコンクリートが主体となって建物を形作り、道路から上へ視線を移すと木造建築が割合として多めになっている。全国には川沿いの集落というカテゴリー自体は多いですが、建物と建物の距離が近くて密集しているとなるとおそらく例が少ないはず。川面から建物までの高低差も含めて、これは湯の鶴温泉にしかない風景だと思いました。

あさひ荘

湯の鶴温泉においてはどちらかというと道路側に家屋が集まり、宿泊施設は橋を渡った対岸に位置しているようです。前者については対岸にもありますが後者については例外がなく、橋を渡る=別の世界に行くという感じで宿泊へと誘われているような気がしなくもない。

改めて眺めてみると川を挟んだ家屋の距離感が本当に絶妙で、ちょうど視界の中に収まる範囲内に全てが集まっている。全容が掴めないほど広いわけではなく、こじんまりとした規模なのが特に好きになりました。

湯出神社

まだ宿のチェックイン時間までは間があるため、温泉街の一番奥まで進んで湯出神社を参拝。湯出神社は県道117号と118号が交わる分岐近くに位置し、神社前の一角が比較的開けていて見晴らしが良いです。ここからだと温泉街の東側にそびえる山がよく視認できました。

いつもの行程だったらその日の宿がある場所に到着するのがチェックイン時間ギリギリになってしまうことがほとんどで、集落の端から端まで散策するというのはあまりやったことがありません。投宿してしまえばそこからの時間は旅館で費やすことになるし、投宿後に出かけるにしても近場に限定されます。

でも今日は目的地で過ごす時間が相当に長く(1.5時間)、湯の鶴温泉街という場所を隅々まで見た後の宿泊…ということで普段とは違う新鮮な気持ちで投宿に至ることができたと思います。たまにはこういう風に贅沢に時間を使う行程もいい。

湯の鶴温泉保健センター
茶白の猫がいた
鳴きながら近寄ってくる
バス停下が定位置っぽい

神社参拝の後は温泉街の中心部にある日帰り温泉「湯の鶴温泉保健センター ほたるの湯」へ向かいました。

県道を通った際に建物入り口に自動販売機を見かけたので休憩しようと思っていたところ、茶白の猫ちゃんが寄ってきたのでモフモフタイムを味わうことに。昨日の日奈久温泉でもそうだけど、旅先で猫と遭遇できるとテンション上がります。

こちらの猫は地域猫のようで、係の方によればいつの間にかいたらしいです。初対面の自分にも寄ってきたくらいなので人馴れしているほか、身体が割とむっちりしていたので誰かに食べ物をもらっているっぽい。

温泉ゲストハウス tojiyaの前
橋の下へ

猫と過ごす時間は終了して散策を再開。

さっき見かけた赤い橋自体は通ることはできませんが、橋の下に飛び石があるのでここを通れば対岸に渡れます。上流側に目を向けると地域の子供達と思わしき数人が川遊びをしている風景が見えて、こういう平和な時間がずっと流れていてほしいと強く思う。

湯の鶴温泉を形成している部材はすでに述べたようにコンクリートが目立っていて、つまり比較的新しい時代から造られた温泉ということが分かります。後に喜久屋旅館の女将さんから温泉街の旅館の創業が昭和初期だと伺い、ああやっぱりと一人で納得してました。

対岸の家屋へ続く橋
とある橋の上からの眺め

温泉街を歩けば歩くほど、なんだか虜になっていくような感覚になる。
散策を続けながら湯の鶴温泉の魅力をどう言語化しようかとずっと思っていたけど、結論としては山々に囲まれた谷間の一角というロケーションと、そこに広がる一昔前の建物群という組み合わせが訪れるものを引き付けるんだろうということ。

建物群については少なくとも華やかな様相ではなく鄙びた雰囲気を纏っており、その「大昔ではない昔」の意匠だとか造りだとかに良さを感じているのは間違いない。また時代が進んでいって住む人がいなくなった家屋も多い中で、集落の中にある湯出川は昔と同じように流れている。
そういった一つ一つの要素が積み重なってこの光景を生んでいると考えると、まだ見たことがない風景に出会うためにあちこち出かけている身としては本当にここに来てよかったと思います。

ひとしきり散策を続けた後、今日の宿である喜久屋旅館に宿泊しました。宿泊記録については別記事に書いています。

温泉街の散策に加えて喜久屋旅館の散策も順調に終えたところで、さっきの猫ちゃんが気になったので夕食前に再度保健センターに向かったりもしてました(車の下で昼寝してた)。

湯の鶴温泉観光案内図

保健センターの入口に設置されていた古びた看板。こんな風に手作り感満載の看板は味があるので好きですね。

個人的には古びた看板に登場してくるキャラクターのデザインや表情に着目することが多くて、この看板だと温泉に入っているキャラのまったりとした顔が好き。

南阿蘇鉄道に乗って阿蘇山へ

湯の鶴温泉での宿泊から一夜明け、今回の熊本旅もとうとう最終日。
今日も天気が比較的良いということで空港に行く前にどこかを巡ろうと色々考えた結果、そういえば秋の阿蘇には行ったことがないことに気がついたので阿蘇に向かいました。水俣市から出発して別のところに行っていると時間までに空港にたどり着けない可能性があったため、今回はこれがベスト。

熊本市街から自走で阿蘇まで向かってもよかったものの、災害から復旧されたばかりの南阿蘇鉄道に乗ってみたかったので高森駅までオール輪行で行きました。被災してから「あの路線に乗っておけばよかった…」って後悔するのはなるべく避けたいし、南阿蘇鉄道に限らず今後は輪行多めの行程も検討します。

立野駅で南阿蘇鉄道に乗り換え
白川の渓谷風景
車窓からの眺め
ちょっと前まで駅名の長さで日本一だった「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」
終点の高森駅に到着

平日にも関わらず南阿蘇鉄道(一両編成)はなんと満席で、終点の高森駅に至るまでには途中駅でさらに乗ってくるくらいに賑わっていました。見た感じはほとんどが観光客のようですが、地元の人にとっても南阿蘇鉄道の復旧は悲願だったと思います。

車窓からの眺めについては、もう100点満点。阿蘇のカルデラに沿って線路が通っているため左を見れば阿蘇山方面、右を見れば外輪山の雄大な展望が目に入ってきました。特に外輪山は手前の平野部と奥の山岳部との対比が見事すぎて、これがお手軽に見られるのは電車ならではです。

で、高森駅で福岡県在住のフォロワーさんと無事に合流。フォロワーさんはこれから竹田市を経由して大分まで行かれるとのことで、高森からの僅かな区間をご一緒する流れになりました。

しかしいつ見てもこのTCRはヘッドチューブが短くて剛性の高そうなジオメトリをしている。自分もフレームサイズを小さめにすればハンドル位置をもっと下げられると思うので、一度適当なカーボンフレームで試してみたいかもしれない。

上色見熊野座神社

高森から5kmほど走って、個人的に行ってみたかった上色見熊野座神社に参拝。

苔むした石段がずっと続いていく様相は実に神秘的で、灯籠+石段という区間がすぐに終わるのではなく斜面に沿って連続しているというのが実に良い。山の向こう側から雲が湧いてきて適度な日陰になっていたのも逆に良かったです。

秋の阿蘇山ヒルクライム

フォロワーさんとお別れをし、ここからは久しぶりにヒルクライムをしたくなったので草千里ヶ浜へ向かうことに決定。南阿蘇村周辺を単純に西へ向かうだけだと時間が余ってしまうし、時間的に大丈夫そうだったので実行に移しました。

自分がこの決定を下したのは実は天候も関係しており、今日は西からの強風(4m/s)がずっと続いていました。なのでさっきまで阿蘇山近辺でモクモクしていた雲が次第に東方向に流される形になって、結果から言うと草千里ヶ浜に到着する頃には完全な快晴になるという状況。

もちろん神社からスタートした時点ではあくまで「予想」でしかなかったものの、ここまで想像通りに行くとは思ってなかった。初日の日奈久温泉から今に至るまで、ずっと天気に恵まれているのは気分がいい。

最初の方は南方面への展望が良い
風は強いが晴れている
個人的にはこの直線区間が特に好き

県道111号の阿蘇パノラマラインを無心で上り、いつの間にか古坊中(噴火口への分岐を左に向かったところ)に到着。国道325号方面からここまでの斜度は大したことないので普通に回していれば大丈夫です。

阿蘇山の良いところの一つは「短い走行距離の中で地形が目まぐるしく変化する」ことだと思っていて、国道から古坊中の平原までの距離は約13km。
この距離の間にカルデラから阿蘇山本体へと場所が移り、南外輪方面を眺めながら進んでいくとすすきの草原や豪快な山肌の景色が目に飛び込んでくる。そのまま上ると気がつけば阿蘇山の山上に到着し、山の上にいるはずなのに周りには広大な平原が広がっている…という絶景に出会うことができます。

山岳部をダイナミックに通る道に、目の前の大展望。阿蘇を代表する魅力的なワインディングロードを最終日に走ることで満足度をさらに高める算段だったけど、もうほんと大成功という感じ。

草千里ヶ浜と駒立山
遠くに阿蘇中岳の噴煙が見える
北の外輪山方面

そのまま走って無事に草千里ヶ浜に到着。見渡す限りの草原には馬が放牧され、360°どこを見ても草と山、そして青い空以外には何もない。これほど自然の巨大さ、雄大さを実感できる場所はそう多くないだろう。

ロードバイクを降りて立ち止まると途端に寒さを感じるものの、それ以上に空気が綺麗で澄んでいることに感動しました。
夏の阿蘇とは明確に異なる荒涼とした景色を夕方の太陽が柔らかく照らしており、前回訪問時のシチュエーションとのギャップが素敵すぎる。時期的にはもう冬になりつつあるので秋らしさを最後に見たいと思っていたところ、この風景を見れたので満足です。


草千里ヶ浜からはそのまま県道111号を直進し、県道298号方面ではなく阿蘇駅方面へ一度下ってから空港を目指しました。

変わった形の米塚
米塚ビューポイントから阿蘇駅までの県道111号(阿蘇吉田線)は視界がとても開けている

ヒルクライムの良いところは上ったら下るということで、阿蘇の上りは草千里ヶ浜というゴールに到着して終わりではありません。下り区間では脚を休めながら絶景を拝める形になり、上りの疲労を補って余りあるほどの達成感を味わうことができます。

今回の場合だと米塚ビューポイントから先の下り区間がまさにそれで、左方向に阿蘇市の平野部を見ながらのダウンヒルは常にテンション上りっぱなし。

しかもロードバイクだと比較的簡単に駐停車ができるため、しばらく立ち止まって夕焼けに染まる阿蘇を眺めたりもしてました。自分は夕方の時間帯に走ることはあまり経験がなく、いい感じの寒さの中で山岳部を走るのは新鮮で嬉しかったです。

国道57号を西へ
新阿蘇大橋

最後は国道57号を西へ走り、荷物を回収して空港まで向かって今回の旅は終了。


当初はシンプルに温泉旅のみを満喫するつもりでいたものの、天気が良さそうだからロードバイク同伴で行くか程度の気持ちで行ってみたら予想外に楽しい行程になりました。

いつもの旅ではやらないような時間帯に走ったり散策時間を多めにとったりと初の試みも多く、フレッシュな気分で終えることができたと思います。まあ毎回同じような行程だとどこかで飽きがくるので、これからも何かプラスアルファの要素を都度組み込んでいきたい。自分が好きでやっている趣味は、自分が納得できるように工夫するのが一番良いので。

おしまい。


本ブログ、tamaism.com にお越しいただきありがとうございます。主にロードバイク旅の行程や鄙びた旅館への宿泊記録を書いています。「役に立った」と思われましたら、ブックマーク・シェアをしていただければ嬉しいです。

過去に泊まった旅館の記事はこちらからどうぞ。

  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

もくじ